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クルマを持たなくなるは本当か。若者のクルマ保有率が伸びている?/猪口 真

INSIGHT NOW! / 2019年1月7日 17時3分


        クルマを持たなくなるは本当か。若者のクルマ保有率が伸びている?/猪口 真

猪口 真 / 株式会社パトス

若者の収入が伸び悩み、住まいの都心回帰が進み、さらに独身世帯が増加している状況を見れば、どう考えても、クルマを買える世帯は減少しているとしか思えないが、内閣府の消費動向調査を見ると、2017年度はなんと20代(29歳以下)のクルマ保有率が、47.9%から56.6%に増加している。

カーシェアリングもポピュラーになり、このあたりの状況を考えれば、クルマを保有する選択肢はなかなか難しいと思えるのだが、販売会社の必死のマーケティングの甲斐もあり、なんとか踏ん張っているようだ。

燃費のいいコンパクトカーが人気

どんなクルマが売れているのだろう。2018年上半期の登録車車名別販売台数ランキングを見ると、

1位 日産自動車「ノート」7万3380台

2位 トヨタ自動車「アクア」6万6144台

3位 トヨタ「プリウス」6万4019台

4位 日産「セレナ」5万6095台

5位 本田技研工業「フィット」4万7962台

6位 トヨタ「ヴォクシー」4万7702台

7位 トヨタ「シエンタ」4万5417台

8位 トヨタ「ルーミー」4万4923台

9位 ホンダ「フリード」4万3984台

10位トヨタ「ヴィッツ」4万2519

と見事に、維持費のかからないコンパクトカーが並んでいる。

もちろん、新車の購入の主力は中~高齢層であり、家族の人数も少ないので大型車のニーズも少なく、より維持費のかからないクルマを選んでいると思える。

ちなみに、ソニー損保が行った、新成人のクルマへの意識調査「欲しいクルマランキングでは、男性が、第1位 トヨタ・アクア、第2位 BMW・3/5シリーズ、第3位 フォルクスワーゲン・ゴルフ/ポロであり、女性が、第1位 日産・キューブ、第2位 日産・ノート、第3位 トヨタ・アクアとなっている。

てっきり、BMW、アルファロメオ、ミニ、あたりが並ぶのかと思いきや、意外にも堅実な志向が出ており、全体の売れ筋ランキングと差はない。

いくら収入があればクルマを持てるのか

一般的に、クルマのローン総額は、年収の半分までと言われているが、20歳代の大半を占めると思われる、年収400万円以下の世代では、新車をローンを組んで購入するのは、常識的に厳しそうだ。

しかし、SMBCコンシューマーファイナンスの調査によれば、20代で「いくら年収があれば自家用車を所有しよう(購入しよう)と思うか」という問いに対して、年収400万円で43.2%、年収500万円で59.4%もいると言う。巷で言われるほど「若者がクルマ離れ」しているわけではないようだ。

とはいえ、20代で年収400万を超えるのは、大企業の勤務の少数だろう。そこで各販社が力を入れてきたのが、「残価設定型クレジット」呼ばれるクレジットサービスだ。将来の買い取り費用をあらかじめ引いた分を支払うというもの(金利は全体にかかるため総額は安くない)で、200万のクルマでも、買い取り額を70万に設定されると、見た目は130万円だけ払えばいいというものだ。詳しいカラクリは省略するとして、各社のホームページを見ると、にわか信じられない月々の費用が紹介されている。

たとえば、売り上げナンバー1の日産ノートの場合、ガソリン車で、「月々3,500円~(実質年率4.9% 5年60回払い・契約走行距離1,000km/月)」と紹介されている。もちろん、頭金やボーナス払いがあるので、月々3,500円ではないのだが、20代の若者にとっては、携帯電話の費用より安い費用でクルマが持てるという、非常に魅力ある提案だ。

しかも、現在のクルマの維持費はかなり抑えられるようになった。燃費はリッターあたり20キロ近く走るし、かつて月3万円と言われていたガソリン代は1万円もいかないだろう。高速代もETCのおかげで安くなってきている。国産新車の故障はほとんどない。

合理性を考えればクルマを保有する必要はない?

一方で、「クルマは持つべきものではない」という意見も年々大きくなっている。カーシェアリングなどはその最たるものだし、日本ではいろんな規制によって、Uberがなかなか広まらないが、その分日本ではタクシーやレンタカーはどの駅に行ってもほとんど不便はない。タイムズのカーシェアリングもいたるところにある。

そもそも、クルマほど使用効率の悪いものはない。ほとんどの人は週末ドライバーだし、一家にクルマが複数台ある家で、全部使っている状況など年に何度もないだろう。

要するに、ほとんど使われてない状態で保有されているわけだ。

そういう合理性を考えれば、必要な時に借りるという選択肢は大正解だろうし、クルマをシェアし合うビジネスはこれからも増加するだろう。

クルマに関する選択に関して問題になるのは、クルマに対する意識の差だろう。クルマは移動手段(コストを含めた合理性)なのか、個性やステイタスの表現なのかの問題だ。クルマが単なる移動手段と考えるならば、クルマを保有する必要はまったくないだろう。

逆に高級車に乗りたいがためにレンタカーを使うという人もいるかもしれないが、カーシェアやタクシーで十分という人は、完全にクルマは移動手段という意識だ。

ある調査によれば、20代の意識調査では、移動手段と捉える人と、個性やセンスの表現と捉える人の割合は拮抗しているという。

「月々3,500円~」の提案は、これら両方の意識を微妙にくすぐるし、むしろ合理的な判断をするのは、高齢者に多く、実際に、タイムズカーシェアの登録も、高齢者の登録が最も増加しているという。

クルマが欲しい若者もたくさんいる。クルマ離れという前に、若者が飛びつくようなクルマをぜひともつくってほしいものだ。

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