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特定技能資格制度と出稼ぎ/野町 直弘

INSIGHT NOW! / 2019年2月7日 10時0分


        特定技能資格制度と出稼ぎ/野町 直弘

野町 直弘 / 株式会社クニエ

昨年12月に入国管理法が改正されました。
この法案は外国人に対する在留資格にさらに2つの資格を新設するものです。特定技能1号、特定技能2号資格を外国人労働者に付与することで「一定の知識や技能」「熟練した技能」を持っている外国人の在留を認めるという内容になります。

一方で日本には247万人の在留外国人がおり厚労省の調査によると約128万人の外国人が既に働いています(2017年10月時点)128万人の内訳としては、日系人や日本に永住権を持つ「身分に基づく在留資格」を持つ人が35.9%、「資格外活動」という本来の在留目的である活動以外に就労活動を行う留学生のアルバイト等が全体の20.3%、「技能実習」が20.2%です。
「技能実習制度」と「特定技能資格」を混同してはいけませんが、実際には「技能実習制度」と言いつつ通常の労働力として働いているのが実態なので、ある程度技能を持っている外国人
は(実質的に)10年間は働いていいですよ、というのが今回の入管法改正による労働力補完が狙いと言えるでしょう。

一方で一部のマスコミでは法改正があっても外国人労働者は日本よりも韓国を選ぶ、というような指摘もしています。これは韓国の制度が外国人労働者にとってメリットかあるからのようです。このようにいくら政策を変更しても労働者にとって魅力的な国にならない限り日本で働く外国人は増えない、的な指摘をしようと思っていました。

一方で以前、日本企業が中国他の新興国の企業に比べてよい購入条件が出せず調達することが難しい状況、いわゆる買い負けが起きたことがありました。これらのことから、日本企業は「買い負け」だけでなく「雇い負け」もしている状況のようです。


しかし、色々と調べてみるとどうもそういう単純なことではないように感じてきました。確かに日本と韓国の技能実習制度は違います。例えば日本では就労先を変えることはできません
が、韓国では変更することができます。また韓国は基本的には国が企業を仲介するのに対し、日本は民間が仲介し中には悪質なブローカーも多いようです。もともと実習という位置づけで
あるからやむを得ないとも考えられますが、転職を許していないというのは基本的人権が侵害されているとしか思えません。

しかし、実態としては製造業の工場は技能実習生で、またコンビニなどのサービス業では日本語学校等の留学生のアルバイト(週28時間までの制限で)の方が働いており日本企業の労働力の担い手になっていることは間違いないでしょう。

歴史的な経緯も考え併せると労働力の担い手については、どうしてもバッファーが欠かせないことがわかります。

戦後、先ずは出稼ぎから始まりました。それが出稼ぎではなく季節工や期間工という名前で地方の労働者を工業都市の工場が受け入れることにつながったのです。景気のよいバブル期など
には期間工が取り合いとなり、人事部門以外の一般社員も自分の業務を一時停止させても採用活動を手伝うなどもあったことが記憶に残っています。

ところが、1990年の入国管理法改正を契機として、日系人の活用が積極的に行われました。ブラジルを中心に、ペルーやアルゼンチンといった国から、大勢日系人がやってきました。
彼らの多くは業務請負の形態で製造業の工場で働いていました。

しかし、2008年のリーマンショック後大量の派遣切りが行われ、多くの日系人が母国へ帰りました。ブラジル人については、08年には約32万人が日本にいたのに、2017年末は18万人弱に
減りました。激減した日系人に代わって増えたのが、技能実習生だったのです。そして今年の法改正で技能実習生という本来の目的とは異なる制度への便乗から「特定技能資格」を認めることになったという流れでした。

こう考えると今回の入管法の改正も所詮出稼ぎの延長のバッファー労働力の確保にしか過ぎない、ということがわかるでしょう。以前は毎年農家の閑期になると助けに来る人がいました。こういう人が労働力のバッファーになっていたのです。労働力のバッファーは必ず必要であり、それが今は技能実習生それが委ねられている状況なのです。

つまり、今回の法改正はあくまでも「出稼ぎ」なんです。移民受け入れするかどうか、等ではなく「出稼ぎ」の延長としか捉えていないのです。
そうでなければ、「家族同居は限定的にしか許さない」とか、あり得ないでしょう。そして留学生のアルバイトは昔の主婦のパートの代替です。このように外国人を人財として捉えていないことがわかります。

確かに移民を受け入れることには躊躇する方も少なくないでしょう。でも積極的に移民を活用し、世界中から優秀な人を集め競争力を高めるという考え方に反対する人はいないでしょう。逆に働く人にとって魅力的な国にしなければ自然と人が流出していきますし、より一層集まりにくくなります。
外国人の雇い負けどころか日本人の雇い負けにつながる恐れも大いにあるのです。

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