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CPO's Agendaと5フォース分析/野町 直弘

INSIGHT NOW! / 2019年2月20日 10時0分


        CPO's Agendaと5フォース分析/野町 直弘

野町 直弘 / 株式会社クニエ

毎年この時期には欧米のコンサルティング会社が調達購買分野における今年の展望レポートを発表します。

先日The Hackett Groupが「2019 CPO Agenda: Building Next-Generation Capabilities」を発表しました。このレポートで2019年に調達購買組織は以下の5つの視点にフォーカスする必要があると述べています。

1.Improve analytical capabilities(分析能力の向上)
2.Align skills and talent with business needs(ビジネスニーズへの対応能力)
3.Leverage supplier relationship management (SRM)
(上から目線ではないサプライヤとの関係性つくりとコミュニケーション)
4.Improve procurement function agility(迅速かつ適切な意思決定)
5.Improve customer-centricity(ビジネスニーズの理解と対応)

どれも当たり前の項目であるようですが、カスタマーセントリック(顧客中心)やビジネスニーズへの対応など、ユーザーマネジメントの視点が2つも上げられているのが特徴の一つです。
またSRMも従来の上から目線的なものではなく、コラボレーションとイノベーションにフォーカスする必要性を謳っています。
従来の欧米型の格付けサプライヤマネジメントとは一線を画した考え方が広まりつつあるのでしょう。このようにサプライヤマネジメントの考え方もかなり変わってきています。

サプライヤ戦略をたてる上で重要なのは供給市場全体の動向を把握することでしょう。いわゆる供給市場分析です。

供給市場分析を行う上で使えるフレームワークが5フォース分析です。5フォース分析とはハーバード・ビジネス・スクールのマイケル・E・ポーター教授が開発した、主に事業環境変化を捉え自社の事業戦略をどのようにしていけばよいか、を考えるためのフレームワークです。5フォースとは競合他社、売り手、買い手、代替品、新規参入者の5つの力の影響度を分析し、自社として今後どういう戦略をとっていくかということを考えるための手法になります。通常は自社のマーケティング戦略などを立てる際に行う分析です。

この5F分析は供給市場を分析する上で、とても役に立つフレームワークと言えます。供給市場に適用する時にはサプライヤを自社の位置に位置づけて分析を行うのです。果たしてどのようなメリットがあるのでしょうか。

実際に分析してみるとサプライヤが自社の戦略として、例えば自分の会社や業界以外の顧客向けに力を入れている場合に、その理由が推察できます。分析を進めると考えていた以上にサプライヤの事業環境が悪く、こっちを中々向いてくれない理由なども理解できたりします。

このようにサプライヤの市場を客観的に捉え自社がおかれたポジションをサプライヤの立場で捉えることで、サプライヤの戦略を類推することができるのです。

多くのバイヤーや企業はどうしても自社中心で市場を捉えます。
例えば「サプライヤが言うことをきかない」と言いますが、「何故言うことを聞かないのか」必ずそこには理由があるのです。それをサプライヤの立場で考えることで理由を理解し、その上でサプライヤにこちらを向いてもらうためには、どうすればよいのか、もしくはどうしようもないのか、理解することができるのです。

私の尊敬するZhenさんが今週号のメルマガで「欧州サプライヤの強さ」という内容を書かれていました。
「日本や中国などの新規サプライヤに見積依頼する時には仕様書、図面などの技術的要求や当該部品の年間発注予定量といった情報だけを提示すれば良かった。ところが、欧州サプライヤからは、次々とリクエストが来る。当該の部品は、どのような製品に組み込まれ、その製品の市場規模は、どれくらいあり、その中でバイヤー企業のポジションは、どこに位置するか。さらにバイヤー企業は、その製品の2年後、5年後には、どのような展開を考えているのか、などの情報まで欲しがる。」ということです。

欧州サプライヤは逆の視点で我々を見ているということ。
だから彼らはそのような様々な情報を欲しがるのです。

5フォース分析は様々な角度から関係性を評価分析します。単に「買い手」との関係性だけでなく「売り手」や「競合他社」、「新規参入者」、「代替品や代替技術」などです。このような多面的な視点で分析を行うことで、サプライヤの事業戦略を理解(推察)することができるのです。

自社のサプライヤ戦略はサプライヤの事業戦略とアラインしていないと成り立ちません。両想いの戦略を策定するためにも、まずは相手の立場から見てみることを考えてみたらいかがでしょうか。


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