ビジネスセンスを磨くにはどうすればいいか? ②ビジネスセンスがあると言われたい/猪口 真
INSIGHT NOW! / 2019年2月25日 17時0分
猪口 真 / 株式会社パトス
ビジネスの成功やビジネスパーソンとしての成長に、ビジネスセンスが重要であることに異論のある人はいないだろう。
前回、センスがいいと称賛される人は、明らかに並みのセンス人とは結果が異なること、そしてその異なる結果を出すには、センスのある行動が必要であることを紹介した。
では、どうすればセンスある行動や態度を身につけることができるのだろうか。
センスとは行動・態度や結果に表れて初めて「センスがある!」という評価になるのだが、その下にある部分とは何だろうか。何があれば行動や態度に表れるのだろうか。
センスある判断をするには
センスある行動や仕事の仕方を選択するには、センスある判断基準が必要となる。よく考えれば、毎日の仕事は判断の連続だ。仕事は常に変化し、常に対応策を考えねばならず、1本の電話、1本のメール、部下や上司からのひとつの依頼に対して、様々な判断材料を駆使して判断する必要がある。こうした小さな判断は1日に何度も起こるし、むしろ、こうした小さな判断の積み重ねがその人のセンスを評価づける。
また、意識していなくとも、実際には、問題を解決する正しい言動は何か、今より良い仕事のためには何をすべきか、周囲に負担をかけずより良い人間関係を築くにはどうすればいいかなど、瞬時に判断しながら意思決定しているはずだ。
大きな戦略転換や大きなトラブルが起きたときは、一人で判断できることは少なく、通常のサラリーマンでは、大きな決断を迫られることはなかなかないかもしれないが、小さい選択肢がいくつかある中で、的確な判断を下す、というのはセンスにかかわる重要なところだ。
特に、うまくいかないとき、トラブルになったとき、スムーズな対応策をとって解決策に結びつけるか、あるいは逆に対応に失敗し、火に油を注いでしまうことになるのか、双方の対応に大きな差があるとは思えなくとも、結果が大きく違ってしまうことなど、営業系の人にとっては、よくある話かもしれない。
マーケティングの施策や営業戦略の判断なども、適切な判断が必要な重要な領域だ。売り上げや利益、その後の顧客との関係性などにも密接にかかわってくる。
ベースとなるのは知識
ではそういう判断をするにはどうするか、前提となるのは、「知識」だ。ベースとなる知識や情報がなければ判断のしようがない。もちろん経験も含まれる。よくトラブった時に先輩に助言をもとめるのは、経験があるからだ。
知識がある人は、前提として、知識を得よう、学ぼうという意識が高い。適切な判断をするためには、知識を得るための学習が必要となるが、学習意欲の高い人は、固定観念にこだわらない人が多く、判断も柔軟だ。また、学ばない人に成長はない。
となると、ビジネスセンスがあるとは、結果、行動に、判断センス、学習センス、これすべてが必要ということになる。
ということは、ビジネスセンスというのは、学びから結果までのすべてのプロセスを指すことになるのだろうか。
単に何かの知識を得たからといって、単に何かの戦略を選択できたからといって、これまでとは違った行動をしたからといって、たまたまいい結果を出すことができたからといって、急に「ビジネスセンスあるねー!」とはならないということだ。
コミュニケーションセンス
センスとは何かを考えるとき、避けては通れないのがコミュニケーションスキルだ。
結局、孤高のアーティストでもない限り、誰も一人で仕事をすることはできない。仕事はコミュニケーションで成り立つ。そして、ビジネスセンスのありなしの評価も相対的なものであり、個人の主観で言われるものだ。そうなると、相手を心地よくし「にこやかに」仕事を終える必要があるわけだ。
ビジネスセンスに近い言葉で、「あいつ、わかっている」的な言葉がある。何も言わなくてもやるべきことをやってくれる、仕事にそつがない、でしゃばらず立場をわきまえている、というときによく使われる言葉だが、コミュニケーション力を表しているといってもいいだろう。
スティーブン・R・コヴィー(「7つの習慣」著者)のコミュニケーションの原則の中に、「コミュニケーションのトラブル、ギャップというのは、原則的にその人に対する期待とその結果のギャップによる」というものがあるが、ビジネスとは、基本的に「期待」に対する「解決」以下でも以上でもない。
「期待」と「解決」のクオリティが一致、あるいは「解決」のほうが大きければビジネスは成功するし、逆の場合は、次はない。期待の中には、もちろん「プロセス」「コスト」「人格」「信頼性」も含まれる。
コミュニケーションが難しいのは、「期待」は人によって異なるし、時間とともに常に変化するし、環境と状況によって判断は変わるということだ。つまり、毎回、「期待」を正しく理解しなければならない。
また、相手の期待も対象者によって異なるから、自分に対する期待も理解しておかなければならない。役員がもつ期待は、部長に対する期待と係長に対する期待は違うのだ。
そういう意味では、固定観念にとらわれてもいけないが、日ごろから自分のビジネスポリシーやビジネスにおける価値観を整理し、表明しておくことも必要かもしれない。
ビジネスセンスの第一歩は、自分の立場を認識したうえで、「期待」を理解することなのだろうか。
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