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ビジネスセンスの磨き方 ③正論と顧客ニーズの間で/猪口 真

INSIGHT NOW! / 2019年3月12日 18時14分


        ビジネスセンスの磨き方 ③正論と顧客ニーズの間で/猪口 真

猪口 真 / 株式会社パトス

課題否定 VS. お客様の言う通り

問題解決をするには、何よりも課題を明確にすることが大切だとは、よく言われる話だ。特にコンサルティング系の人やソリューションセールスに携わる人は、いくつかのデータや分析ツールを使いながら、さっそうと「問題はここではなく、こちらにありますね!」などと分析し、解決案を提示するイメージもある。

「もっと営業効率を高めたいから、こういうツールを導入したい。候補のシステムを提案してほしい」とクライアントに言われたとき、「御社の営業の方に同行してわかったのですが、現在は、必ずしも効率を上げることよりも、提案力自体の強化を先に行うべきじゃないでしょうか。プレゼンテーションのレベルが高くないことが御社の最優先すべき課題ではないかと思われます」などといった会話のイメージだろうか。

いくつかのデータやフレームワーク、業界データを駆使しながら、いわゆるロジカルな正論的課題設定を行っていく。問題解決は、課題設定が8割以上だという人もいるぐらいで、正しい問題が分かれば、おのずと解決策も見えてくるという。

「もともとやるべきでなかったことをどれだけ効率的にやっても無益だ」とは、ドラッカーの言葉だが、本当の課題ではないものにいくら取り組んでも意味はないだろう。

また、課題といってもひとつとは限らないし、複雑にからみあっている場合もある。その課題に取り組むことは重要だが、その課題だけに取り組んでも問題解決にはつながらない、ということもあるだろう。そのときには、因果関係を解き明かしながら、優先順位を明示していく。要は、正しい課題を正しい優先順位とともにロジカルに明確にし、その解決に邁進する、というのが正しい姿だというわけだ。

一方、顧客の声に耳を傾け、顧客のためになることだけをやるという話もよく聞く。たとえ、顧客の課題設定が間違っていたとしてもだ。

「こういう販促ツールをつくりたいから、さっそくたたき台をつくってほしい」「(それは以前あまりうまくいかなかったのだが、それをここで言ってもやぶへびだと思いながらも)はい!さっそく準備します。どのようなイメージがお好みですか?そこに合うスタッフを準備して提案します」といった感じだろうか。

要はクライアントの言うことには、すべて「YES」と答え、疑問を持ったとしても押し殺し、実直にそのまま応えるという人だ。

この両者を比較したとき、どちらがかっこいいかといえば、明らかに前者だろう。

まさに、「できるコンサルタント」と呼ぶにふさわしい仕事っぷりに見える。

ところが、そのさっそうとした仕事っぷりが必ずしも、成功しているかといえば、そうではないことも多い。むしろ、顧客の言うことをうのみにし、手当たり次第に提案するほうがいい側面もある。要するに、どちらが相手と信頼関係を築けるかということだろう。

ただし、常に「顧客の言うこと」をうのみにするのもいただけない。完全に「言われたことしかできない」というレッテルを貼られてしまうし、そうではないにもかかわらず、「便利で器用なパートナー」の域を出ることはない。

必要なのは3つの軸

課題をロジカルに見つけることは大事だし、ビジネススキルにおいては欠かせないスキルであることは間違いないだろう。

しかし、そもそも、正しい課題・問題を見つけるということを、外部の人間が簡単にできることなのだろうか。特に仕事の発注先にとって、クライアントの仕事のことは、クライアント以上に知ることはほぼ不可能だし、クライアントすら問題・課題を明確にできていないところに、見出すことなどできるのだろうか。ましてやそこにどのような問題がひそみ隠れているのかなど、本当にわかるのか、疑問は残る。

そこで、ロジカルな定量的なデータに対して定性的で主観的な理論の登場となる。「セオリーではこうだし、御社の事情を考えればこの方法だと思いますが、役員の方針や昨今の営業の状況を考えれば、この点をまず解決するこの方法も考えられますよね」といった、オリジナルのあなた独自の理論だ。この独自理論が、セオリーや顧客ニーズをカバーできていれば、これはかなりかっこいい。ロジカルなイメージを持ちつつ、顧客ニーズに応え、しかも、関係を良好に保つ独自の意見を持っているということだ。



ビジネスセンスというのは、この3つの事柄が合わさったところにあると思う。ロジカルか言いなりかの両極ではなく、3つの軸を持ったうえでのコミュニケーション、プレゼンテーション、戦略策定を行うことが重要だと思う。

しかもこれは、対クライアントに限ったことではなく、社内やパートナーとの仕事においても、まったく同じだ。

このようなスタイルを常に意識し、ロジカルなセオリー、顧客のニーズ、そして、独自の理論、この3つを頭の中に描きながら仕事に取り組むことができれば、あなたのビジネスセンスは、まずます磨かれていくのではないかと思う。

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