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一社発注一年契約の魅力とリスク/野町 直弘

INSIGHT NOW! / 2019年4月26日 17時0分


        一社発注一年契約の魅力とリスク/野町 直弘

野町 直弘 / 株式会社クニエ

前回、購買条件の多様化について書きましたが関連するテーマについて書きます。

先日調達購買コンサルタントの寺島さんがIt's購買系の記事でもご紹介いただいていますが、英国ケンタッキーフライドチキンが鶏肉事業者を切り替えることを発表したそうです。

英国KFC社は1年間の契約サイクルでサプライヤーの見直しを行っており、昨年契約したDHL Supply Chain社はシステム障害でチキンが配送されなくなり、8割の店舗が一時休業するという事故につながりました。今回は問題を起こしたDHL Supply Chain社から以前のBidvest社に戻すことが報じられました。

理由は昨年切り替えられたBidvest社がケース辺り£22 の入札をし、£24.50で入札したDHL Supply Chain社はそれ以上の再入札はせずに、取引を辞退したことにあります。その結果、900店舗中の350店舗分を、英国KFCはBidvest社に発注することとなりました。

もう一つ注目すべき新聞記事がありました。
セブンイレブンが全国で電力調達を見直したそうです。
セブンイレブン・ジャパンは全国各地のコンビニエンスストアで使う電力調達先を、関東地方では東京電力系から北陸電力系に切り替えたそうです。また、中部地方では関西電力から中部電力に切り替えたとのこと。各地の電力会社との契約期間は1年で、調達先を毎年見直しするとのことです。セブンイレブンでは従来から毎年電力の調達先を見直すことで電気料金の削減につなげています。

調達先を切り替えることにはリスクもありますがメリットも大きいです。特に1社契約品について契約先を変更することは、新規サプライヤにとっては売上の純増につながるため大きなメリットがあります。また既存サプライヤにとっては従来の売上が全てなくなることにつながりますので収益的なインパクトは大きく、営業利益を割っても限界利益が出ていればよいという判断も働き、競争は益々激化します。

このように1社契約はバイヤーにとって魅力が高い手法です。
また今回の2つの事例のように、契約先を1年に1回見直す1年契約は毎年コスト削減目標をクリアしなければならないバイヤーにとっては、とても魅力的な手法でしょう。

購入品目にもよりますが可能な品目については、1社・1年契約の手法を採用することはかなり有効です。
しかし気をつけなければならないこともあります。先の英国KFC社のケースに見られるように商品の主要原料の調達を切らすことは事業が継続できないことにつながるでしょう。また品質が劣化した場合には商品の味に直接つながります。

そんなことわかっています、という声が聞こえるようですが、確かに当たり前のことです。しかしそれでも記事にあるような事案につながっていることも事実でしょう。

1社発注が良いかどうか、は購入品の重要性や切替コスト、得られる効果とリスクなどによって判断する必要があります。

契約期間についても切替コストやリスクを考慮しなければなりません。またサプライヤの声を聞くことも重要です。以前、VOS(サプライヤの声を第三者が聞く)活動をある調達改革プロジェクトで実施した際に、あるサプライヤさんからこういう声が上がりました。

「社内の生産枠取りが有利になるので、現状の契約期間をより長くして欲しい。」おそらくこのような理由だけでなく、毎年競合させられることのサプライヤの営業コスト(手間)も無視できません。

何年が適切だと言うことは難しいですが、このようにサプライヤ側の視点を持つことはサプライヤのモチベーションにもつながり将来的に低コストにつながっていくと考えられます。

「今までもX年契約だった」からとか、「今までも1社契約だったから」という購買案件についても、見直す機会を持ってみたらいかがでしょうか。

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