ビジネスセンスの磨き方 ⑥バランスの取れた行動/猪口 真
INSIGHT NOW! / 2019年5月20日 18時9分
猪口 真 / 株式会社パトス
ビジネスの場面だけではなく、あらゆる人生の場面においてバランスがとれている状態は美しく、間違いなくセンスを感じさせてくれるものだ。
仕事で、「あいつは仕事はできるのだが勤務態度がダメだ」「プレゼンテーションはうまいのだが、数字に弱い」という評価は、決してありがたいものではない。
もちろん、バランスが取れているというのは、低いレベルで取れていても意味はなく、高いレベルでバランスが取れているということだ。
半面、「何事にも中途半端な人生は送りたくない」「極端な生き方こそ魅力ある」「何かひとつに打ち込む姿こと美しい」「人とは違う能力こそが求められていることだ」という見方もある。何かに特化したスキルや能力こそが厳しい時代のなかでは必要なことだろう。特化した領域で自分を賭けてみることは、本人の自由だし、チャレンジ自体は悪いことではない。何か強力な取り柄は、私たちのビジネスの成功を助けるし、誰にも負けない専門領域を持つことは歓迎すべきことだ。
ただし、我々の生きるビジネスの領域では、少なくとも、何かひとつ大きな欠点があること、あるいは、ある事柄への執着のし過ぎや行動の極端な偏りといったことのほうが、仕事で失敗したり、信頼を失ってしまうことのほうが多いと感じる。
(スーパースターと仕事する機会が少ないとも言えるが)
食事や運動もそうだ。バランスの取れた栄養や運動が身体にいいのは誰でもわかっていることだ。
すべてをバランスのとれた視点によって判断し、様々な活動をバランスよくこなしたうえでの「得意技」を持つことが何より重要だ。だから、企業は新人に対して、学生時代に失ったバランスを取り戻すために、多岐にわたった新人研修やトレーニングに力を入れる。
バランスの取れた活動とは
ビジネスにおける「バランス」とはなんだろうか。
前述したような、バランスのとれたビジネススキルを持つことも大切なバランスのひとつだが、我々が最も重視しなければならないのは、ビジネスにおいて長期的に成長していくために、現在の活動にバランスが取れているかどうかだろう。営業ならば、同じ顧客に同じ話ばかりしていては、そのうちに飽きられてしまうし、同じクオリティと価格が続けば、競合先も黙っていないはずだ。常に、新しい付加価値を提供し続けることができなければ、継続的な成長はありえない。
つまり、自分自身が成果を生み出すバリューチェーン(付加価値を生み出していく仕組み)を少しずつでも大きくしていくことができるかどうかだ。
ビジネスの活動におけるバランスを考える際、参考にしたいのは、ロバート・キャプラン、デビッド・ノートン両氏によって提唱された「バランスド・スコア・カード」だろう。この概念はあまりに有名で、新たな戦略やプロジェクトを起案する際に非常に便利なフレームワークで、日本においても多数のファンがいる。
この「バランスド・スコア・カード」の優れた点は、組織における様々な機能「顧客満足」「従業員満足」「人材育成」「プロセスマネジメント」「プロモーション」「商品開発」などの様々な組織機能が、すべてつながっていることが一目瞭然になり、どこかにボトルネックがあると、それ以外の機能に大きな影響を及ぼし、全体的な組織力の向上にならないことが即座にわかるということだろう。
ゆえに、「バランス」という言葉が使われている。
「財務目標を達成するための顧客満足・顧客体験」「顧客満足を実現するためのプロセス」「プロセスを実現するための人材育成」などの組織機能は、すべてつながっていて、組織戦略、実行戦略を語るにおいて、これらのバランスを欠くことはできない。
ビジネスにおいて、最終的な「財務」的な価値を生み出すには、個人の能力開発、人材開発から顧客貢献までのバリューチェーンが必要であり、そのチェーンをいかにつくりあげるかにかかっているかを再認識させてくれる。
「差別化」や「ブランディング」など、どちらかというと、個性を打ち出す戦略のほうが、一般的な見方かもしれない。何よりも他社に打ち勝つ、商品やサービス、対応力を持つ必要があり、バランスなど言っていられない、という感じだろう。
さらに、一発のイベント的な発想の方が、即効性を期待できる側面もあり、ついつい、こうした「一発案」を提供することばかりにフォーカスしてしまう。
しかし、こうした一発ものの施策であったとしても、それを動かす個人の能力、組織の持つ業務プロセス、商品力は、すべてにおいて密接にかかわっている。どれか一つの機能があれば済む話ではないし、すべてを日々クオリティアップしいていかないと、それらによって生み出される結果も進歩はない。
今一度、自分の成果を生み出すバリューチェーンはどうなっているのか、ボトルネックはないのか、すべてのパートはバランスが取れているのか、バランスを取るための行動計画は立てているのか、じっくり振り返ってみることは大切なことだ。
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