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人生100年をユングの「人生の正午」から考える/内藤  由貴子

INSIGHT NOW! / 2019年5月31日 13時25分


        人生100年をユングの「人生の正午」から考える/内藤  由貴子

内藤  由貴子 /

「LIFE SHIFT―100年時代の人生戦略」の本が出てから、人生100年が意識化されるようになりました。

最近は「100年!でも、足りるのお金?」のような資産作りのCMが流れています。
でも、準備で優先すべきはお金なのでしょうか。

◇ 心理学者、ユングの言う「人生の正午」

ユングは人生を80年とみて、ちょうど真ん中の
40歳くらいを人生の正午と言っています。

人生の午前が誕生から青年期とすれば、昇っていた太陽は
正午、40歳くらいで下降に転じるというわけです。

人生の南中点から中年になるのですが、それまでのアゲアゲが、
下がるのですから「中年の危機」とも言われます。

人生が100年としたら、正午は50歳なのでしょうか?
午前に該当する少年期から青年期への移行も、
昭和の戦後の頃の20歳と今の20歳とでは、かつての20歳の方が
大人に感じます。

そういう意味では、一生が延びたので50歳なのかもしれません…

ユングの「人生の正午」から計算して60歳はすでに18時頃…
50歳にシフトすれば14:30ごろです

でも、100歳人生を生きるにしても、
人生の正午は、40歳を目途にした方が良いように感じます。

なぜなら、誰でも100歳まで生きられるわけではないからです。
100歳まで生きたとしても、体力や知力などどこまで維持できるか。
80歳をendにしておくことは、悪く無い感じです。

80歳より長く生きられるならその時間は、夏至の頃、日没が遅く
なかなか暮れない一日のような印象でしょうか。

だからこそ「明るい時間をどう生きるの?」という質が問われます。

定年は過去55歳くらいだったのに比べ
少し延長したものの60歳から先は100歳なら40年もあります。


◇ 50代後半にはどんなことが起こるのか

女性の場合、母親であるならこの頃、子どもが自立して自分の元を離れていきます。
子育てから上手く卒業できればいいのですが、
いわゆる「空の巣症候群」のような自分の役割を失い、
「いったい自分という存在は何?」と虚しくなって落ち込む人もいます。

会社員の場合、徐々に迫る定年という節目に、再雇用がどうとか、
会社にまだ残れるのかで、自分の仕事人としての価値を測る人もあります。

期待したような評価を受けられず、定年後の仕事は自分で
探さなければならない時、今まで会社に尽くした自分は何だったんだ…
という話も聞きます。

それに、現役でもっとやっておきたかったことに
「恋愛」が出てくる場合があります。

以前ある主婦の方から、
「夫が仕事で会う女性に興味を持ってばかりで、
専業主婦でやってきた自分と比べられているようで、辛い…」
という訴えがありました。

浮気ではなく、夫側がうきうきしている程度のようでしたが…

映画「死ぬまでにしたい10のこと」の主人公は余命わずかの若い女性でしたが
この10のリストの中の2つは、「恋」。
生きている感覚を最も味わえるのは、恋愛だと、人は本能的に感じるのかもしれません。。

生きているうちに、し残したくないことの一つが恋愛なのかもしれません。

よく聞く定年時の離婚例は、知り合いにもいます。
案外、そんな心の背景があるのかもしれません…

この時期はそれだけいろいろと葛藤があるということです。
それまでの自分という存在価値を考えさせられる時期でもあります。

だからこそ、60歳を前にようやくその後に取り組むより
40歳あたりで意識するほうが、ソフトランディングできるのではないでしょうか。


◇ 人を最も苦しめる後悔は…?

コーネル大学の新しい研究で、人が最も後悔し苦しむのは、義務や責任に関してではなく、
理想の自己として生きられなかったことなのだそうです。
心理学者のTom Gilovich氏による理論です。
(サイト lifehacer 2018.7.11「死ぬ前に人が最も後悔するのは「挑戦しなかったこと」より)

3月末に書いたここでの私の投稿も、それに触れました。
自分の人生に誠実でありたい人は、その葛藤により苦しむようです

かつて私と関わった同年代の方で、自分の今後の方向にとても迷っていた人がいました。
Aさんとしておきます。
書道の仕事はしているものの、書道家として歩む迷いが強く、どうしていいのかわからない…

それから、私が行っているフラワーフォトセラピーなどを受けて
しばらくしたころ、突然連絡があり、
「書道塾を開きました。書道家としてやっていく道を選びました」と言うのです。
しかも、その後、権威ある某展覧会にいきなり「入選」した、という喜びの報せも届きました。

Aさんは、自分の道を50代後半にして選び取ることができました。
それには、その前に強い葛藤の日々があったわけです。

なぜ人は「理想の自己」を生きることが難しいのか…?
Aさんの迷いのように、自分でも「それが、理想の自己だ!」と確信できず選べないからです。

心理相談を受ける中で、若い年代からもこれに似た相談を受けてきました。
選べないのは、こころの奥に
思い込みやしがらみ、同調圧力、そして、自己評価が低い、過去の失敗のトラウマなど
いろいろな感情や思考が、理想の自己につながるものを妨げるからです。

セラピストは、それを分析してそうした妨げになるものを解消します。

目的は、一番の大きな後悔を残さない人生を助けるためです。

これは、お金の問題ではありません。


◇「定活」に加えてほしいこと

雑誌「サライ」のサイトに「定活~定年前活動」を勧める記事がありました。
ファイナンシャルアカデミーが実施した「定年後に関するアンケート」の調査結果を元にした記事です。
結果として、定年前の準備は「そのうち」ではなく、「今から」しないと間に合わないということ。

「どんな老後を過ごしたい?」と聞かれて、「穏やかで静かな毎日を過ごしたい」という人は多いです。
お金の準備も大切ですが、それより大切な「後悔しない人生」、「本当に自分を生きること」

そうして選んだ道には、結果としてお金もついてくるかもしれません。

*写真は、「理想の自己を生きる」イメージで選びました


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