キャッシュレス時代に向け、マーケティングはどう変わる?/猪口 真
INSIGHT NOW! / 2019年8月11日 9時46分
![キャッシュレス時代に向け、マーケティングはどう変わる?/猪口 真](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/insightnow/insightnow_10554_0-small.jpg)
猪口 真 / 株式会社パトス
ド派手なPayPayのキャンペーンや、なんともお粗末なセブンペイの中止騒動など、話題には事欠かないキャッシュレス周りだが、企業のマーケティング担当者は、来るべくキャッシュレス時代に向けて、どのような準備をすればいいのだろうか。
そもそもなぜ国はこれほどキャッシュレスを進めようとしているのだろうか。
国は、「未来投資戦略2017」のなかでひとつのKPIとして2027年までにキャッシュレス決済比率を4割程度にすることを目指すとした。
キャッシュレスになると、国にはどんなメリットがあるのだろうか。
まず、スマホひとつで買い物ができるとなると、買い物が格段に便利になることでお金の流動性は高まるのではないかという期待がある。つまりどんどんお金をつかってくれるのではないかということだ。不透明な現金の流れが減ることは、市場の健全化にもつながる。お金の移動がデータ上で確認できれば、確実に税金も取れるわけだ。
企業側にもメリットは多そうだ。まず、店舗での店員の負荷が相当減る。現金を数えたり渡したりする手間ひまはもちろん、そのあとの管理の手間がまったく違ってくる。社員の経費精算も電子マネーで統一されれば、現金の煩わしさや手数料の経費も減る。
言われ続けているように、労働者人口の高齢化、減少はこれから起こる大きな問題であり、できる限り人手のかからないツールの導入は必須であり、現金の管理、支払いコストは企業にも労働者にも負担となっている。
もちろん、世界から日本が立ち遅れているという危機感もあるのだろう。日本ではなかなかキャッシュレスが進まない実態がある。
クレジットカードの普及はまずまずで、一人当たりのカードの保有枚数など世界でもトップクラスなのだが、キャッシュレスは進んでいない。
国も消費税を上げるに伴い、キャッシュレスにはインセンティブを用意するほどの熱の入れようだが、クレジットカード以外、現実はそれほど普及しているとは言い難い。
韓国は約9割がキャッシュレスと言われているが、日本は約2割。中国でも約6割はキャッシュレスらしい。
アメリカは実はあまり進んでおらず、最近ではむしろ反対意見が目立つ。低所得者対策だ。スマホを持たず、地域でのキャッシュレス端末が進まない地域では、現金でなければ決済できないため、キャッシュレス決済だけでは売買が成り立たないのだ。逆に地域によっては、現金決済を残さないと罰せられるところもあるという。
日本での現金以外の利用は、圧倒的にクレジットカードだ。プリペイド式のカードなら流通系と交通系ががんばっているが、話題のQRコード式はまだまだだ。スマホでの買い物の便利さを訴求するのであれば、QR式の普及が必須なのだが、なかなか進まない。
ある小売りの担当者がこぼしていたが、レジ回りが年々端末機に占領されてくるという。機械の費用もあるし、システムの改修も必要だし、それぞれの手数料もばかにならない。現金と比較して本当にコストダウンになっているのか疑問だという。
まだまだ本腰を入れて取り組みたいと思えるほど、市場は熟していないのだが、消費税増税にともなうキャッシュレスのインセンティブは半端なく、これを機に、一気に広まる可能性もなくはないだろう。
さて、来るべくキャッシュレス時代に、マーケティング担当者としてはどのような準備が必要なのだろうか。
まず考えられるのは、Eコマースのさらなる進展だろう。キャッシュを伴わない決済が便利になればなるほど、購入への障壁は下がる。そのためには、メーカーであっても、SNSなどによるコミュニティの活性化による個人とのエンゲージメントの強化、イベントや展示会での個人データの収集、データ化を進めておく必要がある。
アンテナショップや小売りとの連携が可能であるならば、決済情報に加えて、位置情報を取ることも可能となる。しかも、アプリを限定して活用できるので、地域、アプリ特性を生かした、精緻なキャンペーンやプロモーションも可能になるとなれば、SNSにからめた広告やプロモーションから、決済アプリを中心としたプロモ―ションも活性化していくことも考えられる。
しかしなんといっても大きいのは、一般ユーザーのスマホとの接触時間がますます増えることだろう。今でもポイントはスマホアプリで行っている店舗は多いが、大半の決済がスマホになるとすれば、単純に財布との接触時間が増えることになる。
さらに、決済をスマホで行うということは、スマホに家計簿の機能が加わることにもつながる。コミュニケティやエンターテイメントなどのほかに、個人のファイナンシャルプランの機能が追加されるということは、スマホのなかの情報が自分の生活と切っても切れない状態に近い。
となると、企業としてもますますスマホ向けのコンテンツ提供、プロモーションを強化しなければならなくなる。個人におけるメディアは、完全に「スマホ1強」となりそうだ。
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