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共通言語の強み/野町 直弘

INSIGHT NOW! / 2019年8月21日 15時0分

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野町 直弘 / 株式会社クニエ

コンサルティングの現場でクライアントに入っていくと、最初に戸惑うのは言葉の使い方です。皆さんも他社の調達部門の方と話をしていて、違う言葉を使ったり、同じ言葉を違う意味で使ったりする経験をされた方もいらっしゃるでしょう。また同じ会社でも個々人で言葉の定義が違うこともあります。言葉の定義が違うことで誤解や間違えが生じたりすることもあるでしょう。

企業によっては「共通言語」を定義して同じ言葉を同じ意味で使うようにしています。最初はその企業だけの「共通言語」として使われた言葉が、多くの企業の「共通言語」として普及し、海外でも日本語のまま使われる、その代表的な企業がトヨタでしょう。今回は皆さんがご存知の古くから使われているトヨタ用語から、最近使われるようになったトヨタ用語まで、私の知っている範囲で紹介していきます。

まず古くからTPS(トヨタ生産方式)の用語として、日本語がそのまま海外でも使われている用語を上げましょう。

カイゼン:KAIZEN
人、物、設備、あるいは生産の仕組み等に関するムダを見つけ、知恵を出し、ムダを排除していく一連の活動をいう。改善は特定の人の業務ではなく、全従業員がそれぞれの立場で行うものであり、小集団での改善活動を実施することをカイゼンという。

カンバン:KANBAN
ジャストインタイム生産を実現するための目で見る管理の道具。かんばんには部品名および数量が書いてある。このかんばんを工程間、納入業者との間でやりとりすることで、工場の生産を管理する。

アンドン:ANDON
関係者へのアクションを促すための情報で、現時点の異常場所を一目で判断できるようにした電光表示盤。異常表示のほかに作業の指示、進度表示をするものもある。アンドンは流れ作業
のような異常を他者に知らせにくい生産ラインにおいて、異常を他者に伝えることを目的としている。

自働化 (ニンベンの付いた自動化):JIDOUKA
トヨタ生産方式の2本の柱の1つ。機械設備の異常や、品質の異常、作業遅れなど何らかの異常が生じたら、機械設備が自ら異常を検知し、自動停止するようにしたり、作業者自身が停止スイッチを押してラインを止められるようにすること。不良の流出を防ぐと共に、どこの工程に問題があるのかが明確にわかり、再発防止を図ることができる。「品質を工程で造り込む」ことを可能にする。

ポカヨケ:POKAYOKE
品質不良の発生や機械設備の故障発生を防止するために、異常の発生を防止したり、異常が発生したらラインを止めるための仕組み。作業者のミスを防止する仕組みや、品物に不具合があれば検知し、加工をはじめない仕組みなど。

ここまでは皆さん「聞いたこと」はあるでしょう。いずれもトヨタ発の共通言語として海外でもそのまま使われている言葉です。

さて、ここからはちょっと新しい言葉になります。皆さんはご存知でしょうか。

四位一体(ヨンミイッタイ)
仕入先と調達(部品・ユニットの調達を担当する部門)・生産技術(生産技術を担当する部門)・技術(研究・開発を担当する部門)の各部門が四位一体の活動により、より作りやすく、よりシンプルな、部品・ユニットの構造を実現する。これにより、シンプルでコンパクトな製造工程づくりができ、より高い品質を確保する「ものづくり改革活動」。

(技術の)棚入れ(タナイレ)
トヨタ自動車が新車開発に必要な新技術の提案を内外の部品メーカーから募るために創設した制度の名称。部品メーカーからの新技術情報のデータベースを「棚」と呼び、部品メーカーが売り込みたいアイデアや生産技術などを文書で提出すると、社内のコンピューターネット内に設けたデータベースである“棚”に入力し、保管される。開発や購買の担当者は必要な時に棚を開いて閲覧し、実用化されれば、部品メーカーは新規の部品受注などにつながる。

ポケテナシ(ポケテナシ)
安全性向上のための歩行安全のための標語。ポケットに手を入れない、歩きながら携帯電話を使わない、階段の手すりを握る、斜め横断しない、指差し確認をする――の頭文字を取った標語。単に「安全第一」と呼びかけるのではなく、具体的な行動に落とし込むことで、安全性を高めている。

BR(Business Reform)組織(ビーアールソシキ)
経験豊かな人材を時限的に重点配置し、将来につながる業務改革と人材の有効活用を図る仕組みとして、既存の2割の要員をBR組織に配置し、残り8割の人員で既存業務に対応する。BR組織には経験豊かな人材を時限的に重点配置し、将来につながる業務改革と人材の有効活用を図る仕組みとして定着している。現在はグループ企業含む多くの会社に展開される。

皆さんは知っていましたか。いずれにしても会社内に留まらず多くの企業に共通言語として広まっている、ことは凄いことです。

以前にも記事に書いたことがありますが、私が以前勤務した経験がある米GE(ゼネラル・エレクトリック)社にも同様のことが言えます。

6シグマ、DOMAIC、DOMADV、CTQ、VOC、カスタマーセントリック、ワークアウト、バウンダリレス、インテグリティ等々。(それぞれの意味は自分で調べてください)

特にGEで感心したのは6シグマ手法は全世界全ビジネスの共通言語になっていることです。また共通言語だけでなく仕事やプロジェクトの進め方も共有されています。

何か業務改革を進める時には必ず同じ手順でプロジェクトを立上げ、決められた手順でプロジェクトを推進し、レビューを行い、再度改革を進めていくのです。そういう点で共通言語は言語以上のスキルノウハウの共有や意識改革にまでつながるものと言えます。

筆者後記:文中のトヨタ用語の説明はインターネットに掲載されているトヨタ用語集を元に編集を加えました。各企業で使われている定義と異なる場合もありますがご容赦ください。

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