ちょっと変わった調達改革プロジェクト/野町 直弘
INSIGHT NOW! / 2019年8月28日 10時0分
野町 直弘 / 株式会社クニエ
具体的なプロジェクトの話を書くことは、守秘義務もあり中々難しいのですが、最近私がお手伝いした調達改革プロジェクトは今まで20年以上の私のコンサルティング経験の中でも非常に変わったもので、私自身も非常に多くのことを学ぶ機会にもつながりましたので、顧客の許可をいただいて、ここで紹介させていただきます。
プロジェクトの概要ですが、とある機能部品を製造しているグローバルカンパニーの調達部門がクライアントで、テーマは「戦略的調達へ移行するための仕組みづくり」と「社内教育展開」でした。
丁度1年程のプロジェクトであり、この夏に一定の成果を上げてひと段落しました。
最初にこのクライアントから声をかけてもらったのは、別の会社の調達部長からのご紹介だったのですが、主たるプロジェクトメンバーは30代半ばであり、プロジェクトリーダーは40代前半の転職組の方でした。また驚いたのはこのプロジェクトが立ち上ったのは、この主要プロジェクトメンバーの若手バイヤーが、部内で問題提起をしてボトムアップ型で推進されたことです。
コンサルティング費用は決して安いものではありません。ですから調達部門長や執行役員が経営からの課題を解決するためにコンサルティング会社を活用する、というケースが殆どですが、ボトムアップで若手主要メンバーが部内で問題提起し、それを支える形で数人の若手ミドルマネジメントが支援する形でプロジェクトがスタートしたのです。正直上手くいくかどうか不安でした。
しかしこの不安は杞憂に終わりました。プロジェクトメンバーの熱意は徐々に会社全体の調達部門に伝わりました。パイロット的にスタートしたカテゴリーマネジメントの取組みも全国の事業所を行脚し、その必要性を説明することで徐々に全社の取組みとして仕組み化されていきました。また社内の教育展開にしても最終的には全社の調達部員全員のの8割のメンバーが研修を受講し、その9割以上が内容に満足しているという結果を得られたのです。
最初はこじんまりとした活動だったものが、一年間経ってみると様々な形や仕組みを作り上げることができました。
ボトムアップのこのプロジェクトが何故うまくいったのでしょうか。
まず第一の要因は若手プロジェクトメンバーの熱意です。これが調達担当者やマネジメントを動かすことができたことが上げられます。プロジェクト立上げ当初は、まだメンバーそれぞれが自信をもってできていなかったのが、我々がやっていることは間違っていないんだ、という熱意と信念をもっていく様子が傍からも見られましたが、本当に頼もしい限りでした。プロジェクトがスタートした当初は、プロジェクトメンバーも不安をもったり、「どうせ~」というような発言もあったのですが、私が最も嬉しかったのは彼らが大きく成長したことでしょう。
第二の要因は周りのマネジメントのサポートです。特に若手プロジェクトリーダーだけでなく、各事業所の調達部門のマネジメントもプロジェクトメンバーをサポートすべく動いてくれました。もちろんトップであるCPOや部長からも完全なサポートをもらえたのです。
三つ目の要因はプロジェクトの進め方です。今回のプロジェクトはパイロット品目からスタートし、品目や事業部を拡大し、最後にはより多くのバイヤー担当を巻き込みながら進めていきました。結果的には多くのバイヤー担当とコンタクトしながら、彼らの意識改革を促しつつプロジェクトを推進することができたのです。
このような要因からプロジェクトは一歩一歩成果を積み上げながら成功裏に終わることができました。
しかし、まだまだ課題は残っています。意識改革は日頃の改革の積上げです。誰かが先導しないと必ず消えてしまいます。そういう意味では完全に業務へ落し込めたことはなく、一過性の取組みになってしまうリスクはまだまだ残されています。
しかしこのようなボトムアップ型のプロジェクトであってもメンバーとマネジメントの支援、それから巻き込み方によっては、自律的、自発的なプロジェクトとして上手くいくことを経験できたのです。これからもこの企業の調達改革を支援していきたいですし、同様の他企業での調達改革の取組みにも貢献していきたいです。
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