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中小企業こそ、戦略策定には「OKR」が効果的!?/猪口 真

INSIGHT NOW! / 2019年10月16日 9時15分


        中小企業こそ、戦略策定には「OKR」が効果的!?/猪口 真

猪口 真 / 株式会社パトス

Intel社が取り入れ、GoogleやFacebookなどのビッグ企業も取り入れたとされる、新しい目標管理のフレームとして注目の「OKR」。どんな仕組みなのだろうか。

Oとは「Objectives」で、目的や目標と訳される。GOALsではないので、数値目標というよりは、定性的な目標のことだ。ここではできる限り、大きなチャレンジングなものが良い(ムーンショットともいわれる)とされている。たとえば、「いまだかつてない感動とインパクトを与えるイベントを提供する」という感じか。

もうひとつ、OKRのKRは、「Key Results」で、主要な結果、つまり、Objectiveへの進捗を見るために、定性的な目的や目標を定量的な数値目標として設定するものだ。

ひとつのObjectiveに対して、2~5の定量目標を設定することを推奨されている。もともとチャレンジングな目標だけに、60~70%の達成度で成功とみなすとされる。さきほどのムーンショットに対して、「イベントの企画を年間100個作成する」「データの取れるテストイベントを30個実施する」といったところだろうか。

この「OKR」によく似たフレームのひとつに、「OGSM」がある。

Oとは、Objective (目的)で、ビジネスの目的や目指すべき姿などを表す。SはStrategies (戦略)、その目的の実現のために、何をどのような方法で実現するのかを設定する。当然、この戦略の中には、ターゲット、期間、そして実際に取り組む具体的な施策がある。GはGoals (ゴール)、各戦略の目標。MとはMeasurements (評価)、目標に対して到達度合いはどうなのかを判断する。

これらのそれぞれの頭文字を取って、「OGSM」と呼ばれる。

外資系企業ではよく取り組まれているらしく、非常にロジカルな戦略実行のフレームだといえる。

この「OGSM」、いわれてみれば、至極まっとうな話ではあるが、多くの中小企業にとって、改めてこうしたフレームに沿って日々のマネジメントを行っていくことは、正直、少々難が多い。

経営者であろうが、マネージャーであろうが、組織をマネジメントするものであれば、普通、ビジネスを行っていく上では、誰でも「こういう仕事をしたい」「こうなりたい」「このために仕事をしたい」といった目的を持っているはずだ。ただし、次の「戦略」というものが曲者で、どのようにその目的を達成するのかを考えることになるのだが、そうそう簡単に、他社や他部門に対して差別化された戦略が中小企業にあることは、まずないだろう。したがって、描く夢が戦略として設定されることはあまりなく、「できればいい」程度の意識のなかで仕事をしていることのほうが多いだろう。

当然そうなれば、具体的な目標値を設定できるはずもなく、せいぜい、居酒屋で「ほんとはこういうことやりたいんだけど、リソースが・・・」と主張するぐらいが関の山だ。

その点OKRは、ObjectiveとKey Resultsのふたつだけで構成されているので非常にシンプルだ。

このふたつだけというのが、定性×定量という考え方をより際立たせてくれる。中小や小規模企業で、定性と定量がほどよく組み合わされた目標が設定されていることはまれだ。よくある目標設定は、「売上10億円」という年間目標に対して、A事業2億、B事業3億としてブレークダウンするか、営業マン一人あたり1億円というように、商品か人に割り振っていくものだ。また、定性的な目標設定が好きな経営者は、「今年は顧客満足の向上に努めたい」といった定性的な目標を設定し、ファジーなまま普段の仕事が行われていく。

特に人に対しては、MBO(Management By Objective)を評価制度のひとつとして取り入れ、個人に目標と達成のためのタスクを考えさせる企業も多い。
MBOは成果主義の象徴として、かなりの企業に採用されたようだが、個人のたたき出す数字には、個人の努力以外の要素がありすぎて、人事担当も苦労しているという話はよく聞く。

この点、OKRのフレームは、定性的なビジョンと定量的な現実がうまくミックスされたフレームとなっているので、納得性の高い戦略マップを描きやすい。

中小企業(小規模事業者含め)の経営指標を策定する際には、とても有効なフレームになるのではないか。

しかも、「この1年は」とか「この3年で」と長期的に気張る必要もなく、「3か月間、これで頑張ってみよう」的な考えで取り組めばいい。

中小企業を取り巻く変化は速い。ひとつの仕事で喜んでいたら、次の仕事では180度変わってしまうことなど、日常茶飯事だ。

ひとつおすすめは、Objectiveでは、ムーンショットとともに、ルーフショットと呼ばれる、ムーンショットに近づくための手の届く目標もあわせて設定すること。

Objectiveの設定法として、「ムーンショット」を推奨されているが、中小企業のオーナーは、もともと大きなビジョンを持っている人が少なくない。むしろ、現実への落とし込みができていない場合のほうが多い。

さらに、組織のOKRに対して、一人ひとりのOKRを設定する。そうすれば、全体のビジョンと個人の行動がリンクし、納得いく目標が設定しやすくなるはず。また、仕事の優先順位やタスクの計画もしやすくなるはずだ。

そして、あくまで計画は計画であって、少しでもうまくいかにと思えれば、すぐに計画を変更することも大切なことだ。

あまり堅苦しく考えず、楽しんで行うことがもっとも重要なのかもしれない。

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