私的視察が問題なのではない森田健作知事 ~組織トップに必要なリーダーシップ/増沢 隆太
INSIGHT NOW! / 2019年11月11日 0時49分
増沢 隆太 / 株式会社RMロンドンパートナーズ
・オロオロ記者会見
絵にかいたような動揺ぶりを見せつつ「私的視察」だったことを説明する森田健作知事は、9月の定例会見と比べても声は上ずり、手は震え、水を飲みながら記者の質問に答えていました。あの豪雨の中、自ら運転して視察というのがそもそもものすごく無理がありそうな説明だと思うのですが、自らの政治スタイルであるという一点突破で記者の疑問を全否定していました。
会見について肯定的な意見は皆無で、視察ではなく自宅が心配で見に帰っていたのだろうとか、記録も取らず単に車窓からただ見て回ったという説明自体に無理があるといった、否定意見ばかりです。確かにあの大嵐の最中であれば県庁など対策本部などで情報収集した方がずっと効率的だろうと感じます。
ただ想像を絶する巨大台風であったこともあり、本来の知事の態度としては好ましくないものの、ここまで大きな被害が出ると予想は難しかったとは考えられます。それでも知事という役職の重さを考えれば、私的視察をしたという言い訳はあまりにも説得力がありません。
・東日本震災の菅元首相と同じ轍を避けたかった?
未曽有の災害ではトップリーダーの役割が重要です。東日本震災の時、当時首相だった菅直人氏が福島原発事故の陣頭指揮を取ろうとして、混乱を極める現場がさらに混乱したことがさまざまな検証で示されています。福島原発事故の混乱はさまざまな要因が絡みあい、不幸な偶然もあったことでしょう。
それでもやはりトップリーダーには責任があります。リーダーが対策現場をかき乱すことは危機対応において最悪です。森田知事は菅元首相と明言はしなかったものの、東日本震災時の失態にならないよう混乱する現場に近付かなかったと言いたいようでした。
菅元首相のような介入は論外としても、今回の台風で県知事自ら私的視察をするという行為はどうなのでしょう。組織のトップとして、危機対応の姿として、そのような政治スタイルは認められないと思います。今ここにある危機に対し、何が求められるかという答えが私的視察で得られると思ったのであれば、やはりタレントに首長は務まらないと言わざるを得ません。
・トランプ大統領が持つリーダーシップとは
政権発足以来、続々と有力閣僚が辞任したり、閣僚を解任したり、次々疑惑やスキャンダルが持ち上がるトランプ大統領。究極のポピュリズムともいえる、スケープゴートを攻撃することで自らの地位を固める政治手法は、昔からある社会の分断化による政権固め手法と感じます。
社会問題を外国人や一定の層の責任だと糾弾したのはナチドイツのユダヤ人迫害に代表される、独裁政治の典型的手法です。それだけに自分の支持者・支持層には絶大な効果があるのも事実でしょう。
何より批判に動ぜず、批判するマスコミをすべてフェイクニュースと呼んで全否定する態度は、政治家としての資質には大きな疑問を感じます。一方で、そうした堂々たる主張は、それが間違ったものであっても説得力を持っているともいえます。
アメリカがどこに行くのかは、アメリカ人が自らの責任で選んだ大統領が握っているのです。アメリカ人にそのような投票行動を起こさせたのはトランプ氏のリーダーシップであることも認めるべきでしょう。
・トップリーダーが持つべき資質
「間違ったこと」「良くないこと」であっても、堂々と主張する姿は政治家として、リーダーとしては欠かせない資質です。ミスを犯さない人間はいませんし、組織のすべてから100%支持されるような決断もあり得ません。全員に良い顔をするには、「何もしない」ことしかないのです。
失敗がダメなのではなく、信頼を失わせる態度こそが、組織のトップとして失格なのだと思います。間違っていても堂々と、ある意味開き直ってでも組織を動かす責任があります。
記者の質問に絵に描いたようなオロオロぶりで対応するようでは、およそリーダーと呼ぶにはふさわしくありません。しかし元々タレント・俳優だった森田知事。演技力なら普通の政治家に負けないはずなのでは?とんだところで本業にまで疑問を差し挟んでしまいましたが、ある意味名政治家は俳優的な能力においても優れていたはず。
人で構成された組織を動かす政治家としての能力には、人を説得できる表現力こそ絶対欠かせないものといえるでしょう。
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