韓国人客の激減に振り回される地域はどうすべきか/日沖 博道
INSIGHT NOW! / 2019年11月27日 7時7分
![韓国人客の激減に振り回される地域はどうすべきか/日沖 博道](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/insightnow/insightnow_10712_0-small.jpg)
日沖 博道 / パスファインダーズ株式会社
日韓関係の悪化により、韓国内では日本製品の不買運動や日本への旅行を自粛することを呼び掛ける反日キャンペーン「ボイコット・ジャパン」が幅広く、かつ根強く実施されている。
その結果、日本を訪れる韓国人旅行者数が大きく減り、日韓間の就航便が運休する悪循環が生じており、九州各地や札幌など、一部の人気観光スポットは軒並み打撃を受けているとの報道が相次いでいる。
こうした地域の業者の中には当然ながら、「いい加減、日韓の関係改善を図ってもらいたい」という悲鳴も上がっている。
しかしながらそれらの業者の声に同情して、日本政府に対し「韓国政府の主張通り、韓国に対する輸出管理措置の厳格化を取り下げてあげて」という国内世論が湧き上がっているかというと、寡聞にしてそのような声は聞こえてこない。
むしろ日本国民の多くは、確かに韓国人観光客の激減で困っている地域に同情はするが、エキセントリックな「恨」感情をぶつけてくる韓国民の「ボイコット・ジャパン」の動きや、自らの不審な行状を顧みないどころか米国を巻き込むためにGSOMIA破棄をちらつかせる(こちらは最近、ギリギリのところで条件付けながらも撤回されたが)韓国政府のやり方に眉をひそめているというのが実際のところだろう。
仮に韓国の思惑通りに、日本政府がここで腰砕けの妥協を示したとしたら、今度は国内世論の反発が政府・外務省に向かいかねない。日本政府とするとやはり「事態打開の責任は韓国政府にある」と毅然と主張するしかなかろう。
一方、反日世論への迎合にしか支持率低下の歯止めの手段を見出せない韓国・文政権としては、日本側の不信感の源である一連の反日政策(慰安婦問題日韓合意の一方的破棄、徴用工問題の放置、自衛隊機へのレーザー照射問題への不可解・不誠実な対応、日本海を東海と呼称変更させる国際キャンペーン、等々)を撤回することはもちろん、緩めることすらなかろう。政権のレームダック化を避けるためにも、むしろ新たな嫌がらせのネタ(東京五輪のドタキャン?)を仕込んでいる可能性のほうが高い。
であれば、最短でも文政権が続く間は(すなわち2022年5月までは)日韓関係の改善は期待薄で、韓国民の「ボイコット・ジャパン」も長期間続くと見たほうがよいだろう。つまり九州の観光地にとって、韓国人観光客が主力客として戻ってくるのを待ち続けるというのは展望なき方策だということだ。
では韓国人観光客の激減で困っている地域はそのまま衰退すればいいかというと、そんな訳にはいかない。何とか事態を打開し、地域の再活性化を図っていただきたい。
そもそも(地域の研究発表などから読み解く限りではあるが)九州の多くの観光地が韓国人観光客頼りになったのは、1)日本人観光客が少しずつ減り、2)それを補うように増えた韓国人観光客への対応(ハングル語での案内など)を進めた結果、3)韓国側の旅行会社のツアーに組み込まれる度合いが増えるに従いさらに韓国人客が増え、4)それを嫌がる日本人客がさらに減った、という悪循環の構造があったようである。
つまり戦略的に韓国人観光客を誘致した訳ではなく、むしろ「何となく流れに乗ったら韓国人客ばかりになってしまった」というのが実情だというのだ。
実は統計でもはっきり出ているのだが、韓国人観光客は一人当たりの消費額が小さい。これは韓国人がケチだということではなく、むしろ多くの韓国人客が九州の近場へ「国内旅行の延長上」気分で訪れるため、訪日頻度は高めだが一回当たりの消費額は小さいのだろう。
しかも韓国人観光客が訪れる九州の観光地には、韓国人が経営する土産物屋や飲食店が近頃かなり増え、韓国人の団体ツアー客はそうした店を巡るようになっているのだ(実は中国観光客が多い地域でも同様の問題がある)。つまり地元に落ちるカネは意外と大したことがないのである。
さらに悪いことに、韓国人観光客はマナーが悪いという評価が九州の観光地では定着している。商品を触りまくる、別の場所に勝手に移す、値切らずにはいられない、飲食店では勝手に食べ物を持ち込む、等々。
中国人観光客も似たようなことを全国各地で言われているが、彼らは単にマナーを知らないためにそうした行動を行うだけで、人数の多寡とは関係ない。しかし九州における韓国人客は団体の場合に特にひどいらしく、人数にまかせて横暴になる傾向があると聞く。
いずれにせよ諸手を挙げて歓迎すべき客層では元々なかったようだ。そして仮に何らかの事情で日韓関係が一旦改善したとしても、彼の地の国民感情から考えると、気に入らない事態が起きれば再び「ボイコット・ジャパン」のプラカードが声高に振り回されるだろう。
ならばこの際、九州各地の観光協会やDMOは、韓国人客に依存した今までのやり方をすっかり捨て去り、思い切って多様な国・地域からの観光客を誘致することに力を注ぐことが賢明だ。
とはいえ、韓国人観光客頼りになってしまった経緯をみて分かるように、この地域の多くの自治体や観光関係者には、きちんと観光戦略を練った上で地域を挙げて推進する、といった経験もノウハウも欠けている可能性が小さくない。
放っておけば、地域再興のための観光戦略の策定をどこか都会のシンクタンクに丸投げ、などという安易な方向に走りかねないという懸念が拭えない。
そうではなく、是非まずは自分たちの頭で「俺たちの地元は何がウリになり、それを高く評価してくれそうな人たちは一体誰だろう?よその地域とどう差別化できるのだろう」ということを考えていただきたい。
まずは顧客ターゲットをどこにシフトさせるかが問題だろうが、ここでも安易な発想は厳禁だ。関係改善が進んでおり、訪日客数が最大の中国を狙うという発想は出るだろうが、既に多くの観光地がアプローチしている激戦区であり、しかも韓国と並んで政治的リスクの大きい国でもあり、あまり賢いターゲティングとは言い難い。
それよりは他にいろんな地域・国の選択肢があり得るので、冷静に幅広く洗い出してみてはどうか。別段、インバウンド客しかない訳ではなく、国内旅行客も再考の候補であることは忘れずに。
もちろん、その候補出しの際には様々な観点を考慮に入れる必要が出てくる。例えば制約面としては乗り換えを含む就航便などアクセスの利便性。いくら興味が湧いても飛行機の片道だけで20時間以上も掛かるとなれば、期待できる観光客数には自ずと限りがある(むろん、明確に差別化できる訴求点があるのであれば、遠方からの富裕層や長期間滞在客を狙うという選択肢もない訳じゃない)。
とにかく一旦「脱・韓国人観光客」の旗を挙げて、地域の知恵を集めてはいかがだろう。特に若い人に意見を求めて欲しい。それが地域の再興のきっかけにもなろう。様々な経験とノウハウを持つプロの助けを得るのは、それからでも遅くはない。
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