コーズマーケティングは時代遅れか、大企業がESGなら、中小企業はマーケティングでいこう。/猪口 真
INSIGHT NOW! / 2019年11月29日 16時50分
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猪口 真 / 株式会社パトス
最近、ほとんど耳にすることがなくなった、「大儀」や「正義」に関連したマーケティング、いわゆる「コーズマーケティング(コーズ・リレーテッド・マーケティング)」や「エシカル消費(エシカル:ethical「倫理的」「道徳的」)と呼ばれたマーケティングの手法だ。
いずれも、その商品を購入すれば、NPOなどを通じて、途上国や貧困国などに寄付をするというもの。消費者の持つ、正義感や道徳心に訴えかけるもので、ある程度の成果を生み出したものだといえるだろう。
こうした、マーケティングは最近目にすることはなかったが、もうこの手法では消費者に届かないのだろうか。
たしかに、当時から若干うさん臭さや本来であればアピールするものでないといった反感を与えてしまったケースもあり、マーケティングによる活動は、どちらかというと、「カッコつけ」として見られることも多く、ネット上での炎上を招いた施策も少なくなかった。
結果、単にマーケティングとしての位置づけで取り組んでいた企業は、メリットよりもリスクのほうが大きくなってしまい、次々と撤退してしまった。
しかし、大儀や正義がネガティブな要素になることなどありえなく、社会的責任を果たす企業は、むしろ増えているし、ひとつの手段ではなく、経営に必須な要素として取り組んでいる企業はたくさんある。
企業によっては、マーケティングの一手法としてではなく、経営の一環として社会の不公平是正に取り組んでいる企業もあり、マーケティングやプロモーションの一環として目に触れることはなくても、企業経営の一部として行っているところも少なくない。
また、そうした活動を行っている企業は、経営に対しても真摯に取り組むことができ、業績もよい。その流れが、現在の「ESG投資」に表れているのだろう。
その証拠に、ESGで高評価を受けている企業は「収益性」「PBR(株価純資産倍率)の平均値」が高いとされ、財務指標も安定しているという。
ESGとは、企業は、「Environment(環境)」「Social(社会)」「Governance(企業統治)」という3つの観点から事業を進めなければいけないというものだ。環境は、「地球温暖化対策」「生物多様性の保護活動」など、社会は、「人権への対応」「地域貢献活動」など、企業統治は、「法令遵守」「社外取締役の独立性」「情報開示」などだが、さらに、株主や投資家の立場からも、ESGの観点を重視する傾向が高まっており、それをESG投資という。
ESG投資は、すでに全体の3割に達しているともいわれており、将来、ESGの観点の欠けた投資などありえないという状態にもなりそうだ。
結局は「お金」だけの問題ではないということだろう。
「利益の10%を寄付しています」といっても、その利益が、不当労働やコンプライアンス無視で稼いだ利益であるならば、株主や投資家は離れていくし、長期的な存続は難しくなる。
ESGと難しくいったところで、これらのことは当たり前のことであり、長期的な経営を考えれば、無視していいはずがないものばかりだ。
しかし、これらはいかにも大企業向けのものであり、ESGの実践事例などを見ても、我々の組織とは雲泥の差があるところばかりだ。長期的な視点をなかなか持てない中小企業にとっては非常にハードルの高い課題になりそうだ。現実には、3年後の1000万より、今月の100万のほうが必要な場面ばかりだろう。
どれだけ、ESG投資では、売上や利益といった財務指標ではなく、「環境・社会・企業統治」という非財務の観点を評価するといわれても、キャッシュの優先度は常に1位だ。
では、中小企業・小規模企業は手をこまねいていいのかというとそうではないだろう。大企業のコンプライアンスは、確実に取引企業である中小企業にも影響を与えるし、社会的な活動においても何らかを迫られる可能性も高い。
今だからこそ、大企業の先手を打って、時代遅れのマーケティングと呼ばれようが、カッコつけと呼ばれようが、コーズマーケティングやエシカル商品の開発に取り組むべきだと思う。
大企業はESGかもしれないが、中小企業はコーズマーケティングでいこう。
会社のミッション・バリューをこの際、書き直してもいいだろう。メンバーが集まればいい案も出てくるはず。
普段の忙しい仕事のなかで、何か、環境問題解決商品、弱者への配慮、社会課題解決サービスが、現在の仕事と結びつくものはないか考えてみよう。
SDGsの大きな潮流もある。せっかく大企業がつくってくれた道を利用しない手はない。
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