ナレッジワーカーの生産性を上げる時間管理とは/猪口 真
INSIGHT NOW! / 2020年1月15日 11時31分
猪口 真 / 株式会社パトス
ナレッジワーカーが生産性を上げるにはどうするか、もう聞き飽きるほど耳にする言葉だ。ホワイトカラーの生産性向上ツールとしては、いわゆるRPA(Robotic Process Automation)などの、いわゆるオペレーション業務の効率化ツールがあるが、これは本質的な生産性向上ではないだろう。
そもそも生産性とは、生産性向上とは、どれだけ付加価値を、一人・時間当たりに生み出すかということであり、労働による付加価値を意味するもものだからだ。
そういう意味で言えば、多くのRPAツールは単に作業をカバーするものであり、本質的な生産性向上とは言えない。
通常、ナレッジワーカーのアウトプット(結果)は、多くの場合、ドキュメントとプレゼンテーション(ミーティングなどでのコミュニケーションを含む)の複合によって行われる。
そしてそのアウトプットが、プロジェクトなどのプロセスを経て、利益を生み出し、はじめて生産性としてカウントされる。(売れないものを大量に生み出しても、生産性の向上にはまったく関係ない)
もちろん、オペレーション(ルーティンワーク)によってシステムとして付加価値が高まることもたくさんあるが、そうしたシステムを作り上げることが本質的なナレッジワーカーの仕事であることは間違いない。
仕事ができる人ほど仕事を抱え込み、付加価値が提供しにくくなる?
逆説的だが、仕事ができて忙しい人ほど、その人のスキルやセンスを買われて仕事の依頼が殺到するため、自分自身で組み立てた仕事というよりも、「なんとかしてほしい」という状況の中で仕事をすることが多い。
仕事ができるゆえに、時間のない中で対応せざるを得なくなり、なかなかその人の良さを100%出すこともできないのだが、それでも並みの人よりも高いアウトプットのため、お互いに仕方なく妥協するという状態になりやすい。
そもそも、クライアント(上司・顧客両方)から何かしら依頼されてしまうと、多くの人は、まず形を整えること(オペレーション)を考えてしまう。
レポートとしての体裁、企画書のフォーマットなど、クオリティ(付加価値)ではなくオペレーション(量的)としての体裁をとろうとし、結局付加価値のないアウトプットになってしまうことが少なくない。
ナレッジワーカーの付加価値は無限だ
ナレッジワーカーの生産性向上のためには、仕事のアウトプットに利益につながる自分自身の付加価値を込めなければならない。
自分の頭脳で勝負するナレッジワーカーは、アウトプットに対するインプットは、可能性としては無限に伸ばせる。
優秀なナレッジワーカーは、処理して当たり前のオペレーション仕事に時間を費やしている暇はない。貴重な時間を付加価値のない仕事に費やしては断じてならない。オペレーション上の処理であれば、それこそPRAにやってもらったほうがいい。
やはり、貴重な時間をどう使うかという、時間管理の問題となってくる。
ドラッカーが勧める時間管理に、「時間をまとめる」というのがある。個人的にも「この日にたまった企画書や原稿を仕上げる」というように、トライしたことは何度もあるが、成功したイメージはほとんどない。
また、自分で仕事をコントロールするといっても、ナレッジワーカーの仕事は、周囲とのコミュニケーションが必要なプロセスも多い。
関係者の時間に合わせる必要のある機会も多いから、すべて自分の都合通りできるわけではなく、むしろできないことの方が多い。
仕事は生き物なので、瞬間的な突発仕事は多い。また、我々は芸術作品をつくっているわけではなく、1本の電話、ちょっとした相談、仕事のやり方の変更などの瞬間的な判断によって仕事が大きく進展することも少なくない。
むしろ、ミーティングとミーティングの間の時間、ふと空いた時間などに、思いがけずアイデアがうかび、新たな付加価値につながることは少なくない。
付加価値コンピテンシーごとに付加価値タスクを常に準備
前述したように、スキルの高いナレッジワーカーは、必要とされる仕事が多い。だから、毎日のタスクプランとタスクマネジメントが非常に重要となる。無計画では、すべての時間が依頼される仕事で終わってしまう。
自分自身でいかに仕事をコントロールし、自分が目標とする成果を生み出す必要がある。
そのためには、自分の付加価値はどこにあるのかを考えておくことが重要だ。
「新しいキャンペーンのアイデアを出せる」「クリエイティブのクオリティが高い」「人脈が豊富ですぐに人材をアサインできる」「プレゼンテーションに説得力がある」など、人によってさまざまだ。
そして、毎日、どのプロジェクトや仕事であれば付加価値が生み出せるのか、自分が付加価値を提供することができる「仕事」をリストアップしておく。
(上司やクライアントからの依頼でもかまわない)
そのうえで、自分自身の付加価値コンピテンシーと仕掛り仕事のマトリックス上で、今日、何を付加価値としてアウトプットすることができるか考え続けておくことだ。
できれば、毎日のタスクプランニング時に、30%を「付加価値を生むタスク」30%を「プロジェクトを進展させる重要なタスク」として、計画しよう。
残りは、どうせ他人が埋めてくれる。(自分から計画しなくても、依頼した人がアラートを鳴らしてくれる)
AIに奪われる仕事にならないためにも、せっせと付加価値を生み出していきたいものだ。
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