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本人だけでは済まない! 就活セクハラという企業リスク/増沢 隆太

INSIGHT NOW! / 2020年2月14日 7時30分


        本人だけでは済まない! 就活セクハラという企業リスク/増沢 隆太

増沢 隆太 / 株式会社RMロンドンパートナーズ

・就活セクハラを促進したOBマッチング
住友商事、大林組といった超一流企業で、就活中の女子学生へのセクハラ事件が発覚しました。現在の就活システムでは、現役学生がOBOGを訪問して話を聞く「OB訪問」が重要であると指導されます。一方で出身大学名というもっともデリケートな個人情報は、いくらリクルートのためとはいえ、本人許可もなく勝手に会社や出身大学が公開できなくなりました。結果として学生は、大学キャリアセンターでも、企業の人事部でもOBOGとの訪問にてこずるようになっています。(注:私自身はさまざまな大学のキャリア講座において、必ずしもOBOG訪問が必要では無いことを説明している)

ここに商機を見いだしたのはネット企業です。勝手に出身大学(最終学歴)情報をさらすのは違法でも、本人自らさらすなら問題ないでしょうということで、OBOG訪問のためのマッチングサイトというビジネスが出来上がりました。

仕組みは、後輩からの訪問を受け付ける社会人が登録し、学生は志望先企業で自分のOBOGに当たる人を簡単に検索、直接連絡ができます。出会い系と全く同じシステムで、そこから先は個人的にアプローチ、直接会うことができる訳です。自分でリストを探したり、OBとはいえ見ず知らずの人にアプローチしなくて良いなど、学生にもメリット満載のシステムは現在でも非常に多く利用されているようです。

そこから先は個人の自由、自由交流ですが、これがトラブルに発展したのが就活セクハラ事件です。アプローチしてきた女子学生に「個人的に採用に有利な情報をあげる」「個人的に面接突破のトレーニングをしてあげる」「個人的に悩みの相談にのってあげる」といった形での関係を迫る、酒を飲ませてホテルに誘うなど就活生という弱い立場につけ込む不らち者が現れたのです。。

・素人面接官
私はさまざまな企業で「面接官トレーニング」を行っています。面接は採用側が一方的に人物を値踏みし、一方的に売買する場ではありません。しかし心理的には、圧倒的に採用される側が柔い立場におかれており、採用者を代表する立場の面接官はともすれば勘違いしがちなものでもあります。

特に新卒一括採用システムにおいては、今の時期から4月くらいまで、面接が目白押しで、およそ人員削減で担当者も少ないことが多い人事部門だけで面接を完結はできません。結果、役員や他部門の人間が臨時面接官としてかり出されます。通常はマネージャー職など役職者が担当することが多いのですが、これが大きなリスク要因となります。

人事の専門家であれば昨今のハラスメント、コンプライアンスへの認識は十分あるはずですが、特に現場部門で社内の部下と接することが多い管理職の場合、ハラスメントやコンプライアンスに反する言動もナアナアで済まされることが少なくありません。それを部外者である就活学生にやってしまうと、取り返しのつかないダメージを会社に与えてしまうのです。

そもそも面接とは何を聞き、どんなことを検証するためのものなのかを理解せず、バイト採用の要領で大学の話や趣味、特技などを聞いただけで「目の輝き」とか「オーラを感じる」というような非科学的なデタラメな根拠で採否の意見を述べる、全くもって面接官不適任な者が、恐らく相当数いるのではないかと私は予想します。

・面接でのNG質問
以下の内、採用面接においてNGな質問はどれでしょう?
「尊敬する人物は誰?」
「ご出身はどこ?本籍は?」
「あなたのお父さんの職業は何ですか?」
「彼氏/彼女はいますか?」
「結婚/出産の予定は?」

労働局などの「不適切な質問例」によれば、すべてだめです。思想信条や出自、男女雇用機会均等法などに触れる恐れがあり、何よりも本人に一切の責が及ばない情報によって採否を決めるという、きわめて不合理な質問だからです。

ほとんどの素人面接官は、決してハラスメントや就活生の弱みにつけ込んで己の欲望を満たそうという意図ではなく、むしろアイスブレイクや場を和ませようという意図から、こうしたNG質問をしてしまうのです。もしこんな質問を学生にぶつければ、たちまちネットの就活情報交換掲示板などに「○○株式会社の面接でハラスメントされた!」と書き込まれるのではないでしょうか。

ハラスメント問題と同じく「そんなつもりではなかった」という言い訳など通る訳がなく、善意であってもハラスメントは完全に成立してしまいます。就活ハラスメントは、被害者の学生に深い傷を残すだけでなく、発覚すれば企業そのものが著しいダメージを負うものです。人事部門が事前にしっかり面接官をトレーニングしておかないと、こうしたコーポレートブランドに甚大な影響を与えるリスクが野放しになるということが、この先就活本番では大きな課題となることをぜひ自覚して下さい。

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