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ここへきて、インサイドセールスが注目を浴びている?/猪口 真

INSIGHT NOW! / 2020年2月29日 18時26分

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猪口 真 / 株式会社パトス

営業のスタイルに変化が出てきているらしい。

営業といえば、今でも飛び込み営業に代表されるように、足を棒にしながら歩き回り、数少ないチャンスをものにしながら、受注を目指すというやり方が、いわゆる営業というものだった。

あるコマーシャルに代表されるように、「何件訪問したか」「何枚の名刺をもらえたか」を競いながら、「営業は体力だ」と言わんばかりのスタイルであった。

その後、「コンサルティングセールス」と言われるような、営業としての地位を少しあげたようなスタイルがもてはやされ、営業というよりも、「顧客の課題解決型」のスタイルが本当の営業のスタイルだと呼ばれるようになってきた。

ところが、その営業の職種自体がかなりの勢いで減少しているという。

国勢調査のデータによれば、2000年あたりの約470万人をピークに、2015年には約130万人もの営業マンが減少しているという。

これには、様々な理由が考えられる。

まずは、企業そもそもの数が減少している。

中小企業白書によれば、企業数は1999 年以降は年々減少傾向にあり、直近の2016年には359万者となっている。2014年から2016年の2年の間に企業数は23万者(6.1%)の減少となった。(ただし、企業規模の内訳をみれば、大企業はむしろ増加、小規模事業者がかなりの勢いで減少している)

企業が減れば、必然的に営業マンの数も減るだろう。

次に、B2Bにおいても、Eコマースが普及してきており、すでに企業の備品関連や原料・資材、部品においても、かなりの割合でEコマース化してきているのは間違いないところだ。

これによって、いわゆる「御用聞き」営業は、すでに不要になっていて、営業には、ただの注文取り以外の能力を発揮することで、営業としての確固たる地位を築かなければならなくなった。

ところがその牙城が崩れようとしている。

営業マンが減少している中、異常に増加している職種がある。営業に代わって生まれたのが、「営業・販売事務職」と呼ばれる職種だ。

社内にいながら、ITのシステムを使いながら、専属の営業担当とほぼ変わらないサービスを提供するという仕事だ。

そうした、既存顧客向けのサービスに加えて、MAツールの機能が高度化し、新規開拓の営業においても、ある程度の関係を築きながら契約の手前までをサポートしようとするのが、今でいう「インサイドセールス」だ。

もともと、こうした部門は、テレアポ部隊などと呼ばれ、外回り営業の補佐的な役割として存在はしていた。

「展示会来場者に電話しアポイントをとる」「セミナーイベントなどの出席者にアポイントをとる」「メルマガからのアクセス者にFAXやDMを送りアポイントをとる」など、伝統的なセールスプロセスの一環としてよくあるかたちではあった。

ところが、現在の「インサイドセールス」は、外回り営業の補佐ではなく、むしろ「主力部隊」として活用している企業が増えている。むしろ、外回り営業は、契約書の捺印や顧客の確認や与信問題など、外せない事務手続きのみに回るケースが増えてきている。

なので、電話の内容が明らかにこれまでとは異なる。単なるアポイントではなく、すでにコンサル的な内容であることに加えて、Webやクラウドも同時に活用する。顧客がPCの前にいれば、共有画面によるコンサルティングが始まるというわけだ。確かに、最近、電話によるセールスが変わってきたと感じることが多い。

アメリカでは。すでに3割近くがこのインサイドセールスによって契約がなされているという。

そして、現在のウィルス騒ぎだ。

もはや、オフィスに行くことが悪のような様相となり、営業が、気楽に顧客訪問ができなくなってきている。

訪問販売でも、コンサルティングセールスにしても、顧客とのリアルな接点が持てないケースが増えてきた。加えて、今回の騒ぎのメリットとして、リモートワークやテレワークを「働き方改革」と称し、推奨している風情もある。

個人的には、リモートワークやテレワークが仕事の本来の姿とはあまり思えないが、この状況が続けば、顧客側のパラダイムが変わるだろう。むしろ、あまり好きではないリアルなセールスよりも、ネットワークを介したセールスやミーティングのほうを望むこともあり得るだろう。

「働き方改革」において、実はもっとも大きな課題となっているのは、営業かもしれない。プレゼンテーション能力や交渉力といったデジタルでは置き換えにくいスキルが必要な側面もあるが、営業にとって、クロージングまでのストーリーを描き、時間をかけたアプローチが、一人ひとりのノウハウとなっていた。それが、一人ずつ異なるゆえに共有化が遅れていたわけで、インサイドセールスとして、組織としてのナレッジ共有が可能になれば、その問題は解決する。

優秀な営業ほど、「相手に会うことができればなんとかなる」という思いは強い。それが会えないのだ。

営業の生産性向上が、実はそのプロセスにあり、インサイドセールスの出現によって生産性が上がり、結果、営業が不要になるという、なんとも皮肉で笑えない事態となろうとしている。

生産性革命が本当に必要なのは、営業職そのものなのかもしれない。

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