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ポスト・コロナに変わる「価値観」とブランディング/石塚 しのぶ

INSIGHT NOW! / 2020年4月24日 4時33分

ポスト・コロナに変わる「価値観」とブランディング/石塚 しのぶ

石塚 しのぶ / ダイナ・サーチ、インク

「ロックダウン」という長い冬

現在、アメリカの人口の95%、さらに、世界の人口の約3分の1が「ロックダウン」状態にある。今日、全米のほとんどの小売店舗が休業。営業している店舗も、営業時間を短縮し、入店できる顧客の数を制限している状況だ。それを背景に、「ショッピング」はリアルからネットに大きくシフトしている。2020年3月23日から30日までの一週間のデータを見ると、前年に比べネット通販は14%の増加を記録している。

コロナ後の生活者マインドセットを考える時、最も重要なのは、コロナウイルスが人々の心の中に呼び覚ました「不安や恐怖」が、今後長い間、生活者の意識の中に生き続けるだろうということである。そして、それがビジネスに与えるインパクトは大きい。

ポスト・コロナのブランディング
コロナ後にどれだけの生活者が店舗に戻るのか、それは未知数だ。ロックダウン中に自由にショッピングを楽しめなかったフラストレーションが、開放感とともに需要を押し上げるかもしれないし、「消費しないことが美徳」という新しい価値観が生まれるかもしれない。コロナ後の不況がどれだけ深刻化するかも要因のひとつだ。

どちらに転ぶにせよ、変わらないのは「清潔さ」への関心の高まりだ。そして、「非接触」も新たなキーワードとなる。最新の調査によれば、米生活者の87%が「セルフ・チェックアウト(つまり、店員と接触しないチェックアウト)」、または「非接触のチェックアウト(アプリ等により機器に触れずに決済できるチェックアウト)」を望んでいるという。

「今日、来店客は恐怖を感じながら買い物をしている。生活者にいかに『安心』を提供するかが、小売業者にとって最優先の課題になる」と、ある店舗コンサルタントは指摘する。

まずは、「清潔感」をいかにアピールするか。店舗でのハンド・サニタイザーの提供が常識になるだろうし、タッチスクリーンや現金を介さない決済の方法も当たり前になるだろう。過敏な時期は過ぎ去るかもしれないが、究極的に重要なのは、いかに信頼度の高いブランドになりうるかである。

店舗がいらなくなるわけではない。生活必需品の購入についてはネットでの買い物が主流化しても、人は店舗が提供する「エクスペリエンス」を求めるものであるからだ。

だからこそ、ロックダウンのさなかにも、いかに顧客とのつながりを保っておけるか、それがブランドにとっては重要な課題となる。

ポスト・コロナの成長戦略:「安心」「安全」「信頼」を具体化する
コロナ後の世界でも、コロナ以前と変わらず、「サステナビリティ」が大きなテーマとなる。また、「健康/ウェルネス」も同様に重要だ。コロナ後の世界では、「健康=豊かさ」になる。しかし、「身体によい」だけでは不十分だ。「環境によい」こと。それも、「商品そのもの」だけではなく、「商品を顧客の手元に届ける方法」の健全性も問われるようになる。これは、たとえば、プラスチックごみの廃棄による環境破壊を防ぐため、プラスチック容器を用いない売り方・買い方の提案などといったことを指す。

「ウェルネス」は不況にも強いカテゴリーだが、コロナ後にもこれが重要視されるはずだ。「ラグジュアリ=包括的なウェルネス」と認識されるようになるのではないかと、あるコンサルタントは示唆する。今、生活者の頭の中にあるのは、様々な意味での「恐怖」だ。コロナ危機が過ぎ去った後、生活者がブランド(企業)に対し真っ先に求めるのは「安心」「安全」と「信頼」だろう。それをいかにして提供するのか。

たとえば、サービス業なら、家庭やオフィスに出張して行う、より「パーソナルな」サービスの提供になるのか、あるいは「非接触」の仕組みを取り入れるとともに、「清潔さ」を売りにした店舗なのか。それぞれの業種・業態や、ビジネス/サービス・モデルに見合った、「安心」「安全」「信頼」の具体化戦略を考えていく必要がある。

コロナ後の生活者行動は、主に、ウイルス感染に対する恐怖や、ロックダウン期間中に培われた習慣により形成されていくと思うが、「今後の企業の身の振り方」がそれに与える影響も大きい。

それはつまり、企業が。自社の従業員の安全を守るためにどういった行動をとるか(あるいはとらないか)、店舗ビジネスであれば、店舗を開けておくのか閉めるのか、開けておくとしたらその目的は何なのか、そして、企業として何を魅力とするのか、ただの「安売り」が魅力なのか、それとも顧客に対する思いやりや気遣いを伴った振る舞いが魅力なのか・・・。そういったことが問われてくるということである。

アメリカの小売業、とくに食品などの生活必需品を扱うスーパーなどの小売業では、これまで「低価格」志向のお店が主流であり、確固たるパーソナリティや「ブランド」を売りにしているお店は少数派だった。しかし、コロナ後の生活者が求めるのは、ただ「安ければよい」ではなく、品揃えから、店舗環境、サービスの遂行、従業員に対する姿勢に至るまで、「思いやり」あふれる、信頼できる企業から買うということではないか。

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