就活面接必勝法。国会答弁を見習うな/増沢 隆太
INSIGHT NOW! / 2020年5月25日 12時47分
増沢 隆太 / 株式会社RMロンドンパートナーズ
・国会答弁というグダグダコミュニケーション
黒川検事長の検事総長任用を巡る問題は国会だけでなく、芸能界も巻き込み国民的議論となりました。結果として政府与党はコロナの真っ最中、他の案件を押しのけてまでゴリ押し成立させることを断念し決着、と思いきや、当のご本人が賭け麻雀をやっていたなどと、意表を突いたオチで一回転ひねりの着地となりました。
政治的な信条はさておき、コミュニケーションの専門家として、私が注目したのはこの黒川検事長定年延長を巡る国会討論(予算委員会)です。野党はその手続きの異常性や官邸に忖度した検察官を優遇する無法なやり方を攻撃します。言葉を極めて厳しい追及です。しかし安倍首相や森法相はどんなに厳しい言葉にもノラクラ答弁で返すだけ。結局国会討論で話が進むことは無く、与野党協議とその後の与党の法案取り下げというグダグダ展開。
結果として辞職となったことは、野党の追及が成功?なのかも知れませんが、少なくとも予算委員会や国会での討論は、戦略コミュニケーションという視点では決して褒められたものではありません。
なぜか?
戦略コミュニケーションは結果を出すことが目的だからです。
・厳しい追及のどこがダメ?
野「自分たちに都合良い人物を、検察のトップに据えたいんでしょ!」
首・法「そのようなご指摘は全くあたりません」
こういった言葉の応酬は交渉において全く意味を成しません。よく白黒つけるという言い方がありますが、白黒つけるのであれば言い逃れできないような「認める以外に無い」言及ができなければ成立しません。単に相手の非を突きつけても、それを否定されたら終わってしまうようでは全く結果など得られないからです。
「このような都合の良い対応を過去してきた事実」を認めさせたり、「本来ならあり得ない判断」であることを過去と比較したり、相手の非をロジックであぶり出すことで、「あたらない」とか「違う」といった逃げを打てないようにすることが戦略コミュニケーションです。
実は就活面接で同じようなグダグダアピールが行われているのです。
「面接はコミュニケーションの場」と言われます。私もそう思いますが、その意味するところを本当に理解できているでしょうか?文字上の意味はわかっていても、その『コミュニケーション』を、単なるしゃべりの上手さとカン違いしている人が圧倒的に多いと思います。
・就活面接で「自分の強みはコミュニケーション能力です」と言ってしまう愚
コミュニケーションはしゃべりの上手さでは全くありません。いかにESに書いた通りセリフをスラスラ言えるかという、完全に間違った面接練習をしている学生は、ちょっと話をすれば即座にボロが出ます。ロジックではなくしゃべりの流ちょうさしか練習していないので、会話というコミュニケーションが成り立たないのです。
「自分の強みはコミュニケーション能力です」と自己アピールする学生はいますが、コミュニケーション能力が高いことは間違いなく評価されるでしょう。しかしそれは「コミュニケーション能力が高い」と自分で申告したから評価されるのではありません。野党が「不適切だ!」といっても、どう不適切なのか説得できない、認めるしか無いロジックを組み立てられていなければ、ノラクラ逃げ通すこともできるし、全くそう思わなくとも「コミュニケーション得意なんですね」と表面的な会話でやり過ごされてしまうでしょう。
戦略コミュニケーションは結果を出すこと。「コミュニケーション力が高い」と宣言することではありません。面接というコミュニケーションを通じて「確かにコミュニケーション力が高いな」と思わせる、説得できることがゴールです。
話す前から「すっごいおもしろい話があって」とか「○○ちゃんてすっごいイケメン/美人だから」とわざわざハードル上げて何がしたいのでしょう?これは始めから「コミュニケーションが苦手」と逃げを打っておけという意味では全くありません。「できる・できない」のような結論は自分が決めるものではなく、相手が感じ取るものなのです。
面接というコミュニケーションは、相手に「コミュニケーション力が高い」と感じさせることであり、目指すものはその結果である採用・内定でしょう。学生時代に力を入れたことは、何をやったかというネタ合戦ではなく、普通の学生生活を通じて、こんな視点でこんな工夫をし、こんな問題にぶち当たり、克服した/克服できなかったと説明してくれれば、非常にわかりやすく人となり、人物像を説明できる、コミュニケーションできる人と印象付けられるのではないでしょうか。
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