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コロナ禍からわかったこと/野町 直弘

INSIGHT NOW! / 2020年5月27日 8時36分

コロナ禍からわかったこと/野町 直弘

野町 直弘 / 調達購買コンサルタント

ほぼ1か月ぶりの投稿になります。

月曜に緊急事態宣言がようやく解除されました。
今回まではコロナについて私の考えを述べていきます。今回はこのコロナ禍を総括して私が感じたこと、気が付いたことについて「コロナ禍でわかったこと」というテーマでのまとめです。

1)ゼロリスク志向の強さ
コロナの第一波が国内に来た3月中旬ごろ専門家会議より「三密」を避けなさい、という行動変容の報告がありました。この時は「三密」のアンド条件を避けるという内容でしたが、それが外出自粛や緊急事態宣言による休業要請が出されると共に、8割の接触制限へと、また何故か知りませんがそれが8割の外出制限、そしてステイホーム運動へとつながっていったのです。そして自分や子供が我慢しているのに、何で自粛しないのか、という理屈から、過剰な自粛警察が生まれるまでになってしまいました。

私は従来から日本の社会や企業は他の国に比較して「ゼロリスク志向」が強いと考えていましたが、今回それを改めて感じたのが一点目の気づきです。リスクマネジメントは全てのリスクに対して、コストをかけて回避することではありません。場合によってはリスクを受容することも必要となります。しかし、今回のコロナ禍ではステイホームや休業の強要が当たり前のように叫ばれました。リスクが低いと言われている公園や海岸の人出も問題視されていたのが、ゼロリスク志向の最たるものです。

これは「何かあったらどうするのか。」「何かあったら(あなたは)責任が取れるのか」という言葉に代表されます。
これは、昔から改革推進を反対するときの常套句そのものです。

2)思考停止
前回の記事でも、私は「思考停止になるな」と警告しましたが、やはり多くの方が思考停止しているように感じました。物事の基本は、情報収集→分析→思考(判断)→実行→レビュという流れになるのですが、多くの人は重要な情報ソースである「専門家会議」の答申すら読まずに、ワイドショーやSNSの記事、一部の専門家や政治家の声を元にひたすら怖がっていました。

また一方でコロナは大したことがないという論調を誰かが論理的に説明すると、何も考えずにその考えに乗る人も多くみられたのも思考停止です。

自分で元ソースを取らず、考えなくても「この人がこう言ったから・・」と思考停止するのは一番楽な言動です。一方、私はコロナよりもこういった傾向で思考停止し他者の考え方に流されるという事象に余計恐怖感をおぼえました。

3)皆が誰かに怒っている
これは私も反省しなければならないのですが、テレビをつけても国会中継を見ても、SNSを見ても誰かが誰かに怒っています。
基本SNSなどは匿名性もあり、以前からその傾向が強い、と言われていますが、このような社会的な危機が迫っている状況では、怒りが増殖しているように感じられました。結果的には日本は感染者、死亡者ともに欧米と比較すると、とても低い人数に抑制することができました。専門家会議が当初述べていた重症患者の山をできるだけ抑え込み、医療崩壊を防ぐことも達成しました。

でも多くの方はそれでも自分の考え方と違う人「自粛しない人」「自粛警察」「政治家」「コメンテーター」などに対して怒っています。一部のコメンテーターや著名人は今でも、何でPCR検査を全国民にやらないのか、と怒っています。

誰かの怒りに触れると人はストレスが溜まるものです。一番の対策は怒りに接する機会を減らすことだと考えます。

4)知見を集めることの重要性
日本国内で初の感染者が判明したのが1月下旬ですから、既に4カ月が経ちました。新型コロナをもう未知のウィルスと言っている時期は過ぎたと考えます。しかし、私が知る限り、ファクトに基づく重要な情報は、3月中旬に出された「三密を避ける」こと、他には高齢者が感染させやすいということ、と感染させるのは発症前後、ということ位です。もう既に国内で16千人以上の方が感染しています。調査の対象としては十分ではないかと考えます。

クラスタの発生源がどこなのか、だけでなく、国内における基本再生産数(何も手をうたなかった場合に1人からどれくらいの人が感染するのか)の推計、また以前も指摘しましたが、2割と言われる感染させる人がどういう人なのかと、感染のメカニズムをはっきりさせて、どのような行動変容が有効で、どのようなことが不要なのかを、今までの知見からはっきりさせることが求められます。

そしてもう1点は医療崩壊を防ぐための対応です。最近のニュースで新型コロナに対応していない医療機関ががらがらで経営危機に陥っているという話があります。また、新型コロナ対応している医療機関も、他の患者が受け入れられずに経営が苦しいという話も出てきているようです。実際に私が長年通院している某大学病院は新型コロナ患者の受け入れはしていません。恐らく新型コロナ患者を受け入れることによる院内感染や経営悪化などの様々なリスクを鑑みてのことと思われます。

一番よいのは公的資金で専門の病院を用意することです。これはお金をかければできないことではありません。実際に大阪はこのような準備を進めています。次の流行が来る前に特に東京は対応すべきです。

5)F2Fの重要性の再認識
最後はポジティブな気づきになりますが、フェースtoフェース(F2F)はやはり重要だということを再認識しました。4月初めから、ほぼ毎日在宅勤務になりましたが、継続プロジェクトはどうにかなります。今回の在宅の経験で論理や体系化は在宅でも十分伝えられることがわかりました。また、一度体系化したプロジェクトマネジメントを在宅で進めることも、それほど難しくないことがわかったのです。

しかし、人を動かすことをテレカンや電話だけですることはとても難しい。特に、一度も顔を合わせたことがない方に、テレカンだけで説得することは難しいと感じます。こういう場面
はF2Fが必要です。何故なら、人は論理だけでは動かないから。
人を動かすには非言語のコミュニケーションも、やはり重要だと再認識しました。

このようにF2Fが必要なケースとそうでないケースを切り分け時間の使い方や働き方を変えていくことで、より効果的な働き方ができるのではないか、と気付いた次第です。

「グローバル調達とものづくりのリアル」というメルマガで著名な岩城さんが、今週号で「サプライヤとのコミュニケーションのスタイルを決める主導権は今やギリギリバイヤーにある。」しかし「この重要性をバイヤーが再認識しないとバイヤーの存在感自体がなくなるだろう」とおっしゃっています。正にその通りで上手くF2Fを活用する、それをハンドリングするのはバイヤーであるな、と感じた次第です。

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