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アンジャッシュ渡部のジャンピング土下座の行く末/増沢 隆太

INSIGHT NOW! / 2020年6月11日 7時30分

写真

増沢 隆太 / 株式会社RMロンドンパートナーズ

・グルメ王に美人妻、あふれるトロフィー
渡部さんといえば、グルメ王であり、アイドルだった佐々木希さんの夫であり、DJ、パーソナリティ、野球と多彩なフィールドで活躍しています。文春報道によれば、渡部さんがセクシー女優など複数の女性と関係を持ったとのことで、所属するプロダクションからも渡部さんの謝罪と活動自粛の発表がありました。

元々職人派コント師と呼ばれる渋いコントをやっていたアンジャッシュですが、相方の児島さんがポンコツ芸人として脚光を浴び、昔からイケメン芸人として人気のあった渡部さんは、活動の場をお笑い以外に広げ、結果としてアンジャッシュというより、アンジャッシュの二人がそれぞれ人気を得て行ったのでした。絵にかいたようなトロフィーワイフとも呼べる、人気アイドル女優の佐々木希さんとの結婚で、さらに渡部さんの勲章は増えました。

しかし渡部さん自身がお笑いをやめた訳ではなく、今でもコントこそ演じる機会は激減したものの、バラエティ番組での露出はかなりあります。笑いに限らない活躍の場を得たことで、渡部さんの存在感はより上昇した印象があります。相方の児島さんはツッコまれキャラのポンコツを売りに笑いを得る一方、性格俳優的な演技も評価され、二人そろって別々のフィールドでせ出世するというのは、かなり珍しいパターンでしょう。

・社会的ポジションの持つ位置エネルギー
文化人的仕事も増えたことで渡部さんの芸能界ステータスは上がったと思います。一方でこうした位置の上昇はリスクも伴うのです。元気で明るいキャラだったベッキーさんが不倫事件で転落したように、地位の上昇は品行方正さを同時に要求されます。

ビートたけしさんはかつてフライデー編集部襲撃事件で逮捕された時、破天荒な生活含めた芸人の生き方をそれまでも語ってきたにも関わらず、「(犯した行為を)子供にどう説明するのか?」といった、いつのまにか模範的な生き方を要求される立場に勝手に祭り上げられたことをなげいていました。たけしさんも人気芸人、漫才師の枠を超え、映画や小説その他さまざまな文化人フィールドで活躍するにつれ、本人の意向を越えた模範性を求められるようになっていったのでした。

渡部さんの文化人仕事での成功は社会的ポジションを上げ、それは同時に模範性というリスクをも上げていったといえます。その位置エネルギーは、ベッキーさんが不倫事件で袋叩き、芸能活動追放と激しい批判を呼んだように、高くなればなるほどリスクを上げ、失敗した時の批判のマグネチュードを増大させます。

・ジャンピング土下座
半沢直樹などで土下座が脚光を浴び、普通の土下座の上位版としてジャンピング土下座やフライング土下座、ローリング土下座といった激しいアクションを伴う土下座が動画などで上がりましたが、これはネタです。実際のトラブルでこんなことをやれば炎上することはあっても事態収拾につながることはありません。

ネタではあっても「普通の土下座を超えた謝罪」を表すものがジャンピング土下座だとすれば、文春の発売前に早くも行為を認めて謝罪、謹慎として活動自粛という矢継ぎ早に先手を打った対応は共通点はあるかも知れません、多分事態収拾にはつながらないという。

私はこれまでも「謝罪の戦略目標は事態収拾である」と主張し続けてきました。売れっ子芸能人である渡部さんが、会見など開かずに活動を自粛しても、今のネット環境下で忘れ去られるには長い時間がかかります。ご家族を抱えて無収入の生活が長期間に及ぶ事態に、果たして耐えられるのでしょうか。

渡部さんが少しでも事態を何とかして芸能活動を再開するため、確実な方法がある訳ではありません。しかしその努力はだめ元でもすべきなのではないでしょうか。謝罪会見でボロくそにけなされ、集中砲火を浴び、その上で現在まで唯一、渡部さんの文化人活動をボロくそにけなすことができる有吉弘行さんなどの援護射撃による渡部イジリなど、徹底した「位置エネルギー除去」によって、わずかながらも活動再開につながる一縷の望みはあるのではないかと思います。

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