コロナ後の企業変化、就活学生はどう見ているか?/増沢 隆太
INSIGHT NOW! / 2020年7月10日 7時31分
増沢 隆太 / 株式会社RMロンドンパートナーズ
1.オンライン化がすべてを分ける
生活様式を変えてしまうほどの激しい環境変化は職場も同じです。満員電車で定時出社という「当たり前すぎる」会社員生活だったものは、一気にオンライン/リモート/在宅勤務として実現しました。
長年「未来の働き方」だった在宅勤務ですが、とっくの昔にIT技術はそれを実現できるようになっていたにもかかわらず、会社というものは頑として満員電車による定時出勤を譲りませんでした。コロナはこの壁をいとも簡単に壊し、またITリテラシーのある会社員は、むしろ効率的に業務遂行できるようになっていきました。
しかし緊急事態宣言も終わった今、再び満員電車による定時出勤は復活しています。在宅勤務など許さない人々が会社の意思決定をしているからです。就活でこうした会社の体質は確実に露わとなっています。
「やっぱりズームじゃなくて直接会わないとオーラを感じない」
「俺は目の色で人を見極める」
といった類いの、オンライン全否定派、リアル原理主義者が多くの会社で実権を握っているという実態が露わとなっているのです。
2.「社員第一」の実態
コロナ吹き荒れる今年の5月、ある都内のIT企業の選考で「当社は社員の健康第一に、消毒や換気を徹底して安全を図っているので、安心して来社して下さい」とリアル面接に呼び出されたという相談を受けました。県境を出てはいけないという大学のBCP基準があるので、就活学生が面接のための上京に躊躇するのは当然です。
私は企業にはいろいろな考え方や方針があり、良い悪いではなく、そうした経営方針にあなた自身が合うかどうかで決めてはどうかとアドバイスしました。リアル原理主義の経営が明らかな会社は、恐らくIT企業であっても定時出社やリアル会議を優先したいのかも知れません。地方大学の学生保護の姿勢などには関心ないのかも知れませんが、コロナ過の東京で、どれだけその事業所「だけ」が仮に安全だとしても、そこに至るためには高額な新幹線代を負担し、在来線を乗り継いで新幹線の駅まで行き、東京に着いてから会社のある駅までは山手線や地下鉄を乗り継いで行くリスクは「考えない」会社なのかも知れません。
そういう行動を社員に求める「社風」を是とするなら受ければ良いし、そのような職場や経営陣とは合わないと感じるのであれば、これまた企業選びの判断材料とすべきだろうと思うのです。
3.是が非でもコロナ前の風習に戻りたがる企業
コロナ勃発当初、接客や小売業、サービス業界で「マスクをして接客するのは失礼」という言説が飛び交いました。外資の超大手ファーストフード店ですら、スタッフがマスクをするには本部?本社の許可がいるとの説もありました。
「商談は面と向かって差し向かいが当然。インターネット経由のオンラインなんてお客様に説明できない」
「オンラインで会議では味気ない。会議後の懇親会含めて『会議』であって、出張は無くせない」
「お客様のところに駆けつけられないなんて仕事にならない」
「お客様に説明できない」
「お客様から呼ばれれば対応するしかない」
こんな横柄で俺様なお客様しかいないのでしょうか?貴社の客筋って、そこまでバカ揃いなんでしょうか?
逆に感染症をBCPリスクととらえ、適切な対応をしたいと考える顧客からすれば、「今すぐ伺ってご説明いたします」なんて態度は大迷惑です。そのような感染症対策を考えられない人物はどこでリスクを自社に運んでくるか、およそ信用などできません。
本当にお客様がそんな無体な要求をしているのか、私は疑問に思います。マスクをすると失礼と考える顧客「だけ」で経営が成り立つなら、そういう人たちとだけ付き合えば良いでしょう。しかし多くの物言わぬ、真摯に感染症対策を考えるお客さんからの信用を失っていることまで頭は回っているのでしょうか?
コロナなんて風邪と言っている政治家もいますが、そうした姿勢はお客様ではなく、自分たちが志向しているのではないのでしょうか?
4.学生と考える「危険企業」の体質
学生と話していて、彼ら彼女らが不安に感じる要素がある程度見えてきます。
・社長自ら飲みニケーションをアピールする会社
・「残業大好き社員」が大好きな会社
・リスク感覚の無い「台風でも這ってでも出社」美談大好きな会社
・「夢」が大好きな会社
かなりのニオイを発しています。これらがダメとか悪いという意味では全くありません。その実態をしっかり学生に伝えなければ、ただのブラック企業と勝手に思われる可能性があるという意味です。
コロナ対応で自社の対応で採用どころでない企業も多々あったでしょう。しかし応募者ほったらかしで数ヶ月採用活動を中止というか、放置する企業もありました。そういう態度はしっかり学生から見られています。
コロナ対応で、旧来の風習を変えることに抵抗する企業とは、すなわち変化対応を拒絶する体質だと考えられると思います。口先だけで改革だの成長だのうたっていても、コロナはその本質を露わにしています。繰り返しますが、あくまで経営方針はその会社が独自で決めるものであり、コロナ対応をしようがしまいが自由です。しかし会社を選ぶ学生にとっては、説明会で社員が説明した「当社の社風」のようなただのCMより、面接対応、選考対応で見られる企業体質の方が、何倍も説得力ある判断材料だと思います。
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