10/1、大「内定辞退」は起こるのか?/増沢 隆太
INSIGHT NOW! / 2020年8月3日 7時30分
増沢 隆太 / 株式会社RMロンドンパートナーズ
・過去とは別物の2020年内定状況
例年より1割程度低い約7割程度の内定状況だと、リクルートキャリアが7月発表したプレスリリースにありました。3月から5月が事実上選考停止状態だったことを考えれば、6月から猛烈なスピードで選考は盛り返し、むしろ例年の9割程度まで追いついたという印象です。
大学のキャリア相談現場にいますが、実態としても6月後半から7月にかけて、一気に内定は増えました。これまで、いわゆる経団連ルール、6/1の就活解禁という日が内定確定の基準日でしたが、今年の6/1はこれまでと違います。
今年の6/1はまだまだ選考は去年に全く追いついていませんでした。ゆえに昨年就活した人の体験談を鵜呑みにしてしまった学生は、「6/1に内定が無いなんてもう終わり」のような誤った危機感を持ってしまったのです。われわれビジネスの実務に通じた教員は、そうした学生の間違いを正しく矯正することが役割の一つ。キャリア相談などに来てくれれば、人事の仕組みや今の企業組織における管理部門(=バックオフィス)の位置付けなど、ビジネスの素人である学生の誤認識を解いていくことができます。
・企業が迎える10/1
コロナの影響で例年よりやや遅れてはいるものの、採用活動をしている企業においては概ね、9割方予定通り進んでいるという感触です。しかしそんな中やっと囲い込めた企業を脅すようで恐縮ですが、内定がそろい始めた7月後半くらいから、企業選びを相談する学生が増えています。恐らくその内の多くの学生は複数社の内定受諾をした上で、受諾後にやっぱりどちらにしようかという迷いがあるのだと思います。
コロナで厳しい就活を強いられた学生たちですから、せっかく得た内定をそれは大切に扱います。第一志望で無いとしても当然まずは得た内定を確保しなければ、この先社会や会社がどうなるかわからない恐怖感があります。ゆえに今年の内定者がこの先、10/1に向けて、「やっぱり・・・」と考え直す可能性は低くないと感じます。
最終的な決断は学生個人がするしかないのは当然ですが、一方で採用する企業にとって、10/1過ぎてから「やっぱり辞めます」と言われても、もう新たな手当は遅すぎます。学生には、どうしても内定を覆すのであれば1日でも1時間でも早くするよう伝えていますが、恐らく多くの学生はギリギリまで「キープ」と称して判断を先送りするのではないでしょうか。
・内定学生とのコミュニケーションが死命を決する
直接指導できる学生には「キープ」のような非礼をすれば社会人になった後でしっぺ返しを食らうかもしれないリスクを説明できますが、そもそも相談にも来ない学生にはこうしたメッセージが届きません。けっこうな数のドタ辞退が今年は起こり得ることを危惧しています。
そうしたことにならないための策はあるでしょうか?
地味で申し訳ないのですが、地道にコミュニケーションを重ねることによる信頼感醸成しかないと思っています。昨年ある大手メーカーの人事課長が内定者にパワハラをして、その学生が自殺するという事件がありました。内定者を社員同様に拘束し、厳しい言葉でプレッシャーをかけ続けるという、本来人事に関わる者であれば考えられないハラスメントなのですが、そうした会社では「デキル人事」扱いだったのでしょう。
ゴリゴリに内定者を引きずり回して、社風に慣れさせるというのはもはや不可能です。コンプライアンスを広めるべき人事自らコンプラ違反のハラスメントを働くなど、社長の経営責任だと私は思います。そうならない、信頼感を生み出せるコミュニケーションをぜひ実行してほしいのです。
無茶な課題漬けやSNSのログインチェックなど論外です。入社前からそんなプレッシャーをかけてくる会社は、入社すればブラック労働まっしぐらなことがバレるでしょう。実際にブラックな労働環境かどうかではなく、そうした思考がブラック労働を尊重し、ハラスメントなどのコンプライアンスに反する行為を「仕事ができるから仕方ない」としてしまう社風がバレるのです。
キャリア相談で複数内定先の会社選びの相談が来るたびに、今年の内定者リテンションは例年以上に重要かつ、厳しいものになると感じている日々です。
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