非常識な経営!/野町 直弘

INSIGHT NOW! / 2020年9月2日 10時0分

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野町 直弘 / 調達購買コンサルタント

コロナ禍が企業経営に与えた影響は少なくありません。一方でこの時期でも強い企業、コロナ禍をきっかけにユニークな変革やドラスチックな変革を図る企業も既に多く出てきています。

今回はそういった企業の取組みやその強みについて紹介していきます。

1社目はワークマンです。

ワークマンはコロナ禍の現状でも一人勝ちしている企業として、最近様々なところで取り上げられています。ワークマンの強みとして、まず上げられるのは高い商品力です。高機能で低価格な商品は枚挙にいとまがありません。私自身もワークマンの高機能商品をいくつか購入しており、その安さと機能性には驚かされています。

しかし、この低価格を実現させているのは低い粗利益率です。ワークマンの粗利益率は36%と言われ、業界他社と比較すると非常に低く抑えられています。低い粗利益率でも収益を確保できているのは低い固定費によるものです。

流通小売り業界での固定費の2大要素は人件費と家賃ですが、人件費についてはFCの比率(95%)を高めることで、変動費化することにより売上の4.5%に抑えています。また家賃についてはロードサイドを中心とした立地や物件の自社化などで売上にしめる比率を1.1%に抑えているとのことです。

固定費が低いことで損益分岐点比率は42.6%(20年3月期)に抑えられています。この低い固定費によって粗利益率を低くしても収益が出ており、その収益をFCと自社(サプライヤも)で分け合うことで、三方良しのビジネスモデルを成り立たせているのです。

また、その他にもワークマンプラスという業態開発によって、商品を増やさないで、売上を増やす方策や、クリック&コネクト方式、サプライヤからの全量買い取り方式、物流プラットフォームへの積極投資、店舗による完全自動発注システムなどの販売効率を高める仕組みで効率的な経営を進めています。

2社目はサイゼリヤです。

ご存知のように、サイゼリヤは低価格のファミリーレストランチェーンです。サイゼリヤは他の外食産業同様に今回のコロナ禍で大きく業績が下落しています。低価格を売りにしているため、現状、売り上げの80%後半が損益分岐点であり、コロナ禍の売上低迷により大きな赤字となっています。

しかし、この状況下でサイゼリヤは全商品を50円単位の価格に見直しました。そのため、多くのメニューが値上げされたのです。彼らの看板メニューであるミラノ風ドリアは299円から300円に1円値上げされ、ネット上のサイゼリヤ信者からは「ミラノ風ドリアショック」と、取り上げられるほどでした。

この価格見直しにより、1000円を目安の注文する客が増え、今までは700円台だった客単価が上がったということです。また今回の価格見直しの狙いは会計時間の削減であり、コインの
受け渡しを削減することにありました。コロナ禍によって、顧客も従業員もコインのやり取りをなるべく避けたい。すべての商品の価格を50円単位にすることでコインの受け渡しを6~8割
減らせると想定し、実際に会計時間は30%削減されたとのことです。また個別会計も25%削減されました。

サイゼリヤは価格見直しだけでなく、口頭での注文から、専用シートに顧客が書いて手渡しする方法に変更。口頭の注文だと、意図していない商品を注文してしまう伝達ミスがありますが、あらかじめ書いてもらえば、ミスを減らして時間も短縮できます。コロナ感染対策で「飛沫を防ごう」ということで、この施策を一気に導入しました。

このような施策を取りながら今後は固定費をより削減し、8割の売り上げで、収益が出せる収益体質を目指していくようです。

3社目は資生堂です。

資生堂は8月6日に決算状況の見通しと2023年に向けての構造改革(WIN2023)を発表しました。資生堂にとって、新型コロナの影響はかなり大きく、2020年4-6月期の売上高は前年比34.4%の減少となり、営業利益は▲99億円で、前年比▲400億円となっています。

化粧品業界は外食、旅行業界同様に新型コロナによる影響が大きい業種であり、特に資生堂にとっては、高粗利益率を前提とした高い固定費の事業損益モデルが課題となっているとのこと。

WIN2023では「高付加価値スキンビューティー領域をコア事業とし、2030年までに世界No.1を目指す」などの製品戦略改革を盛り込んでいますが、それ以上に衝撃的な改革が「デジタル・Eコマース事業の飛躍的成長を実現」です。

具体的には広告媒体におけるデジタル比率を50%(2019年)を90~100%(2023年目標)へと引き上げること、Eコマースの売上高を13%(2019年)から25%(2023年目標、中国市場では50%目標)を目指すなど、具体的な数値でデジタル化を推進することを宣言しています。加えて「デジタル・データ分析の専門人材強化」で、チーフデジタルオフィサー登用、本社にDXチームを発足、デジタルマーケティング専門人材100名の採用など、徹底的にデジタル化を進めることを発表しました。

資生堂は、言うまでもなく、有名なタレントを何人も出演させているTVコマーシャルなどのマーケティング戦略で知られている企業です。このような企業がデジマ90-100%を目指すということは今までは、到底考えられませんでした。

そして、発表資料の最後は「世界で勝てる日本発のグローバルビューティーカンパニーへ」-危機に打ち勝ち、構造転換の改革を進め、2023年に完全復活を目指す-という宣言でしめられています。

資生堂のような伝統的な大企業であっても、過去の成功体験や、やり方を捨て、覚悟を決めて構造改革を進めることを選択したのです。


3社に共通して言えることは、それぞれおかれた環境は異なっているものの、コロナ禍をきっかけに、ユニークな変革やドラスチックな変革を図る、いわゆる「非常識な経営」企業の事例と言えるでしょう。

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