バイトにボーナス? ~同一同賃がやってくる/増沢 隆太
INSIGHT NOW! / 2020年10月16日 7時34分
増沢 隆太 / 株式会社RMロンドンパートナーズ
・正社員と非正規社員格差は合法?
2つの判決が出ました。正社員だけがボーナスをもらうのは差別であり、アルバイトにもボーナスを出すべきという訴訟は、最高裁で否定されたといえます。ところがその2日後、今度は別の裁判で最高裁は郵便局の非正規職員(契約社員)に、正職員にはある扶養手当や年末年始、盆など季節手当や休暇を与えないことを不合理な格差と認めました。
正規職員と非正規職員の待遇には通常明確な差があります。この2つの判決は片やボーナス有り・無しはOK、もう一方では手当の有無はだめという、真逆の判断のように見えます。
政府は「同一労働同一賃金」の運用を図っています。同じ業務をしているなら、賃金(給与)は同じであるようにするというものです。一見真逆に見える、ほぼ同時期に出た2つの最高裁判決は、この言葉で読み解くことができます。
・同一労働同一賃金とは
厚生労働省のホームページには、「同一労働同一賃金とは、いわゆる正規雇用労働者(無期雇用フルタイム労働者) と非正規雇用労働者(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者)の間の不合理な待遇差の解消を目指すもの」と説明されています。
シンプルにいうなら、正規雇用者と非正規雇用者が同じ業務をしているなら、その雇用形態や呼称の違い(正社員とパート・アルバイトなど)に関係なく、賃金も等しくするという考え方です。郵便局の正職員には扶養手当や年末年始、盆手当が出るのに、正職員と同じ職務を担当している契約社員(=非正規労働者)に無いのは不合理だというのが裁判所の判断です。
がんばって難しい大学を卒業して正社員として雇われた人も、その会社にバイトで今日から働き始めた人も、「同一労働」であるなら、「同一賃金」にせよということになります。もっといえば勤続30年の大ベテランも、新入社員も、「同一労働」であるなら、「同一賃金」とすべしというのが政府の方針といえるでしょう。
・われわれの暮らしへの影響
?でも大阪医薬大判決では、正規職員には出るボーナスが、非正規職員であるアルバイトには出ないことを「合理性がある」とされたんですよね?この違いは何なんでしょう。
大阪医薬大判決では、正職員の役割、職務内容に差があること、アルバイトも契約職員や正職員に登用される制度もあるなどを根拠に、ボーナスが出ないことに一定の合理性を認めたというものです。
つまり一番重要な点は「職務内容に違いがあるかないか」なのです。
一度正社員で雇われれば終身雇用で身分保障された時代は終わりました。民間企業では、いつリストラされるか、コロナ不況で会社そのものがなくなってしまうことも起きています。今、正社員であるかどうかではなく、今後ほぼすべての民間企業で働く人に、この同一労働同一賃金は関係してくると考えるべきでしょう。
歴史上、身分制度によって出身により職業や収入、生活が決まった時代がありました。しかし現在日本国憲法はそうした身分の違いを禁じています。職場において、「正社員」が安泰ではないこと、もはや誰もが意識せざるを得ない時代といえるでしょう。しかしそれは何といっても自分の業務が重要です。
「バイトと同じ仕事」しかしていないとすれば、給料もバイトと同じになる時代となったということなのです。
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