経営陣の正念場。マルちゃん正麺PRマンガ炎上への正しい対応/増沢 隆太
INSIGHT NOW! / 2020年11月16日 7時40分
増沢 隆太 / 株式会社RMロンドンパートナーズ
・炎上?って本当???
何をもって「炎上」というかは、実はライターの判断だけであって、これという基準などないといえます。住宅街に出没した熊を射殺したというような事件で反対意見が寄せられた等というニュースを見かけますが、よくよく調べたらわずか10件程度反対の電話があったとか、反対の投書が役所に寄せられた、しかも他県からなどということも珍しくありません。
「炎上」は言ったもの勝ちで、本当に炎上なのかどうかは客観的に判断するのは無理でしょう。国際大学GLOCOMの山口研究員がまとめられた「ネット炎上の実態と政策的対応の考察」という論文でも分析されているように、ほんのごくごく一部にすぎない実行者の行為が、あたかも世間全体に批判の嵐が巻き起こっているかのようば幻想を呼んでしまう実態があります。
・PRマンガへの批判
問題のPRマンガとは、マルちゃん正麺を食べる父親と子供の会話に、後から帰宅した母親が加わる、ほのぼのマンガです。しかし昼間に父と子がラーメンを食べたとして、母親が帰ってきたのが夜だとすれば、それまで父はキッチンの後かたずけをしていない、それを母親に強要させるひどいやつだ!というような流れで、男女差別、主婦への家事強要でるという批判ツイートがあったのでした。
しかし当然ですがマンガです。PRマンガが差別を煽る訳もなく、実際に何があったのか、そもそもマンガの設定を勝手に読み解くのは自由としても、自由な想像をふくらませた上で、マンガの設定を批判するという行為はかなり痛い行為としかいえないのではないでしょうか。
しかしそれが言いがかりのようなイチャモンであったとしても、発言すること自体は自由だといえます。バカバカしい文句だと思いますが、私はそれでも批判投稿自体は許されるべきだと考えます。
問題は現在このPRマンガについて、掲載した「マルちゃん正麺」公式アカウントが、作品に対し様々な意見が寄せられているため「今後の掲載につきまして現在精査しております」とツイートしたことです。
・クレーマーを育てるのは無知な経営陣
「マルちゃん正麺PRマンガ炎上!」というネットニュースになったことで、注目は劇的に上がり、結果として公式アカウント=会社は対応せざるを得なくなったのかも知れません。しかし実際にはごくごく一部の「不快」「女性差別」という批判があったに過ぎないにも関わらず、更新停止をアナウンスするなど、正にクレーマーに会社が屈したと取られかねない「合ってはならない反応」だと思います。
実際にネットニュースへの反応のほとんどは「考えすぎ」「一部のクレーマーに負けるな」「次が見たい」という企業への賛同が圧倒的です。
しかしこうした現場の生きた反応より、会社上層部の「無難な収拾」が経営判断されることが少なくありません。謝っときゃイイダロ的、間違った意味での「お客様は神様」信仰を持つ一定層が上層部には食い込んでいるからです。
・現場を台無しにするだけでなく、真のお客をもつぶす
どれだけ現場マーケティングや広報などががんばって認知向上を図っても、無知な上層部・経営陣が間違った判断をしてしまえばすべて台無しとなります。無知な経営陣こそがクレーマーを育成するのです。そしてそれはさらに本来のお客様であるサイレントマジョリティを無視する行為でもあります。
本当のお客様はクレームで声など上げない人が圧倒的多数です。そうした人たちから見れば、世間離れしたイチャモンのクレームに屈するような会社こそ、自分たちを無視する姿勢と映るでしょう。クレーム対応は単に逃げ腰で解決することは絶対にありません。脅せば屈するダメ会社という認識を避けることは、クレーム対応では非常に重要な戦略です。
「精査している」というマルちゃん正麺が、クレーマーに屈することなく、本事態を上手に乗り切ることを希望してやみません。
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