営業の生き残る道はどこにあるのか 、Withコロナ時代のセールススタイルとは/猪口 真
INSIGHT NOW! / 2020年11月16日 19時24分
猪口 真 / 株式会社パトス
B2Bの営業現場では、相変わらず苦悩の声を多く聞く。
いかんせん、営業の対象者が、オフィスに戻ってこないからだ。
「アポイントを取れない(取れても会ってもらえない)」「DMを送っても届かない」「プレゼンがしにくい(そもそもプレゼンの機会が少ない)」「クロージングのための上層部へのアプローチ、承認のハードルがさらに高くなった」など、要するに商談する機会が激減し、営業活動のミソともいえる、クライアントのキーマンへのアプローチが非常に困難になったということだろう。
MAツールが花盛りだが
商材的に、Web上での比較検討で決定できるようなものであれば、まだ、営業プロセスに大きな変化はなく、クライアント側の状況次第ではあるものの、営業的な動きに関してはそれほど大きな違いは生まれていないようだ。
しかし、時間をかけてクライアントとの信頼関係を築き、長期的に仕事をしていくような営業は非常につらいのだろう。これまで営業の最大のスキルのひとつと言われていた、組織対組織において、あらゆる手段を使って、オフィス内外で関係を築いていくスキルが使えないからだ。
ZOOMやTEAMSでのオンライン会議は手軽だが、あくまでそれは関係ができている、あるいは信頼関係のある人たちから紹介されているからこそできることが多く、少しずつ関係を築いていくプロセスは、実際に会うほうが圧倒的にうまく運ぶ。
その信頼関係を築こうとする、見込み客の獲得にしても状況は変わらない。展示会やセミナーイベントなどでの新規リードの獲得ができない今では、オンラインセミナーやオンライン広告に頼るしかないため、MAの仕組みの導入による見込顧客へのランクアップの話は花咲かリだが、そうしたプロセスで獲得したリードに対して効果的にクロージングまでもっていけたという話は、なかなか聞かない。
ならばコンテンツだということで、営業が説明していた内容をWeb上で記事コンテンツにしたり動画化したりしようと挑戦する企業も増えてきた。また、お金のある企業は、SFAツールや動画共有ツールを導入し、コンテンツの発信と営業プロセスをオンラインでマネジメントしようと躍起だ。
ところが、これまでもっぱら展示会やイベントを中心にリードを集めたり、クロージングに至るまでの関係を築いたり、既存の顧客であっても、展示会やイベントというハレの舞台に集客することで関係を築いたりプレゼンテーションを行ってきたから、いきなりオンライン化だと叫んでみても、いわゆる「DX」の舞台に顧客が登場していない。
情報を受け取るほうも、これまでWeb上でのプレゼンテーションをまともに見たこともなければ、それを見て信頼するなど、イメージもないからだ。
もともと信頼関係のある人のプレゼンテーションを見るから、「やはりこの会社のサービスはいい」と判断できるのだ。
セールススキルが変わる?
そういう意味では、セールスメッセージというのか、マーケティングメッセージというのかは別として、明らかにセールススキルに新たな能力が必要になったということなのだろう。
仮に、クライアントのゲートキーパーとは対面で会えたとしても、その上司やさらに上司とは、オンライン上でのプレゼンテーションとなることが多い。(あるいは逆)
対面では、共感してくれたかもしれないが、オンラインでも共感を得るスキルが必要になったというわけだ。もはや、セールスにおいても、セールス活動のデジタル化・オンライン化は、セールスとしての生き残りに必須の要件となった。
また、テレワークの増加に伴い、売れるサービスや商材が変化していることも明らかで、セールスとしては、そのあたりも敏感に感じ取らなければならないだろう。
とはいえ、もっともつらいのは、セールスマネージャーだろう。
営業部門内での見込み案件の情報共有やアドバイス、ミーティングへの同席、営業メンバーの育成(トレーニング、商談へのフィードバック)をリモートで行わなければならないからだ。
これまでの営業の武器のひとつである「次回上司を連れてきますので」も使えない。
そうなると、セールスマネージャーの仕事がこれまでとは一変する。
マネージャーとはいえ、オンラインでの商談においては、新人と条件は同じだ。これまでやったことがないから、教えることはほとんどない。
しかし、そこはマネージャーだ。経験があろうがなかろうが、誰よりも早く自分の武器にする必要がある。あらたな視点によってオンライン上で成果を出しているスキルやノウハウを見極め、ナレッジ化して全員に共有していく、DXと自社セールスの共通点をいち早く見つけ出し、DXとしての自社セールスの優位点を明らかにするなど、いままでアナログだった営業の領域をDXとして成り立たせることが、一日も早く求められている。
幸い、この状況での競争は始まったばかりだ。まだまだ勝負付けは済んでおらず、そこに大手も中小もなければ、会社の歴史もない。
これを機に一気に勝負に出るのも、コロナだから・・と現状に甘んじるのも、自分次第であることも間違いないことだ。
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