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コロナによる打撃は飲食業の倒産だけではない。事業承継問題はさらに大きくなっている/猪口 真

INSIGHT NOW! / 2021年1月18日 11時33分

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猪口 真 / 株式会社パトス

新型コロナウイルスが拡大する以前から、中小企業での事業承継問題は大きな課題だったが、このコロナ禍で、さらに大きくなっているようだ。

経済産業省によれば、現状のままいけば、2025年までに、127万人の経営者が70歳以上かつ後継者未定になり、それは日本事業者全体(全体の企業数を約380万者とすれば)の3分の1にあたるとされている。

仮に、それらの企業が廃業、あるいは消滅した場合は、多数の雇用やGDPが失われるのは間違いなく、380万者という事業者数はかなり古いものであることから見れば、今ではすでに企業数は大きく減少しているのも間違いない。推論すれば、この企業数の減少がGDPの停滞と関連しているのも間違いないだろう。ITを中心としたスタートアップベンチャーも増加傾向にあるという話を聞くこともあるが、それ以上に事業者の減少が止まらない。

こうした人口ピラミッドの社会的な背景にはどう抗うこともできないが、そこにコロナ禍がやってきた。

新型コロナウイルス拡大による企業の休廃業リスクはさらに高まっており、事業承継はこれまでどころではない事態となっている。

帝国データバンクは、中小企業の事業承継問題について、調査結果を公表したが、やはり、コロナ禍による影響は少なくないようだ。

まず、新型コロナウイルスの拡大を契機に事業承継への関心が高くなったと答えた企業が8.9%だったという。大半は変わらないと答えているものの、事業者によっては、「コロナ禍で事業の業績がまったく計算できず、事業承継どころではない」「これまでは、どうしようかと迷っていたが、完全にあきらめた」という声も相当あるのではないかと考えられる。 もはや、将来への見通しもつかない事業者がかなりの数に上ると思われる。

次に、「企業割で事業承継の計画があるものの、うち半分以上が進めていない」という結果も紹介されている。

「すでに事業承継を終えている」企業は12.3%(これは、40歳代以下の経営者に多く、すでに引き継いだ経営者が答えていると思われる)

「計画があり、進めている」企業は18.7%

「計画はあるが、まだ進めていない」は21.1%

「計画はない」は34.8%

つまり、3分の1の事業者は、事業承継の計画すらなく、少なくとも300万者以上ある、中小企業・小規模事業者の数を見れば、これで将来大丈夫なんだろうかとも思える。さすがに、2025年に経営者が70歳以上となる事業者では、そういうことはないだろうと思ったのだが、現在60歳代の経営者においても、計画がないは31.3%、わからないが13%、70歳代においても、計画がないは20.9%、わからないは12.7%にも上る。やはり、3割以上の経営者は、事業承継の道筋は見えていないことになる。

ただし、事業承継を「最優先の経営上の問題と認識している」企業では 73.5%が「計画がある」としており、意識の大きさが、実際の計画の進行に大きな影響を与えている。

事業承継が進まない大きな原因は、やはり「後継者の育成」問題のようだ。

事業承継に関して「計画があり、まだ進めていない」「計画はない」とした企業は、どのような心配をしているかというと、「後継者の育成」(55.4%)、「後継者の決定」(44.6%)と続き、後継者がいない、育てられない、決められないことが大きな要因となっていることがわかる。

事業承継が進まなければ、次に考えられるのはM&Aだ。事業は継続されるので、M&Aもある種の事業承継と言えるのかもしれない。

帝国データバンクの同調査では、M&Aに関する考えも聞いている。企業の37.2%が事業承継を行う手段としてM&Aに関わる可能性があると考えているという。また、「近い将来においてM&Aに関わる可能性はない」は39.2%、「分からない」は23.6%となっており、それぞれ、同じ程度に分かれる結果となっている。

大企業、中小企業、小規模事業者と、規模別でみると、大企業のほうが将来の生き残り戦略を探るなかで、M&Aを検討しているようで、M&Aへの興味は高いようだ。資金や金融関係、M&A関連事業者との付き合いなど、大企業に優位なことは多い。むしろ、それほど大きな差はないことに驚く。

ただし、おそらく、同じ「M&Aへの関わり方」でも、大企業の場合は「買い手志向」、中小・小規模では、「売り手志向」なのではないかと思われるが、中小・小規模事業者においても、後継者不在のなか、考えざるを得ないことなのだろう。

事業の収益が出ているのであれば、後継者が本当にいないと判断したならば、もはやM&Aに頼らざるを得ないのが現状なのかもしれない。

60歳代以上にもかかわらず後継者がいない事業者は、赤字の比率も高いという。取引面で見ても、後継者がいなければ、その事業者との信用限度額は引き下げられ、これからのビジネスに直結する。

もちろん、これら事業者の中には、今回のコロナ禍で、ダイレクトに打撃を受けた、観光、飲食の事業者も少なくない。2度目の緊急事態宣言を受けて、廃業を決断する経営者は少なくないだろう。

しかし、社会の問題はそれだけではない。コロナ禍による打撃は、事業承継の問題にも確実に及んでいる。

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