4月から社会に出る新社会人へ 上司を真似る時代は終わっているぞ/猪口 真
INSIGHT NOW! / 2021年3月29日 17時48分
猪口 真 / 株式会社パトス
まだまだコロナも一向に収まらないどころか、増加傾向にすらあるが、やがて4月になると、企業には新入社員が入社する。
昨年は、ちらほらとしかリクルート姿の学生くんたちを見ることがなく、今年入社する人たちは、ほぼオンラインでの面接をやり遂げた人たちなのだろう。中小事業では、そぞろオフィスに出勤するところも増えてきたが、大企業やIT関連の企業を中心に、すっかりテレワークが浸透している。自分のデスクがない新人ということもあるうる世代となりそうだ。
そうした状況のなかで、社会に出る緊張感は相当なものだろう。学生の間は、仕事の経験といってもアルバイトが中心で、アルバイトも最近ではいろいろあるが、中心は、接客や肉体労働など、リアルな現場での仕事の経験だったはず。4月からの実際の仕事において、いきなりテレワークを中心とした業務を行うとなれば、不安がいっぱいだろう。
しかし、ある意味ラッキーなのは、こうした状況下で仕事をした経験は昨年から始まったばかりだということ。この1年、企業は試行錯誤でテレワークの実験を行ってきたが、業務を完全にテレワークのプロセスによってリエンジニアリングできたところはほとんどないだろう。
古くからある会社での監修や掟といったものが、テレワークや柔軟な働き方を邪魔している。これまでのやり方をテレワークに持ち込もうとしたところで土台無理な話だ。
むしろ、いわゆるよくわからない「会社の掟」を身につける必要もなく、最初から自由に働けるのは、実にラッキーなことだ。
まず覚えさせられる「ホウレンソウ」などは最たるものだろう。報告したり、相談したりすることは悪いことではないが、テレワークでの仕事の仕方など、先輩に聞いてもわからない。むしろ、テレワークにも、組織のへんちくりんな見えないルールを持ちこむものだから余計に面倒だ。
(たとえば、ミーティングアプリに表示される顔の順番など、意味がわからないこと)
おそらく、「新入社員研修」は、予定どおり行われるのだろう。しかも、従来のプログラムをオンラインに乗せただけのものが大半だろう。
社会人としての最低限のマナーは身につける必要があるだろうが、仕事の仕方や価値を生み利益を上げる仕組みは、これまでの対面を前提としたものであることを忘れてはいけない。
かつてであれば、新入社員研修期間があり、試用期間のなかで様々な仕事を経験させられ、本配属となり、その後OJTという名で先輩につき、仕事の仕方を一から学ぶということで進んでいった。
ところが、テレワークでは、OJTはほぼ機能しないと思っておいたほうがいい。せいぜい、顧客やパートナーとのミーティングに参加し、先輩とのミーティングを定期的に行うことぐらいだろう。それで覚えることがあったとしても、(先輩の自慢話や武勇伝がほとんどだから)新しい仕事のやり方では通用しないことばかりだろう。
これから入社する人たちは、史上初「上司を真似ることが仕事ではない」世代となる。これまでは、上司に追いつき、上司の代わりの人材になることが目標だったが、これからはそうではない。新しい価値の生み出し方を自分で考えることが前提となった新しい世代となる。前例がないのだから。
この1年、次のことを一生懸命やってほしい。
会社に入ったら、まず自社の顧客は、自社の「何」を購入しているのか、自分なりに十分に研究してほしい。「何を」といっても、商品そのものではない。顧客は自社の「どのような付加価値」を買っているのか。クリステンセンの言葉を借りれば、顧客はすべからく、「用事=ジョブ」を片づけるために製品やサービスを買っているのであって、その商品物体そのものを購入しているのではないことを理解したうえで、自社の何が顧客の課題を解決しているのかを分析してほしい。利益を出している会社であれば、必ず付加価値を持っている。当然、他社との比較も必要だ。「上司に頼ることが仕事ではない」といったが、ここは十分に上司を利用してほしい。(ただしそれをうのみにしない)
次に、自社がどのようにその付加価値を出しているのか、これを十分に研究してほしい。
これがもっとも重要なことで、実は社員でもあまり理解していない人が多い。しかも顧客によってその「付加価値」のポイントが異なるからだ。
だから付加価値を生むプロセスや仕組み、システムはひとつではないし、また、複雑に絡み合っていたりもする。
そして、そのプロセス、仕組み、システムは、「新しい働き方」のなかでも本当に生まれるのか、自分であれば(デジタル世代の発想で考えれば)、どのようなプロセスであればその価値を生み出すことができそうかを考え抜く。
上司を真似ていても価値を生み出せるとは限らない、というか生み出せない。デジタルに関する発想やアイデアは、あなたのほうが豊富なのだから。
思う存分あばれてほしい。
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