調達購買部門が目指すこと Vol.3/野町 直弘
INSIGHT NOW! / 2021年5月13日 10時0分
野町 直弘 / 調達購買コンサルタント
今回は調達購買の組織論についての最終回になります。
初回は分散購買化の動き、2回目は集中購買化の動きについて述べてきました。今回はこのような様々な動きを受けて、今後調達購買部門が目指すべきこと、について述べていきましょう。
調達購買組織は、企業毎の状況や求められる機能によって最適な姿が変わってきます。前者である分散化の動きについては、どちらというと製品・事業のニーズにフォーカスし、主にスピードや魅力的な製品・事業作り、技術購買や開発購買を目的として進められるケースが多いです。
一方で、集中購買化の動きについては、グローバルでの購買統制やサービスのシェアード化などの経営ニーズに基づき、進められます。
どちらの方向が正しいとは言えません。個々の業種、企業毎に最適な機能強化の方向性とその方向性にあった組織体制整備が求められるからです。
しかし、調達購買部門が目指すことは両者ともに同じです。
それは「最適な調達購買(外部支出)が行われている状況をつくりあげる」ことでしょう。
しかし、しっかりした調達購買業務を行うことは工数とリードタイムがかかります。また、調達購買がもたらす成果は通常、大きな効果をずっと継続して出すことは難しいです。この点から、ある時点で調達購買は手間はかかるが、それほど大きな効果は出ない、という評価がされることが多くなります。
それでは手を抜いていいか、というと、そうではありません。
手を抜けば、かならずQCDのバランスは崩れていきます。知らない間にコストが上がっていったり、品質が悪くなったりすることがしばしばおこるでしょう。
多くの企業で調達購買の組織体制の見直しや再整備が行われているのは、このような状況にあるからです。
それでは、どうすればよいでしょうか。
結論から言いますと、適度に最適な調達購買が行われていることを担保できる仕組みを持つことと、かける工数やリードタイムを削減することです。
例えば、依頼元へ購買権限を移譲することもその一つの方策です。
しかし、それによってQCDのバランスが崩れないような仕組みを持つことが求められます。ある企業の調達購買部門は、従来は殆どの調達購買権限を集中して持っていましたが、事業ニーズやスピードアップのために、依頼元へ権限移譲を進めました。
しかし、適度に最適な調達購買を担保するために、依頼元に対して積極的に様々な情報提供を行うとともに、それらの情報を活用して依頼元が調達購買業務ができるようにしていきました。
一方で、グローバルでカテゴリーマネジメントを進めている企業などは、集中購買化することによるメリットが未だに大きいからでしょう。特にどちらかというと今までグローバル化が進んでいないで、M&Aなどでグローバル化を進めている企業などは、このような経営環境であると言えます。これらの企業は集中化を進めることで、最適な調達購買を担保する仕組みを作ろうとしていると言えるでしょう。
このように一見正反対に進んでいるように思いますが、実はどの企業も調達購買部門が目指すことは共通しているのです。
よくあるパターンは調達購買組織が立ち上がり、当初はコスト削減で大きな効果がでている。これを元に集中化が益々進みます。
調達購買権限(どこのサプライヤにいくらで発注するかの権限)は非常に重要な権限ですが、人や組織は一度持った権限を手放すことに抵抗感を持つでしょう。そのため、調達購買部門は経営から指摘されるなど、何らかの全社的な改革がない限り。自分達の特権(調達購買権限)を手放そうとはしないのが通常です。
一方で、依頼元は、毎年予算制約もあり、年々人も減らせれている。調達購買部門は益々官僚的になり、自分達の特権を声高く主張し続けるのです。こういう状況に陥っている企業や人、
組織は少なくありません。
以前、私があるバイヤーと話した時に、そのバイヤーがこういうことをおっしゃっられていました。
「依頼元が最適な調達購買業務ができるのであれば、自分達は何もやる必要はない。我々が目指さなければならないのは、このような世界だ」
調達購買部門が今、目指さなければならないのは、「最適な調達購買業務ができている状況を作り出す仕組みの構築」ではないでしょうか。私はこのような基本的な考え方を調達購買部門は持つべきであると考えます。
このような姿を目指す上で大きな課題となるのは、どのように最適な調達購買業務を担保していくか、です。最適な調達購買業務のためには、どこから、いくらで買うか、の仕組みを整備
する必要があるでしょう。
どこからという視点からは、サプライヤマネジメントが欠かせません。例えば調達購買部門がサプライヤの評価を行い、品目別に推奨サプライヤを予め選んでおき、依頼元はサプライヤからどこから買うかを決める、というような仕組みになるでしょう。
いくらで買うか、という点については、査定や交渉のスキルを習得する必要があります。そのためには、査定や交渉手法を体系化し、スキルとして共有していく仕組みづくりが欠かせま
せん。
調達購買部門はこれらの仕組みを自ら持つだけでなく、会社全体の能力としてスキル育成していかなければならないのです。
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