ワクチン接種のミス連発報道が危機管理上喜ばしい理由/増沢 隆太
INSIGHT NOW! / 2021年6月7日 8時0分
増沢 隆太 / 株式会社RMロンドンパートナーズ
・なぜミス連発報道は歓迎すべきか
「ミスはあってはならない」「全力で取り組む」といった精神論が大好きな日本の組織。危機管理的には全く意味を持たないスローガンです。竹槍でB29を迎撃できなかったように、精神論は危機には無力、というか危機対応ではありません。
これだけ日常生活を大きく変えてしまったコロナ禍。世界中が対策に取り組む中、ワクチンは最大最後の切り札として世界中が期待しているものです。その貴重なワクチンを取扱いミスで廃棄、保管冷蔵庫の電源コードが抜けた、希釈しなかった・・・といったどれも凡ミスが日々報道されています。
いかに早く全国民にワクチンが接種できるか、しかも外国製ワクチンの争奪戦をへての貴重なもの。それをヒューマンエラーで正にドブに捨てるとはけしからん!と批判はごもっとも。
でも危機管理上は歓迎すべきことなのです。
・精神論をいかに捨てられるかが危機対応の要諦
ミスはあってはならないもの。もちろんです。続発するヒューマンエラーは正にミスそのものだといえます。
「ミスをしてはならない」のはもちろんなのですが、一部の破壊工作を除き、「ミスは起こるもの」というのが危機管理の大原則です。ミスを起こそうと思って起こす人はいませんし、犯罪は悪いこととわかっていても犯罪者は歴史始まって以来、恐らくこの先の未来も絶対にいなくならないのです。
「ミスは起こるもの」この大前提に立って、コロナ禍という危機への対応をすることは、今が非常時だととらえるならきわめて理にかなっています。「ミスをするな」がわかりきっている以上、いくらお題目をとなえてもミスは起きます。一方で、ミスの総量をいかに減らせるかこそが危機対応です。
・最も恐ろしいのはミス隠し
恐らく現場の担当者はとんでもなく叱責されているのでは?と想像しますが、本来は「よくぞ勇気を出して申告してくれた」と褒めるべきなくらいです。
このような凡ミスはどこでも発生する可能性があり、こうして報道されることで明日はわが身と少しでも注意力が上がるなら、危機への防御としてきわめて生産的といえます。
一番恐いのは本人だけでなく、中間管理職などが保身の走り、ミスを隠すこと。ミスは公になることで抑止力として昇華できますが、ミス隠しは恐ろしいマイナスにしかなりません。
どうか報道機関の皆さん、今後もミス報道をして下さい。そして何より現場で戦っておられる医療受持者の皆さん、皆さんのお力で日本は救われる可能性があるお仕事です。ぜひミスがあっても、それを他の現場への警鐘ととして有効に活かすことにご協力下さい。
そして何より、全体成功率と比べ、宝くじ当選レベルとまで言われるわずかな重篤副反応をギャーギャーわめいてワクチン否定する方。どうぞ今のまま自粛生活をお続け下さい。私たちは社会全体を守るため、ワクチン接種で社会に貢献したいと思います。番が来れば一刻も早く接種して自分と社会を守りたいと思っています。
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