ミドル世代の転職が厳しくなった? ホワイトカラーのキャリアアップはどうすればいいのだろうか。/猪口 真
INSIGHT NOW! / 2021年9月26日 11時32分
猪口 真 / 株式会社パトス
最近、周囲でも「転職したい」「会社を変わりたい」という、ミドル世代(ホワイトカラーの管理職)の声をよく聞くようになってきた。実際、このコロナ禍で、仕事のやり方、内容が大きく変わり、「自分の仕事はほんとうにこれでいいのか」と考える人は相当いるのではないかと思う。
特に、テレワークへ移行しやすいホワイトカラーの面々は、社内外問わず、これまで人に会うことが仕事の中心だった人も多い。それが、人に会わずに成果を上げろとなったものだから大変だ。このコロナ禍でテレワークが進み、もっとも仕事の仕方、内容が変わったのが、この層の人たちだからだ。
多くの人が指摘するように、ホワイトカラー(管理職)の仕事は、主に「経由」(部下から上司へ、上司から部下へ)だったのだが、オンラインミーティングやバーチャルオフィスなどによって全員が集まるのが簡単になり、中間職を飛ばした伝達や指示が簡単になった。
おまけに、コミュニケーションが最大の武器だった人に、企画・分析やドキュメント作成を強いるのは、あまりに気の毒な話だ。
なので、逆にテレワークになって、無用な会議がやたらと増えたという話もよく聞く。部長や課長が存在感を示すには、会議を増やし、権限を誇示する必要があるのだろう。
常にPCの前にさえいれば、いとも簡単に会議を開催し、参加できるのだから、こんなに便利なものはない。
コロナ禍によって、業種間の業績の差も大きくなった。デジタルやIT関連への投資が会社の命運を握るなどと叫ばれ、国をあげてのひと騒動になっており、デジタル業界への人材の流動化もかなり進むのではないかと思ったものだ。本来は、このコロナ禍で、これだけ成長産業が目に見えるかたちで現れたのだから、転職を中心とする人材の流動化は一気に進んでもいいはず。
ところが実態はどうもそうではないらしく、転職者数は減少しているというのだ。転職したいのに転職できない状況が本当なのであれば、これは不幸だとしか言いようがない。
これは、中間管理職(ホワイトカラー)が、新しい環境での、新たなビジネスの開拓という視点で見れば、間違いなく「使えない」人材となっているのだろうか。もちろん、現状の組織のなかでは、必要とされている人が大部分であることは付け加えておく。
あるいは、コロナという思いもよらぬ災害に対して、自分の働き方を変え、それでも結果を出し続けることがいかに難しいかを物語っているとも言える。
転職はしたいが、実際は難しい状況のなかでは、結果として今の会社にしがみつく以外にはないのか。
「転職したい」と考えるのは、まさしく、自分の存在意義をいまの会社で感じることができなくなったことが大きな要因ではないかと思う。
半面、実際の転職が活性化していないのは、これまでは、人と会う、会社に行くという仕事(成果を出すための手段)が仕事だと勘違いしていたことが自分でも分かったからだろう。
とはいえ、いまの組織を離れ、自分の扱うコンテンツが変わったときに、ビジネススキルとして、「自分の出せる結果はこれです」と言える人は、ほとんどいないだろう。
組織ルールのなか、あてがわれた役割において結果を出すスキルと、新たな市場に対して自ら動き結果を出すスキルはまるっきり違う。
そしてこのコロナ禍で、「あてがわれた役割」がいとも簡単に変わってしまうことが明らかになった。
ミドルといえども、まだまだビジネス人生は長い。すでに多くの企業では65歳までは働く環境は整っている。しかし、テレワークなどによる企業での、結果を出すまでのバリューチェーンが明らかに変わり、そこに対応できなければ、60歳以降、まともな報酬を得ることは相当困難だ。
しかし、これは逆に考えれば、いまは健康寿命が伸び、肉体的には70歳でも何ら問題なく仕事はできる。時代に即して自己変革さえできれば、何歳になろうが仕事で結果を出す環境ができたとも言える。
ただし、その自己変革とは、「職業訓練」と言われる国や団体からの支援からでは生まれないだろう。これまでの国による中小企業支援の仕組みや、公務員自体の働き方の変化を見るに限っては、人や企業への変革支援ができるとは思えない。
一人ひとり、いまの状況下で本当に自分に合った自己変革を、自ら実践していくしか方法はないだろう。
特に大企業においては、中間管理職(ホワイトカラー)は、とても働きにくい状況だ。だからこそ転職希望者も増加しているのだろうが、「働きにくい」と感じる人は、自分のスキルを今一度棚卸し、スキルアップを図ってほしい。
年齢は関係ない。むしろ、何歳になってもブレイクできるチャンスが生まれた機会だともいえる。
「結果が出ないから辞めたい」ではなく、「結果を出すためにどう変わるか」を実践しない限り、思い描くキャリア、第二の人生を送ることができない社会になってしまった。
本当に大変な時代になってしまったものだ。
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