セールスコンテンツはどうつくる? 営業の価値を決めるコンテンツとは/猪口 真
INSIGHT NOW! / 2021年12月21日 17時15分
猪口 真 / 株式会社パトス
「営業の醍醐味は、自分でなければならない顧客を持っていること」これは、かつてセールスマネージャーをやっていたころ気づいたことだ。メンバーの営業成績には多少の差があり、数字をつくれる営業とそうではない営業がいたのだが、一人の例外なく、その営業マンでなければならない顧客を必ず1社は持っていた。不思議なのだが、顧客側も、その営業を信頼し、長期にわたって仕事を与えてくれた。それならと、他の顧客にも同じように関係を作れるだろうと思ってもそうはいかないのが面白いところなのだが、要するに、顧客ごとにニーズは異なり、その顧客に響く何かを持っている営業だけが認められたとしか考えられなかった。
顧客に響く何か、これこそがセールスコンテンツと呼ぶものなのだが、どうすれば作れるのだろうか。
セールスプロセス上のコンテンツ
よくある組織の構造として、営業が顧客の要望を聞き、「会社のサービス内容とは異なるのだが、なんとかかたちにしたい」と社内の開発部門や企画部門に話を持ち掛けたとき、「前例がない」「それはうちのサービスではない」とはねつけられることがある。
そういうとき、営業はあきらめて(組織に歯向かうこともできず)、これまでと変わらないソリューションを提案する人が大半なのだろうが、なかには、営業自ら顧客のほしいものはこうではないかと自分でつくってしまう人がいる。
これこそが営業独自のコンテンツと言えるものなのだろうが、そこまでの能力と独立心を持つ営業は少なく、それが本当に顧客にふさわしいものかどうかは怪しいものだ。そもそもこれができる業種は限られるし、そもそもそういう動きを許される組織は少ない。
なので、営業が持つコンテンツとは、あくまでセールスプロセス上のコンテンツであり、そこで勝負するべくコンテンツとは、どうやって生み出していけばいいのだろうか。
○○セールス
昔からよく、「これからの営業は、○○セールスでなければならない」と言われたものだ。
思いつくだけで「提案型セールス」「コンサルティング・セールス」「ソリューション・セールス」といったものがあった。なかには、営業部門を「マーティング部」「コンサルティング部」などと、部署名を変える会社まであった。
それだけ、従来型の営業から脱却し、営業をかっこよく見せたがったものだ。しかし、どれだけ名前を変えようが、営業の役割は仕事を受注し、代金を回収するという企業にとっての命綱を担うことに変わりはなく、呼び名の変更は、その重要な仕事の意味付けにすぎない。
社会のなかのサプライチェーンを見たときに、ちょっと乱暴かもしれないが、誰もが顧客であり、営業であると言える。何かを売って対価を得て、何かを買って生活する。
そういう意味では、必ず「何をどのように売るか」「誰から何を買うか」という判断を日々行っているし、売るにしても買うにしても、必ずそこには理由がある。つまり常日頃からセールスコンテンツを評価したり、されたりしている。
昔よく言われたことだが、八百屋のおばちゃんは、お客さんの顔色を見て、野菜を提案するなど、完璧なCRMのコンテンツを頭に入れていたものだ。
そう考えれば、セールスコンテンツとはパワーポイントのことではないことは分かる。普段の生活のなかで、パワーポイントをつかって提案されることなどまずない。普段の仕事でもそうだ。ちょっとした機転や面白さを評価し、購入を決める。その人が気づいてない場合も含めて、「購入」の琴線に触れているのだ。
だから、自分の武器、コンテンツに気づいていない人が圧倒的に多い。だから、売れるときも、なぜ売れたのか分からない。「運がよかったのですよ」の一言が片づける人が圧倒的に多い。
自分で考え続ける
では、成功体験を振り返ればいいのかといえば、残念ながら、過去の成功体験はまず役に立たない。一度コンテンツで成功したからと言って、二番手が効くものでもない。コンテンツとは日々進化していくもので、昨日の魅力的なコンテンツが今日も魅力的かどうかは限らない。
結局、常に自分のコンテンツを考え続けることが重要だ。コンテンツにこれだけあれば十分ということもなければ、昨日、評価されたものが明日も評価されるとは限らない。
営業に限らずそうだが、人は自分ごとになれば動くものだ。立ち上げから参画した企画やプロジェクト。自分のアイデアが入った新たな提案など、自分がかかわったという自信があれば、人は主体的に動く
そういう意味では、会社から与えられたカタログ、上司が作成した資料など、本気で説明する気になるはずもない。
顧客に出す出さないは別として、自分のいる業界のなかで、ソリューション、企画アイデア、考えをまとめてみてほしい。必要なエビデンスは、自分なりに調べてみる。そして、想定顧客に対して、自分の優位性を含めた「疑似提案」をシミュレーションしてみる。
注意してほしいのは、所属する組織のコンテンツそのものにならないことだ。同じ組織で仕事を続けていると、組織の持つコンテンツと自分オリジナルのコンテンツが混在してしまう、というか大半が組織の持つコンテンツということがよくある。あくまで自分のコンテンツであることが重要だ。
毎日考え続けること、必要な情報は調べること。この積み重ねがいずれは大きな自分の武器になるはず。
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