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【インサイトナウ編集長対談】すべての業務にマーケティング要素は必要、1歩踏み出すためにも学んでほしい。/INSIGHT NOW! 編集部

INSIGHT NOW! / 2022年1月11日 9時30分

【インサイトナウ編集長対談】すべての業務にマーケティング要素は必要、1歩踏み出すためにも学んでほしい。/INSIGHT NOW! 編集部

INSIGHT NOW! 編集部 / インサイトナウ株式会社

お相手:金森 努様
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

マーケティングの本質は「流れ」。プロモーションのことではない

猪口 コロナ禍は、フリーのコンサルタントや広告関係者にも大きな影響を与えました。対面での業務を行いにくくなり、コンサルティング業務の手法は変わりましたか。

金森 コンサルティングや研修においても、かなりの割合でオンラインに変わりました。この先、一部で対面研修が復活しても、大半はオンラインになることは目に見えています。ところが、僕にはコロナ禍初期にはオンラインのノウハウがあまりありませんでした。それで、とりあえずLINE LIVEを使って始めてみたり、結局、Zoomに行き着いたり試行錯誤して、そこからだんだんオンラインを勉強していきました。コンテンツをオンライン用に作り直したり、機材を揃えたりして、今ではかなり詳しくなって、僕の部屋はまるでYouTuberのようです。あとはUMUですね。今はeラーニング、マイクロラーニングが増えているので、その動画も宅録でサクサクッと作れるようになりました。

猪口 企業が行う研修プログラムの中に、オンラインの仕組みを作って、ご提案されているのですね。内容は、やはりマーケティングに関することだと思いますが、何か工夫されていることはありますか。

金森 僕の会社は零細なので、どうやったら生き残っていけるのかいろいろ考えて、やっぱりマーケティングの基本だと思い至りました。リーダー企業がやらないこと、できないこと、やりたくないことを徹底してやるのです。今は、オンラインを活かして、受講生と事前のモチベーションアップから、複数日程の研修では、課題の添削フィードバック、事後の「個々の業務に活かせる」ためのアドバイスまで、一人一人と繋がることに力を入れています。そして受講者全員に丁寧に対応しています。

大手には、一流大学でMBAを取得されている素晴らしいキャリアの講師が揃っています。一方、僕は東洋大学の学部卒で、MBAも持っていません。それで、キャリアではなく「キャラ」でいこうと思いました(笑)。

通常のオンライン研修では、グループワークのグループ内でもプライベートの自分を皆さんあまり明かしません。だから僕が率先して、事前のモチベーションアップのメーリングリストなどで、「実はアニオタです、ゲームオタです、いろいろオタクを嗜んでおります」など話をします。もともとCRMを専門的に行っており、自分の原点に帰ると、けっきょく「One to One」だと思いました。1対マスの受講者ではなく、一人ひとりをきちんと相手にするのが理想です。

猪口 マーケティングにはどうしても時流のようなものがあって、今はネットやSNSが主流となりつつあるなか、エクスペリエンスと言われてみたり、ジャーニーと言われてみたり、言葉が変わっていく中、マーケティングの本質は変わらないと思うのですが、ビジネスにおいては、こうした「流行」に対してどうアプローチされていますか。

金森 僕は方針として、「流行」を追いかけないと決めています。Webマーケティングと言われ出した頃、勉強しましたが、けっきょくそこで言われていることのほとんどがプロモーションでした。どのようなメディアを使って、どうやったらコンバージョンが高くなるかといったことはプロモーションなのだから、Webプロモーションと言うべきです。

Webマーケティングとマーケティングは違います。僕がよく言うのは、「Webマーケティングはプロモーションですから、最後に考えてください」ということです。

マーケティングは「流れ」で考える必要があります。マーケティングの流れの重要性に気づいたことで、マーケティング全体にまで領域が広がりました。

今の仕事はメーカーの商品開発、特に売れていない商品のテコ入れが多いのですが、広告代理店出身ということもあり、プロモーション企画を期待されます。

そこで「そこだけやってもだめですよ。マーケティングの流れで考えましょう」と、最初にお伝えしています。今では、月2回のミーティングでは、6カ月間という期間で、製品企画から販売計画の策定、発売後の戦略修正までというコンサルティングメニューを始め、様々なコンサルティングプランをクライアントに提供しており、広告会社勤務の時代と比べると、業務領域がものすごく広がりました。

ビジネスパーソンに必要な「読み書きそろばんマーケティング」

猪口 先日、経営学部の先生のお話を聞いたのですが、学生のほとんどがマーケティングをやりたがるそうです。僕らの時もマーケティングが一番人気でしたから、マーケティング人気は不変だと感じました。

金森 マーケティングは経営学部、商学部の学問です。ところが、僕が17年前に青山学院大学から声を掛けてもらったのは、経済学部からでした。当時流行っていたベンチャーを頭に付けて、「ベンチャービジネス・マーケティング」という講座にしたのですが、内容はベンチャーの立ち上げ方などでいいのかと聞くと、「そういうことをやってほしいわけではない。ベンチャービジネスでも何でも、マーケティングの基礎がきちんとできていないとだめだということを教えてほしい」と当時の学部長に言われて、それでずっとやってきています。僕の講座は半期の2単位分の授業なのですが、経済学部にも通期で専任教授がやるようなマーケティング論の授業ができました。すごく広がっていますね。

猪口 マーケティングの重要性は、ますます高まってきていますよね。会社においても、営業や企画部門だけではなく、あらゆる部門の人たちにもマーケティングは必要だと思います。今の仕事からひとつ上に行く、ビジネスパーソンとして成長するためにも、マーケティングは必要です。

金森 以前、マーケティングは専門部署の専門スキルという感じでしたが、一気に拡大しました。営業だけでなく全社員がマーケティングを理解しなくてはいけないという風潮になり、階層別研修などにも取り入れられることが増えました。さらに、新入社員にもマーケティングを学ばせようという動きが、企業の中でだいぶ多くなってきています。

また、スタッフ部門、管理部門でも、社内顧客という考え方で業務に取り組むように言われるようになりました。『図解 よくわかるこれからのマーケティング』の第二版でも、社内マーケティングについて加筆しています。

製造業の人に聞くと、もともとマーケティングという概念ではなく、「後工程はお客様」という言い方をされています。すごく良い言葉です。これはまさしくマーケティングで一番大事な「顧客視点」であって、要するにバリューチェンなのです。そのような文化がある会社もあるので、マーケティングの言葉として、より拡大して全体像を教えると非常に効果があります。ありがたいことに僕の本が売れるのは、企業が全社員に読ませるために買うことが多いからです。

猪口 これから、さらに企業のなかにマーケティング教育のニーズが増えそうです。

金森 ビジネスパーソンへのメッセージとして一つ言えるのは、今日多くの企業で「全社員がマーケティングのスキルとマインドを持っているべきだ」と考えられるようになったことです。憧れのマーケティング部に配属されたとしても、企業には異動があるので、マーケティング部にいられるのは3〜5年かもしれません。では、その後また別のことをやる時にマーケティングは要らないかというと、マーケティングはやはり必要です。だからこそ、マーケティングをきちんと最初から、できれば学生のうちに学んでおくことが大切です。自分の業務の中で、マーケティングの全体像の中で、自分が関わるのはどこなのか、自分はどこの部分を改善できるのかを知り、その中で、顧客視点で見た時に、どうアプローチすればいいのだろうかを考える。多くの場合、売り手の視点になっているので、顧客の視点に転換するような考え方を持つことが大事なのです。

僕がだいぶ前から言っていることなのですが、ビジネスパーソンは「読み書きそろばんマーケティング」です。

情報を集めて、頭のなかに「引き出し」を作って、整理・収納する。そしてフレームワークで考える。

猪口 コンサルタントとして独立をされて、そしてマーケティングに関する書籍を何冊も出版されています。誰もができることではありませんが、独立を機に、ご自身のドメインをどうするか、一から俯瞰的に見られたわけでね。

金森 ずっと会社員をしていたら見直すこともしなかったでしょうし、自分がマーケティングの隅っこのところからしかものを見てないことにも気づいてなかったかもしれません。

独立後はブログを毎日書き、そのうち問い合わせもきて、その中には広告屋の知識では対応しきれない商品企画や売れていない商品のテコ入れもありました。テコ入れであればプロモーション的なアプローチだけでいくこともできたかもしれません。しかし、それでは絶対に成果は上がらず、その業務は続かないでしょう。根本的な解決をするためには自分の知識ではだめで、やはり学び直さなければならないと思いました。それが一つです。

もう一つは、自分の中のマーケティングは端っこら見ていたものだったので、俯瞰的に見る必要があり、マーケティングの全体像はどうなっているのだろうと考えました。その時、コトラー先生の本を読んで流れが分かったことが、全部のベースとなっています。

猪口 金森さんはコトラーで勉強されたわけですが、一つ上にいきたい人たちに対して、どのようなアプローチをすれば、マーケティング的なセンスが身につき、成長につながるのかといったアドバイスはありますか。

金森 自分自身のアンテナを高く張って、世の中の何にでも興味を持って情報をキャッチすることが何より必要でしょう。

いつもコンビニに行くなら、いつも買う商品の棚だけでなく、店全体の棚を観察してみる。いつもと違うチェーンのコンビニに行ってみて、同じように店内を全部見てみる。また、自分が入ったお店や手に取った商品を、「もっとこうすれば繁盛する、売れるのに」と改善案を考えてみること。もう一つ。話の中で、自分の知らないモノやコトが出てきたら、「知っているふり」をせず、詳しく聞くようにすることです。そして、相手はどう思っているのかという所まで訊き出してください。

こういうことを続けていると、かなりの情報が集まりますので、頭の中に「引き出し」を作って、整理・収納しておくようにしてください。マーケティングでは「フレームワーク」という、「考えるための枠組み(道具)」を使いますが、そこに入れるべき情報がなければ、「フレームワーク」は、「ただの箱」でしかありません。頭の中の引き出しにしまってある「情報=ネタ」の数が勝負です。それを「フレームワーク」を使って、どう考えればいいかは、私の本を読んでください。(笑)

猪口 金森さんご自身がこの分野を勉強し直したいとか、今ここに力を入れているというようなことはありますか。

金森 Webマーケティングのようなバズワードを追いかけるのはあまり好きではないのですが、今はDXが気になっています。DXの正体を知り、それをビジネスに活かすにはどうすればいいのか。DXは大きすぎる概念なので、もう少し分解して考えたいですね。例えばDXマーケティングのように大きすぎる概念同士をくっつけてしまうのはどうかと思いますが、DXと言われる部分のどこをどう使っていくのかを勉強したいですね。

猪口 マーケティングという言葉が生まれたのと同じくらい、DX自体が大きな概念ですよね。DXの本質を説いたコンテンツは皆が欲しがっていると思います。

金森 実は、僕はマーケティング以外の専門領域がもう一つだけあって、それはナレッジマネジメントです。2000年頃、広告会社勤務時代に提案を行うようになったとき、コンサルティング会社やIT関係の会社などが競合となり、これまでのノウハウでは通用しなくなりました。

そこで、「ナレッジマネジメント室を立ち上げて、社員教育体系を見直したい」と役員会に起案しました。きちんと教育をして、広告領域だけでなくマーケティングも勉強させたり、事例共有をしたりもしました。

当時、失敗学の本が出ていました。「成功事例を真似ても成功する確率は保証されないが、同じ轍を踏めば確実に失敗する」というのが、失敗学の基本です。プレゼンで負ける時は、だいたい同じ轍を踏んでいます。

マーケティングというのは売れ続ける仕組み作りです。仕組み化するためにはナレッジ共有も必要です。そういうところまで考えて提案できるようにならないといけません。

猪口 先ほどおっしゃっていた、全社員がマーケティングの知識が持つというのは、まさに高レベルなナレッジ共有であり、成長の糧とも言えそうです。

本日はありがとうございました。


金森努

有限会社 金森マーケティング事務所 取締役
青山学院大学 経済学部 非常勤講師(ベンチャーマーケティング論)
日本消費者行動研究学会 学術会員

Kanamori Marketing Office
http://kmo.air-nifty.com/kanamori_marketing_office...

Youtubeチャンネル
https://www.youtube.com/channel/UCC9xVKSdgtFPB-BFJL7i8TQ

主な著作

  • 9のフレームワークで理解するマーケティング超入門 (同文舘出版)
  • 最新版 図解よくわかるこれからのマーケティング (同文舘出版)
  • あのヒット商品はなぜ売れるのか? ─気軽に読むマーケティングのツボ─(TAC出版)(監修)
  • ポーター×コトラー 仕事現場で使えるマーケティングの実践法が2.5時間でわかる本(TAC出版)(共著)
  • “いま”をつかむマーケティング(アニモ出版)
  • 「売れない」を「売れる」に変える マケ女<マーケティング女子>の発想法 (同文舘出版)

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