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セルフブランディングに欠かせないアウトプットのクオリティを、クリステンセンのジョブ理論を活用する/INSIGHT NOW! 編集部

INSIGHT NOW! / 2022年2月28日 9時30分

セルフブランディングに欠かせないアウトプットのクオリティを、クリステンセンのジョブ理論を活用する/INSIGHT NOW! 編集部

INSIGHT NOW! 編集部 / インサイトナウ株式会社

クレイトン・クリステンセンのイノベーション理論、いわゆる「ジョブ理論」は、大企業のイノベーションの戦略策定にとどまらず、私たち個人のブランディング、パフォーマンス向上にも非常に役に立つ概念だ。

組織であれ個人であれ、我々は論理的にデータとして存在するニーズを分析し、競合他社との違いを少しでも出しながら、ソリューション(イノベーションと称されることもある)を導き出し、サービスとして提供を続ける。

ところが、クリステンセンは、こうしたデータの活用は大半の企業が行っていることなのだが、画期的なソリューション(クリステンセンの言うイノベーション)を創造するという意味においては、まったく異なる視点が必要になると言い、「企業がイノベーションに費やす予算は加速度的に増えているが、~(中略)~、長期的かつ持続可能な成長を呼び込む根本的なイノベーションにおいてはまったく成果をあげられていない」としている。

また、クリステンセンの著書『イノベーションの解』のなかに、次の記述がある。

「1・2・3・4・5・6…」

「75・28・41・26・38・64…」

この二つの数字の羅列は、どちらが予測可能かと問うているのだが、一見、前者のほうが、次に「7」ではないかと予測がつくと思える。

そして、この前者の数字が抽選機から出てくる宝くじの当選番号だったらどうだろう? 次の数字はまったく予測できない。また、後者が、ある地点からある地点への道路の番号を示しているものだとしたらどうだろう? 地図を見れば、いくつかの選択肢はあるものの予測は可能となる。つまり、結果として表れていることだけを見ていても、それが導き出されたプロセスを把握しないことには、次の「答え」は導き出すことはできないということだ。

クリステンセンは、ここからの教訓として、「プロセスから生じた結果を見ただけでは、そのプロセスに予測可能な結果をもたらす能力があるかどうかは分からない。プロセスそのものを理解しなければならない」としている。

ジョブ理論に学ぶ

こうしたことは、企業では頻繁に起きていることであり、結局間違った予測となっている。

そこで提唱されているのが、ジョブ理論だ。

ジョブ理論におけるジョブとは、「ある特定の状況で顧客がなし遂げたい進歩」と定義されていて、企業や個人が提供するソリューションやサービスは、その商品そのものではなく、顧客がその商品を使って、何かを成し遂げることで、初めて意味を成すものになるということだ。

つまり、イノベーション(画期的なソリューションやサービス)とは、それまでは物足りない解決策しかなかったジョブや、解決策が存在しなかったジョブを片付けるようなプロダクトやサービスを開発することであると言えるわけだ。

そういう意味で考えれば、これまでマーケティングと称して行われてきたニーズ分析や顧客の属性分類は、ほとんど役に立たないことがわかるだろう。

こうしたことは、私たちの仕事にも頻繁に表れる。

「WebサイトのPVを上げたい」というニーズがあれば、通常は「SEO対策」や「リスティング広告」などの提案をするだろう。

ただし、ここには「顧客が片づけなければならないジョブ」は含まれていない。ジョブが「将来の主流となる顧客を探し出す」ことであれば、まったく関係のない人たちからのPVをいくら上げても、それはむしろ余計な仕事(ジョブ)を増やしているに過ぎないし、ジョブが「増加したPVを報告書に記載しレポートとして提出すること」であれば、徹底的な「SEO対策」や「リスティング広告」は効果的な施策となるかもしれない。(その担当者以外だれも望んでいないジョブだと思うが…)

セルフブランディングに生かす

セルフブランディングにおいても、対象者(ターゲット)のニーズをつきつめることはとても大切なことだが、この対象者の「ジョブ」まで言及することはあまりないだろう。

よくあるマーケティングのターゲティングは、ほとんどが顧客属性の分類によるものだし、そうした顧客分類に慣れきってしまうと、なかなか「ジョブ」には向きづらい。

年齢、ジェンダー、役職、立場といったものばかり目がいきがちで、「対象者の仕事」には向かいづらい。

そもそも差別化戦略をつくる際、どうしても強豪との比較や自分のアピールポイントを並べがちだが、「SEO対策」と同様に、それは手段でしかなく、顧客の仕事そのものではない。

また、「顧客のニーズ」を考える際、どうしても「機能面」ばかりを考えてしまいがちだ。いわゆる合理性というものだが、価格やボリューム、○○が付いているなど、わかりやすいからだ。

しかし、実際に顧客の共感を得たり、ファンを増やすことは、社会的なニーズ(評価を高める、立場をよくするなど)や感情的なニーズ(気持ちが良い、快適、楽しいなど)によることのほうが多い。

特に、ビジネス系では社会的ニーズ、B2C系では感情的なニーズが大きくなることが多い。

そもそも、ターゲットの仕事は何かをつかむのはとても難しいことだ。単なるアンケート調査や簡単なインタビューでつかめるものではないだろう。

「意図的戦略」と「創発的戦略」を組み合わせる

もうひとつ、『イノベーションの解』で紹介されている、「意図的戦略」と「創発的戦略」を組み合わせるということも大切なことだ。誤解を覚悟で言えば、「論理的な戦略」と「感覚的な戦略」とも言えるだろう。

戦略と呼ばれるものの大半は、調査データや結果数値から、机上で導き出された「論理的な戦略」だろう。ロジカルだけに、説明がしやすく、納得感も得られやすい。セルフブランディングにおいても、自分自身が納得しやすいという面がある。

逆に、現場で働く人であれば、誰でも感覚的に「こういうのが面白いのではないか」と感じることがある。しかし、論理的に説明できないし、事業プランとしてまとめることもできないという状況だ。上から戦略を説明されても、何か納得できないが、しかたなく従うという感覚か。

セルフブランディングでは、こういうことばかりだろう。自分で感覚的につかんでいるのだが、説明できないので、自信が持てないという状況だろう。クリステンセンは、この「意図的戦略」と「創発的戦略」を組み合わせることが重要だという。

2020年に帰らぬ人となったクリステンセンだが、氏の功績はビジネス界だけにとどまらない。コロナで一変した今、改めて求められているのではないか

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