70歳まで稼ぐ力を身に付ける ~ BSC(バランススコアカード)で人生戦略を練る/INSIGHT NOW! 編集部
INSIGHT NOW! / 2022年5月31日 9時0分
INSIGHT NOW! 編集部 / インサイトナウ株式会社
多くの企業で65歳まで働くことができるようになり、企業の努力義務とはいえ「70歳就業法」(高年齢者雇用安定法の改正)も施行され、60歳定年時代に比べれば、より長く働けるようになってきたのは事実だ。
しかし、60歳になったとたんに再雇用となり、いきなりこれまでの給与の半分~3分の1になったという声も聞く。さらにまともな仕事も与えられず、雑務をこなすだけの毎日を過ごしている人も少なくない。
一方で、人はますます元気になり、寿命は延びている。人生100年とはいかないまでも、現在の60歳の人の平均余命は男性で約24歳、女性で約29歳、つまり、平均寿命よりもかなり長い期間生きることになる。
これを考えれば、「老後は公的年金に加えて約2000万円必要」と言われたが、実際はこれだけ長生きするのであり、必要なお金はそれどころではないというのが容易に想像つく。
そうなると、投資が成功し、将来にわたって利回りでの生活が計算できる「FIRE」な人、あるいは大企業を勤め上げて数千万以上の退職金を手にした人は問題ないが、大半の人は、企業の努力目標である「70歳就業法」に甘えることなく、70歳までは確実に現役時代と同様に稼ぐことが必要であり、そのためのスキルと能力を維持、あるいは開発する必要があるだろう。
バランススコアカード(BSC)で「from 60戦略」を立てる
多くのビジネスパーソンは、40歳を超えるぐらいからは、ほとんど自分のスキルについては現状で諦めてしまい、伸ばそうという姿勢を持つ人は、本当に少なくなる。ましてや60歳ともなると、自分のなかで「できる、できない」がはっきりし、「自分にできることが残っているだろうか」と不安になる人も多いだろう。
60歳が近づくなかで、自分の能力、スキルを見直すことは、簡単なことではないが、スキルを伸ばすことに諦める必要はまったくない。むしろ、多くの人脈を活用することで、できる範囲は広まっていることのほうが多いはずで、自分ができる仕事は確実に増えている。
早いにこしたことはないが、50歳を過ぎていても、60歳になっても、周囲の期待に対して自分の能力開発の、バリューチェーン開発にトライすることはとても大事なことだ。
そのために有効なツールのひとつが、「バランススコアカード(BCS)」だ。「バランススコアカード(BCS)」とは1990年代前半、ハーバード・ビジネス・スクールのロバート・キャプラン教授と、コンサルティング会社のデビッド・ノートン氏によって開発された経営管理手法で、従来の財務指標だけに基づくだけではなく、非財務指標である顧客価値や業務プロセス、学習・育成を取り入れたものだ。
もともとバランススコアカードとは、より多様化、多角的になる背景のなかで、企業のリソースをどのように配分し、重要な戦略を実現できるのかを説いたものだが、このBSCは、個人がこれから生き抜いていくにあたってこそフレームワークとして考えてほしいものだと考えている。
バランススコアカードの構成要素
- ①ファイナンス
まず、どれだけの稼ぎを得たいのかを考えよう。目標値がなければ始まりません。月額100万円なのか、50万なのか、あるいは3年間で2000万円という長期的な計画なのか、得たい結果をひとまず設定する。
ここは、企業のBSCであれば、戦略的な目標として、「売上高や原価率」「営業利益率」「EVA(経済付加価値)」などが設定されることも多いが、個人の場合、まずはいくら稼ぎたいのかを設定する。
- ②顧客の得る価値
問題はここだろう。要するに、あなたにお金を出してくれるのは誰か(どの企業か)、そして、その人(企業)が、どのような状態になれば、あなたにお金を支払ってくれるのかを考える。
いま勤めている会社が顧客になると考えるのならば、会社の業績に大きく貢献する必要があるわけで、その計画をもとに、経営陣と交渉することになるだろう。
そうではなく、別の顧客を見つけ、その企業に購入される商品やサービスを見つけていくのであれば、彼らが求めているものを定義しなければならない。
まだまったくイメージができないのならば、これまでお世話になった人や企業と改めて面談し、自分の思いを伝えることから始めなければならないだろう。とにかく、企業から言われるままになるのが不服ならば、対価を払う人を探さなければならない。
- ③バリューチェーン
若くて体力もあり、馬力で勝負するなら、一人で何かを生み出すことにチャレンジすることも可能かもしれないが、経験を積んだ今なら、顧客が満足する状態をつくるために、ひとりで何を生み出せるかではなく、ネットワークや人脈を駆使してバリューチェーンをどうつくるかを考えたい。
ひとりでできることには限界があり、まともな競争を避ける意味でも、プロセスとしてのオリジナリティを作り上げたい。
どれだけあなたに力を貸してくれる仲間がいるかどうかも、スキル・能力のひとつであることは間違いなく、何十年も経験を積んできたからこそあるネットワークがあるはず。あるいは、志を同じくして、仲間を募っている人もいるかもしれない。
- ④学習・能力開発
顧客に新たな価値を提供するには、いまの段階で不足しているスキルや技術があるかもしれない。できないと諦めるのではなく、むしろ多角的に取り組んでほしい。
繰り返しになるが、いまあなたが50歳~60歳として、10年前よりも、できること、成果を上げる総合的な能力は、むしろ高まっているはずだ。
その能力を整理し、改めて形づくることができれば、こんなに頼もしい武器はないだろう。
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