最悪の選択しかしていない渡部さんの判断力／増沢 隆太

増沢 隆太 / 株式会社RMロンドンパートナーズ

・ビジネス書出版？
千葉テレビの番組で表舞台復帰を果たした渡部さんですが、その番組以外の地上波番組への出番はなかなか無いようです。一方でインターネット番組、ユーチューブでは、東野さんの番組始め、露出が見られるようになりました。

謹慎中の生活始め、殊勝に反省を述べる姿勢に、私は見ていて好感を持ちました。しかし一方で番組を見ていなくとも、渡部さんの活動がネットニュースに出る度に批判的コメントが数多く寄せられます。

そうしたネット番組のトークの中で、渡部さんは謹慎中、企業でセミナー講師としてお呼びがかかり、コミュニケーションについて講演したということを言っていました。私は少々ひっかかるものを感じましたが、もちろん生活のこともあるし、表舞台復帰そのものはご本人が選んだことですので自由です。
ただ、「企業講演」という単語は、かなり強烈に記憶に残ったのです。

・最悪手をわざわざ進む
残念ながら渡部さんの判断は常に失敗してきたといえます。事件が明るみに出た直後、記者会見で謝罪すべきという声が大きく盛り上がりました。私もさまざまなテレビ番組やマスコミから取材を受けましたが、事態沈静化のためにも会見は欠かせないと述べています。

しかし渡部さんは、何と事件を報じた文春への単独インタビューに応じるという奇策に出ます。一気に敵のフトコロに飛び込む勇気ある行動であり、戦術の一つだとは思います。ただ残念ながらこの手は全く奏功することなく、会見から逃げたという批判は燃え上がり続けました。

結局会見など開かず、そのまま表に出ぬままいた渡部さんですが、今度は当時の超人気年末特番「ダウンタウンの笑ってはいけない」に出演し、復帰するという報道が突如出たのでした。相当な勝負であり、成功率も低い賭けだと思いました。

しかし出演の前段階として、これまで頑なに実施しなかった会見を、収録が終わった後だったようですが行い、それをもって大晦日の地上派超人気お笑い番組で大復活を目指したのでしょう。

結果はご存知の通り。復活どころかせっかくの出演自体が無いことにされ、燃え上がった大批判により、復帰はさらに遠くなったのでした。
なぜにこんな悪手を次から次へと選ぶのか、私は不思議なほど間違った判断だったと思います。

・書籍出版が復帰の足を引っ張る理由
私は芸能人のスキャンダル炎上リスクを「位置エネルギー」と表現しています。有名芸能人である＝金持ち＝自分自身や配偶者/パートナーが美男美女＝選ばれし者という、芸能人のステータスがキバを向き、匿名のネットという武器を得た一般視聴者から大炎上という反発をくらうリスクの高さを指します。

そこまで有名では無く、美男美女･金持ちでもない人であれば、このリスクは低くてすみます。渡部さんは自身がイケメン芸人であり、美人アイドルの妻を持ち、グルメを売りにするという、きわめてリスキーなポジショニングで活動していました。

私は復帰するならこうした位置エネルギーを一度下げなければ無理であると述べています。謝罪会見でフルボッコになったのは悪くないのですが、何一つ自分を貶める新情報は開示されず、都合の悪いことは話せないで突っぱねる姿勢もマスコミをすべて敵に回したといえます。

謹慎中、魚市場でアルバイト？する姿が出たことがあります。どうしてこれを3年続けなかったのでしょう。芸能界はすっぱり辞め、地道に魚市場できつい肉体労働するといったことを、仮にポーズであったとしても、何年か続けることができればむしろ復帰は早まった可能性があると思います。

一方で千葉テレビ復帰、講演会、ビジネス書出版。すべて「キレイな仕事」です。
やっぱり手や身体を汚すきつい肉体労働ではなく、キレイな環境に身を置き、高尚で高効率な報酬が得られる道が好きなのだというメッセージになると思います。

キレイな仕事は、自分の位置エネルギーを高いまま維持し続けることになります。芸能活動するのであれば、多くの芸人さんが言っているように、若手に混じってライブでコントをする（児島さんが無理なら一人コントでも）といった、地味で目立たない活動をすることこそ、位置エネルギーを下げ、結局復帰につながる最短距離となる可能性があったと思います。