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CS調査・NPS調査「やりっぱなし問題」から抜け出す/松井 拓己

INSIGHT NOW! / 2023年4月17日 3時0分

CS調査・NPS調査「やりっぱなし問題」から抜け出す/松井 拓己

松井 拓己 / 松井サービスコンサルティング

事前期待で分析すれば良い

答えはシンプルです。サービスや顧客満足の本質である「事前期待」の観点を加えるのです。顧客の事前期待によって、価値あるサービスの姿や対応方法は異なるはずです。しかし実際には、CS・NPS調査で顧客の事前期待を知るための項目が入っていない企業がほとんどです。つまり、様々な事前期待の顧客を十把一絡げにして分析してしまっているのです。これでは、当たり前な内容の考察しかできなかったり、間違った解釈をしてしまう恐れがあります。

例えば顧客の中には、何よりもスピードに期待して利用した顧客と、スピードは気にしないので丁寧に対応してほしいという事前期待で利用した顧客がいるとします。このどちらの顧客も、顧客アンケートのスピードに関する項目には「遅かった」と答えたとします。この場合、スピードに期待して利用した顧客の「遅かった」という評価は重要課題として解釈すべきです。一方で、スピードよりも丁寧な対応に期待していた顧客の「遅かった」という評価はどうでしょう。もしかすると、「スピードはどうでしたか」という質問項目があったので答えただけで、顧客自身は対して気にしていない可能性が高いと言えます。こちらのタイプの顧客からの「遅かった」という評価は、割り引いて考察すべきです。むしろ、対応の丁寧さや柔軟さの方の評価項目に重きを置いて考察すべきなのです。

このように、顧客の事前期待によって、重視すべきポイントは変わります。しかし、事前期待を捉えずに評価結果を合算してしまうと、「遅いと言っている顧客の数が一番多いから、もっとスピーディーにサービス提供しなければ」という考察になってしまいます。実際にスピードアップしても、「スピードよりも丁寧さ」を期待していた顧客からの評価が下がってしまったり、顧客を失ってしまうという逆効果も生まれてきます。これは、自分たちのサービスの価値を磨いて顧客満足や推奨意向を高めるどころか、「早い・安い・うまい」のように、他のサービスとの均質化が進んでしまい、価格競争の泥沼に沈んでしまいます。

言われてみれば当たり前なことですが、この「事前期待」を捉えていないことで、CS・NPS向上の盲点が生じたり、自己満足なCS・NPS向上になってしまうのです。

そこで、これまでの調査項目に、顧客の事前期待を知るための項目をいくつか追加してみると良いでしょう。「どういう事前期待をもった顧客が、どんな評価をしているのか」これが分かれば、その評価を高めるためには次の一手で何をすべきかが、今まで以上にクリアになります。

※ちなみに「事前期待」の観点を外せば、今までと同じ観点での分析も可能なので、これまでの経年変化を確認することもできます。

サービス設計が先、調査は後

ただし注意したいのは、闇雲に「お客様の事前期待は何ですか」と聞いても、顧客自身もどう応えたら良いか分かりません。あるいは、様々な意見が出てきてしまって、収拾がつかなくなってしまいます。そこで、闇雲に調査を行うのではなく、まずはサービスの価値向上のための仮説として、事前期待で顧客タイプを定義し、勝負プロセスをモデル化します。このサービス設計があると、調査を通してどんな事前期待を捉え、どの評価項目を重点的に評価すべきかが明らかになり、調査や考察の精度が高まります。

また、事前期待を捉えられれば、難しい方程式を使わなくても、事前期待に紐づけて深い考察が可能になります。経営から現場までがデータ分析の専門家にならなくても、これまでの経験知を活かして納得感と効果のある次の一手を見出すことが可能になるのです。

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