ネット炎上の相席・山添さん。クズの王道を貫けるのか、その顛末をBCP的視点で予想してみる/増沢 隆太
INSIGHT NOW! / 2023年5月15日 10時10分
増沢 隆太 / 株式会社RMロンドンパートナーズ
・批判
TBSバラエティ番組の中で、山添さんは韓国の露店のロケで、店頭の食べ物を自分の使った楊枝で直食いしました。回転寿司など飲食店における不適切・犯罪行為がネットで大きな批判を呼び、犯人が糾弾、起訴されたりする中で、山添さんの行為も一連の不適切行為と同じではないかと、ネット上では批判が渦巻いています。
番組ではTBSの田村真子アナウンサーが謝罪しただけでなく、メイン司会の川島明さんも反省を述べるなど、火消しに取り組んでいます。一方で、当事者である山添さん本人が、未だ謝罪しないことについて、批判が燃え上がっています。
似たような事件で、やはりお笑い芸人オードリーの春日さんが、日本テレビのスッキリ!において、ペンギンのいる池にわざと落ちるというロケの行動が批判を集めました。ただこの場合はそもそも春日さんより、池に落ちる行為を煽った司会者で立場が上の加藤浩次さんに責任があるという声、加藤さん自身の謝罪が不十分。さらには春日さん自身はその後直接動物園に謝罪もしていたことが明らかになり、批判は消えました。
・不適切行為の中身
私自身、こうした不適切・犯罪行為についてはさまざまな媒体からコメントを求められる毎に、当然許されないものであることを言っています。一方で、寿司テロに代表される食品を舐めたり汚したりして食べられなくしてしまう行為や、実際に池にいるペンギンを驚かせるなど被害のあるものと、単なる悪趣味、被害までは至っていないものを区別する必要があることも発信しています。
山添さんの行為は不適切です。ただ、個別の唐揚げを自分の楊枝で刺して(映像では他の唐揚げには触れていないように見える)食べたというのは、スープや鍋もののように、直接共有して食べる食品に直箸やスプーンなどをつっ込むようなものとは微妙に異なると思います。
衛生上も問題のある不適切行為は言語道断ですが、ぎりぎり悪ふざけの範疇と考えたとしてもありなのではと思いました。昔から食べ物を粗末にするという笑いはPTAなどから批判を呼ぶものですが、これは昔から子どもにはその危うさが人気を呼ぶことなのではないかと感じます。
・ネット批判の中身
ネットニュースは注目度と一般コメント数に正の相関があるといわれますが、正に事件直後はたくさんのネット報道とそれらへのコメントがありました。ヤフーニュースなどでも上位に並ぶ今回の不適切ロケについて、アクセスを集めていることは良くわかりました。ニュースへの一般コメントのほとんどは厳しく山添さんを批判するものでした。
行為への批判以外に、局アナさんが謝罪しても本人が逃げ隠れしているのが許せないというものも目立ちます。ほんの一部ですが、完全収録のロケ番組なのだから、こうした不適切シーンをわざわざアピールした番組制作を批判する意見もありました。
そんな中、私が注目したのはそれらへの「一般コメントに対する返信コメント」と、批判コメントへの反応です。膨大なすべてのコメントを調べてはいませんが、上位コメントだけみても、批判への反論返信だったり、批判コメントについて「そう思わない」と反対する意思表示が決して少なくなかったのです。
一連の飲食店における犯罪行為についてのニュースでは犯人批判一辺倒で、擁護する意見や反応はほとんど見られなかったことと比べ、批判コメントによっては反論や「そう思わない」の数の方が上回るものもありました。すべてがそうだというつもりはありませんが、山添さんへの批判報道が出まくる一方で、読者の反応は必ずしも批判一辺倒でもないように感じた次第です。
そこまで騒ぐほどのことなのか?何でもかんでも正義を主張したり被害者がいないのに謝罪を求める必要があるのか等の意見が見受けられました。
・「じゃない方芸人」から進化した山添さんの今後
山添さんはコンビ相方の山崎ケイさんに隠れて、長らく「じゃない方」芸人と呼ばれていました。しかしピンでの仕事が徐々に増え、番組開始時低視聴率に苦しんだ今回問題となった番組「ラヴィット」では、不適切なキーワードはじめ、予定調和をことごとく壊す芸風が注目され、ご本人が一芸人としての存在感を増してきていました。
悪童・山添というキャラは、毒舌など不適切なネタだけでなく、私生活の多額借金などで「クズ芸人」というジャンルにも当てはまると注目をされています。もし山添さんが司会をメインとする川島さんや恵さん、山里さんのような立ち位置を目指すなら無理だと思いますが、この悪童のポジションでいくのであれば、現状の批判をやり過ごすという選択肢は「あり」のように思います。これが私の予想です。
・BCPのカギは「お客」が誰なのか
元気で明るく清く正しい芸能人が一度スキャンダルを起こせば、そのギャップが解消できない限り、復活はほとんど不可能です。ですが、そもそもそうした広く一般的人気を目指さないポジションの場合、事情が変わります。
ゲスの極み乙女の川谷絵音さんは、ゲス不倫スキャンダルを終始徹底して無視しました。しかし元々川谷さんの「お客」は自分の音楽を買ってくれたり、ライブに来てくれる人たちです。ワイドショーやネットニュースで批判をする人は自分のお客ではありません。結果として川谷さんは自分たちのファンからの支持を受け続け、今でも第一線で活躍し続けています。
BCP(事業継続計画)の視点は、ここにあります。スキャンダルをやらかした芸能人や政治家が「世間を騒がせた」と謝罪しますが、BCPの視点でいえば、ほとんどの場合世間は関係ありません。広く世間全体を「お客」としないのであれば、川谷さんのように徹底して無視してやり過ごすというのは一つのストラテジーです。
私は常日頃から謝罪について解説や意見表明をしていますが、一度たりとも倫理的理由から批判をしたことはありません。それは戦略コミュニケーションの専門家である私の役目ではないからです。
経営者やビジネスパーソンにとって重要なことは正にBCP的視点こそ重要だと思うのです。これから新番組も始まるといわれる山添さんですが、広く一般の視聴者を狙わず、コアな悪童ファンをターゲッティングすると開き直れるのであれば、現状をこのまま無視し続ける、「クズの中のクズ」というポジショニングもあり得るのかも知れません。
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