金森流「ビジネスセンスを磨く」 前編/INSIGHT NOW! 編集部
INSIGHT NOW! / 2023年8月28日 9時16分
INSIGHT NOW! 編集部 / インサイトナウ株式会社
インサイトナウ編集長対談
お相手:金森 努様
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
アフターコロナで変化したこと
猪口 金森さんには前回、「ビジネスパーソンとして成長するためのマーケティングの必要性」についておうかがいしました。今回は、「ビジネスセンスの磨き方」についてお聞きしていきたいと思います。
前回、コロナ禍に入って研修がオンラインに変わったというお話をしていただきました。金森さんからご覧になって、今の状況はコロナ前に戻った感じでしょうか、あるいはまったく新しいスタイルができたとお感じですか。
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金森 私は仕事として研修事業とコンサルティング事業をしています。研修事業に関しては、対面研修が戻ってきて、ある意味コロナ前に戻ったような様相は見えています。しかし、同じ対面研修でも受講者のマインド、学ぶ姿勢はだいぶ違ってきていると感じます。対面は全体を乗せてしまえばいいので、わりとアウトプットをさせやすいのですが、オンラインは積極的にアウトプットする人でないと学びが少なくなってしまいます。そこで何とかアウトプットさせようと講師はあの手この手を使うわけです。コロナ禍でオンライン研修を受けた人の中で、元々学ぶ姿勢、アウトプットする姿勢が強かった人がより活発になったり、飛び抜けて活発な人がいたり、そうした差がけっこう出てきている気がします。
コンサルティング事業に関しては、リモートワークからだんだん出社に戻ってきているとはいえ、やはりリモートは続いていますし、コロナ禍で社屋を引っ越して社員の人数分の席がない会社もあります。リモート前提のコンサルティングの依頼もけっこうあります。最近、いわゆるインサイドセールスの再構築の仕事をしているのですが、リモート環境が整備されたことでやりやすくなっています。そういう意味では、セールスの世界もだいぶ様変わりしてきました。
猪口 確かにそれはありますね。BtoBでも、マーケティングの手法として、ウェブからインサイドセールスに繋げるようになってきて、今までいわゆる「営業」と言われていた人たちは仕事の中身が変わってきました。
金森 インサイドセールスからフィールドセールスに案件化して引き渡すのが標準です。ところが、フィールドの人たちが実際に営業に行くかというと、その人たちもリモートでセールスしているので、フィールドを含めてインサイドセールスといった感じになっています。
猪口 そうなると、今までのいわゆる営業が本当に必要なのかという話になってきますよね。コールセンターではアポ取りが仕事という雰囲気でしたが、そこでクロージングしていくことも十分にあり得ます。
金森 従来はアポ取りまでがメイン業務だったのがかなり高度化しました。アポ取りとインサイドセールスは明らかにレベルが違うのですが、いわゆるリードナーチャリング、育成していく段階をコールセンターが担うようになっています。
猪口 これは環境の変化というよりも、金森さんのご自身の成長、変化かもしれませんが、研修やコンサルティングの内容についても変化は生まれましたか。
金森 私の研修の目標は、単に「知った、分かった」で終わらせないで、自分の業務で使いこなせるようになることです。もちろん、1日や2日で使いこなせるようにはなりません。研修が終わってからが勝負です。自分の業務に使おうと思った時、悩むこと、実際にはどうするか迷うこともたくさんあるでしょう。「その時にはメールしてください。無料でお答えするので、遠慮しなくていいですよ」と伝えています。実際には全員からではありませんが、ぽつぽつと質問がきます。質問をされると、この人はこういう風に受け取ったのか、こういう仕事をしているとこういうところで悩むのかという発見がこちらにもあるので、ありがたいですね。そのようなコミュニケーションの回路を作る癖をつけておくことは、すごく重要だと思います。
猪口 金森さんは、研修とコンサルティングをハイブリッド的にやられていらっしゃいます。
金森 研修ばかり行っていると、現場感が少なくなってしまうので、研修は抑えめにして、コンサルティングの仕事を積極的に自分で取りに行くようにしています。そこのバランス感覚は自分でコントロールしているつもりです。コンサルティングの仕事の一つは顧問的なニーズで、経営者や事業責任者の相談に乗っています。これは、自分の年齢が上がるとともに増えてきました。
もう一つはハンズオン型というか、より現場に踏み込むようなコンサルティングが求められるようになっています。レポートをファイルで納品して終わりではなく、社員になったつもりで、現場まで踏み込む。そこまでやらないとだめなのだと思います。コンサルティング会社はやはり成果を出すところまで見届けなければいけません。
猪口 そのようなスタイルを確立するには、さまざまなビジネスセンスが必要になりそうですが、金森さんが考えるビジネスセンスについてお話しを伺いたいと思います。
ビジネスセンス①「自分のキャリアやスキルの定期的な棚卸しとアップデート」
金森 私のファーストキャリアはコールセンターで、次のコンサルティング会社でもインハウスのコールセンター立ち上げのコンサルをしていました。その後は電通ワンダーマンに移り、ダイレクトマーケティングを中心とした広告をやるようになって、その間はコールセンターの仕事をしていなかったのでかなり久しぶりです。だいぶ様変わりしていました。ただ、その時の経験は生きていて、土地勘があるというか、オペレーターの気持ちが分かったり、スーパーバイジングのツボが分かったり、マネジメントするツボが分かったりします。あとはやはりセールスなので、「何件セールスするのであれば、何件案件化して、そのためには何件リードを取るか」といった押さえるポイントに関しては、電通ワンダーマンで営業部長をしていた時のキャリア、スキルが活きています。
猪口 なるほど、今の仕事にそれまでのキャリアが活きてくるわけですね。今回のテーマ「ビジネスセンスの磨き方」にも繋がりそうなポイントですね。
金森 振り返ってみると、ビジネスセンスを磨くためには、自分のキャリアやスキルの定期的な棚卸しが欠かせません。自分は何ができるのか。どういうことをやってきて、何ができるようになったのか。それを押さえた上で、それを今使うとしたらどういう形で活かすことになるのか、アップデートをするということです。
インサイドセールスの案件にたまたま行き当たった時も、どうやってリードナーチャリングをするか、どうやってリードクオリフィケーションをするかという情報収集はしていたので、すぐに違和感なく入っていくことができました。
猪口 アジャストしていくためにはセンスが必要で、それを磨くためには常日頃の勉強が基本ですね。
金森 案件が来た時に、「昔はやっていましたが、最近はあまりやらないんですよ」では、話が終わってしまいます。せっかくキャリアがあるのだから、棚卸ししてアップデートしておけば使えます。
ビジネスセンス②「バランスのとれたプロデュース力」
金森 大事なのはスキルだけではありません。例えばコールセンターは慢性的に人材不足で、その時に活きてくるのが「部門経営」という、部署を一つの会社と見立てて経営する考え方です。電通ワンダーマンは、人が足りないのであれば、部署の利益の中で人材を自由に採用していいという方針の会社で、私はそこで人員計画や採用をしていました。直接的なコールセンターのキャリアではありませんが、そこで培った、軌道に乗って人が足りなくなってきた時の人の手当ての仕方が活きています。
猪口 その経営視点はセンスの中で最も必要だと言ってもいいくらい重要ですね。全体のバランス感覚が分からないことには、何も判断できません。
金森 今コンサルティングをしているのはIT系の会社で、製品やアプリケーションの開発の人たちへのフィードバックをセールスの現場からするのですが、そのような組織間連携も電通ワンダーマンで経験しました。電通ワンダーマンは広告会社で、プランナーとクリエイターが社内で内製していました。クリエイターが好きなものを作りたがるのを、うまくフィードバックして、プランナーが意図するところ、クライアントが納得するものを作らせるためには、プロデュースする力が必要です。どうやって作る人にうまくフィードバックしていくか。これはITの世界でも同じなのです。
ビジネスセンス③「人脈をメンテナンスし紹介を得る」
金森 ビジネスセンスを磨くためには、自分のキャリア、スキルの棚卸しも大事ですが、もう一つ大事なのが人脈の棚卸しです。紹介で入ってくる仕事が一番確実ですから、人脈のメンテナンスはすごく大事だと思いますね。今はコロナ禍も挟まって、人脈のメンテナンスがしにくい時代になっています。だからこそ、そこをきちんとやっておかないといけないような気がしています。
猪口 大事ですね。ただ、大事だと分かっていながらなかなかできません。
金森 昔、生命保険の代理店の人たちのセールスプロセスを分析するという仕事がありました。営業成績トップで億超の人たちから全然食えないような人たちまで20人ぐらいにインタビューをして、その人たちのセールスプロセスを全部洗い出して、何が違うのか調査しました。結果は、やっているプロセスには実はそれほど違いはなくて、何が違うかというと、そのプロセスをいかに確実にやっているか、いかに丁寧にやっているかの違いでした。
例えば成績が悪い人は、年賀状や誕生日の定型メッセージは送っても、それ以外のちょっとした時候の挨拶等でコンタクトはしません。年賀状も印刷して終わりですが、できる人は手書きでその人向けに気遣うようなメッセージを添えます。丁寧に相談に乗るので、相手は保険の見直しをして、信用してくれて、知り合いにも紹介してもらえます。この仕事はリファラルマーケティングで、いかに紹介を受けるかというところで大きく差が出てきます。
猪口 私も同じような取材をしたことがあります。皆同じツールを使って、同じようにやっているのですが、売る人ほど自分なりの工夫をしていました。資料を説明する時、自分だけ何か切り抜きを入れたり、ちょっとしたトークを挟んだりすることで、自分の言葉で喋っているので説得力も違うし、熱の入り方も違います。けっきょくその真剣味、自分に何ができてどうしたいのかという向き合い方が大事なのでしょうね。コロナ禍になって、そのための時間はたくさんあったわけなので、そこで棚卸しをきちんとできた人とできなかった人でだいぶ差がついているかもしれませんね。
金森 大きく差がつきましたね。コロナ禍で、私もいろいろな棚卸しをしました。自分のスキルのポートフォリオもそうですし、クライアントのポートフォリオも組み換えてメンテナンスをしました。それをやって今生き延びているので、それができなかった人は今相当苦労しているのではないかと思います。
猪口 人脈と言っても、社外だけではなく、社内の人脈もあります。会社の役員クラスだと遠い存在だと感じると思いますが、積極的に関与してほしいですね。
金森 役員というのはなるべくしてなっていると思うので、吸収するものがあります。ですから、それを良く言う人も悪く言う人もいましたが、私は偉い人と積極的にコミュニケーションを取ろうといつも思っていました。偉い人やトッププレーヤーから積極的に吸収することも自分磨きです。人から吸収すると、ベストセラーを何冊も読むよりずっと効率よくいろいろ吸収できるじゃないですか。その辺のコミュニケーション能力は磨くべきだと思いますね。
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