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中堅社員編:先輩社員としてフォロワー(自立したチームの一員)として後輩の手本になるためには/齋藤 秀樹

INSIGHT NOW! / 2023年11月16日 11時33分

中堅社員編:先輩社員としてフォロワー(自立したチームの一員)として後輩の手本になるためには/齋藤 秀樹

齋藤 秀樹 / 株式会社アクションラーニングソリューションズ 代表取締役 一般社団法人日本チームビルディング協会 代表理事

組織やチームが健全に成長進化を続けるには、大きく2つの視点が必要になる。

1つはチームメンバーの成長、もう1つはチームそのものの成長だ。

そのプロセスの中で最も重要なことが、中堅社員の育成にある。

中堅社員層とは畑のようなもので、常に良い土壌を維持、高めていければ、そこから多様な芽が生まれ成長し、大きな木々や森へと進化を続ける。

しかし、耕さず放置すれば、芽が出ても育たず、荒れ地の荒野が続くことになる。

したがって人材投資で最も重要な投資対象が中堅社員(特に若手、20代~30代)となる。

ただし、この層への投資が有効になるには条件がある。次回お話しするリーダー層(管理職層)の関わり方、それが中堅社員の成長にとって有効に働いている場合である。

残念なことに現実はリーダー層の関りそのものが、中堅社員の成長の阻害要因になっていることが多い。

それでも中堅社員の自立性(自分で考え能動的に行動する)能力を高めなければ、日本の企業組織の未来はない。

さて、組織やチームが成長するために中堅社員が担う役割要件について3つ挙げておく。

  • 1. 組織全員に求められる「組織、チームの一員として有能な人材」であること。
  • 2. 次代のリーダーとしてフォロワーシップを理解体現し、チームリーダーシップを発揮するための人間力を獲得すること。
  • 3. 後輩への育成能力を磨き、後輩にとってのより良いロールモデルになること。

チームの総力を高め続けるためには、中堅層が実業務とは別にこのような役割要件を担える人材に成長していくことが必須となる。

本来このような人材への育成は、企業人事と現場のリーダーが連携しOJTとして進められるのが理想だが、私はこのような取り組みが有機的に機能している企業を見たことがない。

理由は明快で、このような視点は組織、人材資本の強化として経営的な人事戦略の中で計画的に行われるものである。しかし、現実は経営層にそのような視座が乏しく、人事の担当者に丸投げされることが多い。担当者視野の人材開発は、単なる話題の研修コンテンツの寄せ集めとなり、さらにビジョン無き研修参加は義務的なものになる。結果、研修投資は盲目的な消費へと変わってしまう。

更に、企業によっては研修担当者が2年程度のローテーションで変わってしまうので、一貫性がなく、効果が乏しい知識付与型研修が細々と続く。

このような実情を抜本的に変えたいのだが。

では、どうすればいいのか。実は、人材開発投資が意味を持つための原則はとても明快である。

それは、私達が長年の組織変革の現場で実践検証し、発見したチーム成果の公式に基づけば投資としての人材投資が実現できる。

チーム成果 = Do × Be

近年、この公式を裏付けるグローバルリーダーシップの常識が生まれた。

ご存じの方も多いと思うが、Google発信の「心理的安全」という言葉である。

Google社は、社内の様々なチームの分析結果から、この「心理的安全」がチームに担保されていればチームは100%高い成果を出すという結論を導き出している。

先の公式で挙げた「Be」はこの心理的安全性を含んでいる。

では「Do」とは何か、これはスキル、能力、知識などを指す。Googleのようなハイスペック人材の集団(Doが高い集団)で、さらにBeが高ければチーム成果は自ずと高くなる。

これがチーム成果の一般公式であり、重要なことはこの公式がすべてのチームに適用できるということです。

では、日本の組織はどうか?

日々ルーチンワークのような創造性が欠如した作業の繰り返しでは、無論、Doは高くならない。

そして私の認識するBe、心理的安全性の本質は、前回の「新入社員がチームビルディングを学ばなければならない理由」でも書いたように、関係性の壁(仲間との信頼関係が作れる能力)、安全な場(非難否定のない本音が言える場)を創る能力を指す。そしてBeは、リーダーだけではなく、メンバー全員に備わっていることでチームの総力が飛躍的に向上する。

だからこそ、本来この組織力、チーム力を高めるための能力開発は新入社員から既に始まっている。更に言えば採用段階でも重要な選定要件となる。

端的に言えば、どんなに優秀でも利己的な人材の集団ではチーム力を生み出せない、つまりチームになれないということです。

そして、チーム力を獲得するための学びが、私達が提唱しているチームビルディングにすべて詰まっている。

最後に役割要件について補足しておきます。

【組織全員に求められる「組織、チームの一員として有能な人材」であること】

こちらは前回の「新入社員がチームビルディングを学ばなければならない理由」をご一読願いたい。

【次代のリーダーとしてフォロワーシップを理解体現し、チームリーダーシップを発揮するための人間力を獲得すること】

これは言うまでもなく、リーダー(管理職)になってからリーダーシップを体現するための学びを始めても遅すぎる。

理想は、所属したチームのリーダーがチームビルディングを学びチームリーダーシップを体現しているのであれば、それをロールモデルとして学ぶことで中堅社員から準備ができる。しかし、残念なことにそれは期待できない。

そしてもう一つの課題は有能なリーダーシップを発揮する前提はフォロワーシップが体現出来てからだということです。部下以前に同僚や仲間からリスペクトされていない人材が肩書を持ってもリーダーシップは発揮できない。まずは。同僚や後輩との人間関係(信頼関係)構築能力を磨くことが求められます。

ここで現在のマネジメントには大きな課題があります。上司である「リーダーのリーダーシップの特徴」は、と問うと大半は「牽引型」と回答する。ある企業の若手への質問では95%以上が牽引型と答えました。

牽引力はチーム力を創るうえで有効か?

答えはNoです。

リーダーシップの本質は牽引力ではない。過度な牽引力はメンバーの自立性を阻害し、リーダー依存の体質を創ります。

チーム力の源泉は自立したメンバーが生み出す協働です。その状況を創り出すためには、強制力を伴わない求心力と、影響力を中核としたリーダーシップの獲得が必要です。

誤解いただきないのは、リーダーシップとはリーダーという肩書が生み出すものではなく、

求心力と影響力を獲得したメンバーが、リーダーという役割を担うことで生まれるものだということです。

リーダーとして真にチーム力を引き出す存在になるためには、まず、メンバー(チームの一員)の時から求心力を持った存在になることが必須です。

もちろん、それは開発可能な能力の一つです。

*求心力を持った存在とは他のメンバーから感謝される存在を指します。

【後輩への育成能力を磨き、後輩にとってのより良いロールモデルになること】

組織やチームの一員として最も重要な能力はコミュニケーション能力です。

これももちろん、開発可能な能力です。それもチームの仲間と相互に磨き合うことで、飛躍的に向上します。

このコミュニケーション能力を磨くうえで絶対原則があります。

「コミュニケーションは100%他者評価」

自分自身の考えがどうであれ、コミュニケーションの事実は他者(コミュニケーションの相手)が認識したものだということです。

例えば、自分なりにどんなに分かりやすく話していると思っていても、伝えた相手が「分からない」と言えばそれが事実です。

また、自分自身が不機嫌にしていないと言い張っても、回り(他者)から不機嫌そうに見えればそれが事実です。

このように他者認識と自己認識の乖離を縮める自己俯瞰力を磨いたうえで、他のメンバーや後輩からリスペクトされる存在へと自分を成長させ、必要に応じて演出する能力を培う。

真のリーダーを輩出は、これらの人間力を中堅社員の日常の中でトレーニングし、培われていった結果です。突然、生まれるものではないし、小手先のノウハウや表面的な知識で何とかなるものではない。

これらは戦略的な教育とOJTなしに獲得できないし、それなしに有能なリーダーは生まれません。

繰り返しになりますが、有能なリーダーを輩出する組織、チームに必要なものは、中堅社員への徹底したチームビルディング(組織で有能になるための術)の学びと職場での実践です。

言うまでもありませんが、資源の乏しい日本にとって最良の宝は人財です。組織、チームはその人財を磨く器です。だからこそ、素晴らしい器創り(チームビルディング)が重要なのです。時代がどのように変化してもその真理は変わりません。

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