ABM(アカウントベースドマーケティング)とは?基礎とターゲットアカウントの決め方、進め方/荻野 永策
INSIGHT NOW! / 2024年5月13日 10時52分
荻野 永策 / 株式会社ALUHA
本記事は弊社WEBサイト「ABM(アカウントベースドマーケティング)とは?ターゲットアカウントの決め方とツールや手法、成功事例を解説」の記事を要約した内容となっています。
ABM(アカウント・ベースド・マーケティング、英語:Account Based Marketing)とは、ターゲットとなる企業(ターゲットアカウント)に対して、よりOneToOneのマーケティング活動を展開するBtoBマーケティング手法のことだ。狙い澄ましたABM顧客企業に対して、重点的なマーケティング施策を展開することで、営業部門との連携を強化し、営業フォロー率の向上やLTV向上を狙う。
今回のコラムでは、ABMの基礎や手順、そして最も重要なABM顧客(ターゲットアカウントをどのように定義するのか?)など、ABMの基礎についてわかりやすく解説する。
ABM(アカウントベースドマーケティング)とは?
ABM(Account Based Marketing)とは?意味や定義をわかりやすく解説
ABMとは、ターゲットとなる企業(ターゲットアカウント)に対して、よりOneToOneのマーケティング活動を展開するBtoBマーケティング手法のことだ。
上記図のように、一般的なBtoBマーケティング(図左側)は、リード獲得を行い、育成して、受注を狙うという流れであるのに対し、ABM(図右側)は「最初の段階で狙うべき企業」を確定させ、その企業に対して接点をマーケティング活動で創出し、信頼関係を深め、企業ごとの売り上げを最大化していくという流れだ。
ABMは顧客1社あたりの売り上げを最大化する(LTVを向上させる)ことを重要視するのに対し、一般的なBtoBマーケティングでは、「購入企業数を増やす」ということを重要視する。
これら2つは正誤の問題ではなく、戦略的な観点から、自社の商材やリソース、顧客特性を判断材料に、どのようなバランスでどう進めていくか?が重要となる。
ABMのメリットや目的
ABMのメリットや目的をまとめると下記のようになる。
LTVと利益貢献度の向上
ABMを実施し成果を出していくと、1社あたりの売り上げが向上し、LTVが高くなる。特定企業との取引継続年数や金額が増大し、売り上げや利益に大きく貢献する。そのため、ABMは優良顧客を増やすというような目的がある。取引が継続する限り、安定した大きな売り上げを確保でき、営業や経営に安定感をもたらす。
営業リソースの集約
ABMは特定企業を狙うため、営業やマーケティングリソースをそこに集中できる。さらに、多少無駄な工数がかかっても、受注となれば大きな成果が期待できるため、よりじっくり、確実に営業やマーケティング施策を展開できる。営業部門の人員不足や高齢化なども加速していくため、今後の営業体制の再構築にも役立つ。
営業とマーケティングの連携強化
ABMは売れると成果の大きな企業を対象とするため、営業部門から見れば、「大口顧客」になる。そのため、マーケティング活動で獲得した顧客接点が重要視され、営業とマーケティングの連携力が強力(営業フォロー率の向上)になる。言い換えれば、ほったらかしにされたり、営業対応を後回しにされるというようなことが最小化される。
ABMのデメリットや課題
ABMはよいことばかりではない。当然、デメリットや課題もある。
売上の依存性向上
ABM施策を重要視しすぎると、ある特定企業に売り上げが依存してしまい、万が一、顧客流出のようなことが発生すると、事業の売り上げが急激に激減する。事業戦略や経営戦略から見れば顧客流出が命取りになる可能性すらある。営業担当が変更になり引き継ぎなどに失敗すると、顧客流出のリスクが高まるため、引き継ぎの重要性が高く、かつ、普段のうっかりミスなどは注意しなければならない。
営業・マーケティング工数の増大と武器の準備
特定企業を狙った営業やマーケティングを展開するため、やればやるほどOneToOne化していく。その結果、工数が増大する。加えて、大口顧客は競合企業も狙っているため、競争が激しく、「強みの明確化」「成功事例の創出」といった営業やマーケティングの具体的な武器が必須だ。具体的な武器がなければ、なかなか入り込むこともできず、時間がかかり成果に繋がらない。
ABM顧客とは?ターゲットアカウントとは?
ABMは、ターゲットとなる企業に対して、よりOneToOneのマーケティング活動を展開するBtoBマーケティング手法のことだ。この時、ターゲットとなる企業のことを「ABM顧客」「ターゲットアカウント」といった呼称をする。なお、ABM顧客は、「ABM活動で獲得できた実際の顧客」というような意味とも取れるが、本コラムでは、ABM顧客は、ABM活動でターゲットとなる企業のことと定義する。そして、ターゲットアカウントも同様の定義とする。
ABM顧客(ターゲットアカウント)には2種類ある!
ABM顧客(ターゲットアカウント)は、ALUHAでは、2種類あると考えている。1つ目は「特定企業名のリスト」のこと、そしてもう1つは「こういう企業を狙いたいという条件」のことだ。
ABM顧客(ターゲットアカウント)「特定企業名リスト」
「特定企業名リスト」とは、ABMの活動において、具体的にターゲットとなる企業名のことだ。企業名リストであるため、具体的なターゲットの社名がリストアップされる。
ABM顧客(ターゲットアカウント)「企業条件の定義」
「企業条件の定義」とは、具体的な企業名のリストを作成するのではなく、ターゲットアカウントとなり得る企業の条件を決めることをいう。例えば、業種、年商、従業員数、解決したい課題、役職、部門などを細かく条件として定義するイメージだ。BtoBマーケティングのターゲティングと同じ考え方になるが、ABMのターゲティングのほうが、条件が厳しい内容になる。
ABMの進め方手順
それでは、ABMを具体的に進める手順をご紹介する。ここでは、ALUHAが得意とする「企業条件の定義」を決めてからABM施策に展開する手順の概要をご紹介しよう。
ABM顧客(ターゲットアカウント)を確定する
ABMで最初にやるべきことは、ABM顧客(ターゲットアカウント)を確定することだ。これがなければ何もできない。具体的には企業条件を決めることになるが、どのように決めればよいだろうか?
最もわかりやすいプロセスの1つは、「優良顧客分析」だ。既存顧客の中でも売り上げの多い優良顧客をピックアップし、その優良顧客の企業規模や課題を分析し、共通項目を見出していくのである。そうすることで、企業条件を具体化できる。実際の優良顧客のデータをベースにしているのでエビデンスもしっかりしており、精度の高い企業条件を設定できる。
「優良顧客分析」は、最初に、企業規模の共通点を分析することから始めよう。優良顧客の社名はわかっているはずなので、WEBサイトや企業データベースなどの情報を確認しながら、従業員数、年商、事業所数など、企業の属性情報を具体化しよう。
次に優良顧客の課題分析だ。これはSFAなど商談管理ツールやCRMなどの顧客管理ツールが導入されていれば、そこに優良顧客の日々のやりとりが記録されているので、その中に課題の情報が眠っている可能性がある。そういった社内の情報を1箇所に集約し分析すると良い。
分析が難しい場合は、残念ながら優良顧客といえども課題が明確にできないため、満足度調査などを行い、ヒヤリング調査するしかないだろう。
ABM顧客(ターゲットアカウント)へのリード獲得・育成の施策を具体化する
ABM顧客(ターゲットアカウント)の「企業条件」が具体化できたら、リード獲得や育成の施策を検討する。「企業条件」の中には、「課題」のデータがあるので、その課題に合わせて、マーケティングコンテンツや営業提案書を作成すると良い。
具体的には、下記のようなイメージだ。
- 明確化した課題を解決するプロセスをまとめたホワイトペーパーの作成
- 明確化した課題を解決するプロセスをまとめたビジネスコラムの公開
- 明確化した課題を解決するプロセスを紹介するメルマガの配信
- 明確化した課題を解決するプロセスを紹介するセミナー
- 明確化した課題を解決できた成功事例コンテンツの作成
- 明確化した課題を解決するプロセスをまとめた営業提案書の作成
このように、企業条件の定義で明確になった課題に関連する各種コンテンツを準備し、ABMの武器にしていくのである。こういった武器がたくさん揃うと、さまざまなABM施策を展開することができる。
ABM顧客(ターゲットアカウント)にABM施策を展開
ABM施策の武器が準備できたら、ABM施策を展開しよう。「企業条件」に該当する名刺データがあれば、それらの名刺データをリスト化し、メルマガでコンテンツ配信することや、WEBサイトでホワイトペーパーを公開し、CV獲得を狙うといったことが可能だ。
さらに、具体的にアプローチしたい企業リストがある場合は、そのリストに対して、電話営業などでホワイトペーパーを案内するなどといった施策も効果的である。
つまり、企業条件を明確にした上で、ABM施策の武器となるコンテンツを準備できれば、電話やメール、DM、展示会、WEBなどさまざまな手法を用いてABM施策を展開できるようになる。
以上、ABMの基本的な考え方などを解説した。御社でもLTVの最大化やリソースの効率活用のため、ABMを導入されてみてはどうだろうか?
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