「静かな退職」って何?新入社員に知っておいてほしいこと はじめに/永嶋 泰子
INSIGHT NOW! / 2024年5月20日 7時8分
永嶋 泰子 /
はじめに
最近、職場での「静かな退職」という現象が注目されています。これは、従業員が最低限の仕事をこなすだけで、具体的には、仕事とプライベートを分け、仕事に対してやりがいなどを求めない働き方です。
多くの労働者が職場での充実感を失い、このような状態になっていることが、米国の調査会社ギャラップが公表したデータで明らかになりました。
「2023 State of the Global Workplace」では、世界の労働者の約59%が静かな退職の状態にあると指摘しています。
その中で、「打ち込んでいる」「打ち込んでいない」「積極的に関与していない」の3つに分類して調査が行い、「打ち込んでいない」に分類された人が、静かな退職の状態であると判断されています。
さらに、仕事への打ち込み度が低い人ほど、職場におけるストレスを感じており、「前日の仕事の影響で、1日の大半でストレスを感じている」と回答している人が44%もいるのです。
▼参照
『2023 State of the Global Workplace』 )
仕事に打ち込めない人ほどストレスが大きい
一見、仕事とプライベートを明確に分けることは人生に充実感をもたらすように感じられます。
静かな退職を選択している人は、なぜ1日の大半でストレスを感じざるを得なくなるのでしょうか。
それは、「誰かの役に立っている」という実感を持つことが難しくなるからではないでしょうか。
人は一人では生きていけません。常にだれかと助け合って生きています。
しかし、誰かの役に立っていると実感できない働き方では、人生に充実感を持つことはできません。
心理学者のマーティン・セリグマン氏は『フロー体験:幸福の心理学』で、他人のために何かをすることが個人の幸福感を高める要因であると突き止めています。
さらに、ソニア・リュボミルスキー氏の著書『幸せの科学』において、他人を助ける行為が自己評価を高め、ストレスを軽減し、幸福を増進させることが示されています。
これらの研究からわかることは、人が他人の役に立つことによって自己の人生に充実感を感じることができるということを証明しているにほかなりません。
私自身も、自分の経験から誰かの役に立つということが、幸福を感じる本質的なプロセスなのだと感じる出来事があります。
人生をONとOFFにわける難しさ
個人的な経験をお話させていただくと、結婚し子育てをすると仕事とプライベートに分けて考えるという概念を持つことすら難しくなります。
すべては24時間続いていて、その中で、自分がどう過ごすのかを常に優先順位をつけながら考える必要があるのです。
さらに、子育てをして感じるのは、結局のところ仕事も子育ても人とのコミュニケーションに尽きるということです。
子育てをする前であれば人間関係がうまくいかないことに悩んだりもしたものですが、子育てを経験する中で「そういうこともあるよね」と受け流せるメンタルの強さも身につけることができました。
つまり、仕事とプライベートと分けて考えるからその配分に悩むのであって、仕事もプライベートも人生の一部だと割り切ってしまえば、人生全体を楽しむことができるようになります。
人生そのものを楽しむ方法
ONとOFFを分けずに人生そのものを楽しむ方法として私がおすすめする方法があります。
それは、自分のビジョンを持つということです。
ビジョンという言葉から、多くの方は「大げさな」とか「ビジョンなんてない」という反応をします。
ビジョンとは、日々の中であなたが何を大切にし、何を目指しているかというシンプルなものです。
ビジョンを見つける効果的な方法
さて、ここまででビジョンがシンプルなものだと気づかれたと思います。
次は、あなた自身のビジョンの見つけ方。
せっかくなので、ビジョンを見つける質問をあなたにお届けいたします。
まずノートとペンを準備してあなたの“ビジョン”をノートに書き綴ってくださいね。
そして、ビジョンを見つけたときに気づくはずです。
仕事とプライベートを分けて考えることの必要性はない、と。
しかし、1日8時間という労働時間を「静かな退職」という方法で消費するのは、結果的に人生を無駄にしているとすら思えるのです。
ビジョンを実現するためには、1万時間の法則を活用することも有効です。
あるスキルを習得するためには約1万時間の練習が必要だとする理論ですが、仕事の時間を有効に使い、スキルを磨くことで、ビジョンに向かって前進することができます。
また、会社での失敗は個人事業や経営とは異なり、命取りにはなりません。
会社の環境をいかして、いろんなことにチャレンジしてみてくださいね。
2023年版「グローバルワークプレイスの状況」レポートによると、全世界の労働力の59%が仕事に不満足である「静かな退職」現象に関する重要な調査結果が示されています。報告書では、不満足が生産性だけでなく、従業員の感情的・心理的幸福にも影響を及ぼしていることを指摘しており、その世界的なコストは年間8.8兆ドル、GDPの約9%にも上ると推計されています。
まとめ
「静かな退職」とは一見、合理的な考えであるように思えます。
しかし、人間は合理的に生きられるものではありません。
私たちは、自分自身にとって価値ある生き方を見つけ、職場を含めた生活のすべての時間をつかってどん欲に追い求めるすべきです。
そのためには「将来、こうなりたい」という明確なビジョンを持つことから始まります。
すると、日々の8時間がどれほど価値あるものになるか、あなたは心から実感することができ、イキイキとした人生を過ごすことができるはずです。
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