人材は投資。経営者が知るべき現代の採用事情(2)/永嶋 泰子
INSIGHT NOW! / 2024年6月3日 6時55分
永嶋 泰子 /
さて、前回は「採用とは投資」である理由についてお届けいたしました。
すでに人材市場は買い手市場から売り手市場に移っています。
これからの時代、労働力は限られた資源であり、その資源をどのように活かすかを考える必要があります。
たとえば、あなたの会社では20代を対象に求人を出したのに応募者は50代、60代ばかりという経験はないでしょうか。
現在の日本では、少子高齢化で人手不足が顕著になっています。
20代を採用したいと思っても、そもそも若手が激減しているのが現状です。
過去の経験に基づく誤った判断の危険性
たとえば人手不足を感じる場面として、鉄道やバスなどの公共交通機関では運転手が足りずにダイヤが減便になるという現実があります。
大阪府の金剛自動車株式会社では、ドライバーの不足によりバス事業を終了することになりましたし、首都圏を運航している京浜急行バス株式会社は、ドライバー不足対策として車両内広告を活用し、情報セッションの参加者数を倍増させました。
▼参考
Bus Companies Suffering Shortage of Drivers in Japan - The Japan News (yomiuri.co.jp)
人手不足によりバス事業が終了すると、15年前は誰が想像したでしょうか?15年前といえば、採用市場においては買い手市場でした。求人を出せば、当たり前に応募があった時代です。
ですが、日本は人口減少に突入しています。
リクルートワークス研究所の調査によると、2023年における企業の必要な採用人数を確保できなかったが58.5%だと報告されています。
▼参考
中途採用実態調査(2023年度上半期実績、2024年度見通し 正規社員) (works-i.com)
中小企業の取り組むべき課題
しかし、多くの経営者は「人手不足」の認識が薄いようにも感じられます。
なぜなら、中途採用市場や新卒市場においても、15年前と変わらない採用方法が用いられているからです。15年前と同じ方法では、現代の労働市場の変化に対応できず、効果的な人材確保が難しくなっています。
15年前と同じ採用方法とは、新卒で言えば採用エージェントを通じて採用サイトと契約し、就活イベント等に出店、まずは母数をたくさん集めるという方法です。
この方法は、確かに知名度のある大手企業では有効です。
しかしながら、母数だけを集めても、渇望する人材に出逢えるとは限りません。
それでも、大手企業がこの方法を使うのは、採用専門部署を持ち採用に年間数千万円単位の資金を投入できるからです。
一方で、専門部署を持たず、資金に限りある中小企業はどのような採用戦略を取るべきなのでしょうか。
まずは人材市場が買い手市場から売り手市場に移っている現実を知ることです。
「何を当たり前のことを」と思われるかもしれません。そう思われる、あなたの気持ちもわかります。ですが、人の意識というは悲しいかな、すぐに変わるものではありません。
私自身、40代で転職を経験し多くの中小企業を受けた経験があります。そこで感じたのは、選考スピードの遅さでした。
中途採用は、応募者が複数の会社を受けていることは当たり前であり、内定が早く出た企業に決める傾向にあります。
まさにスピードが命です。ですが、選考に1ヶ月かかることもめずらしくありませんでした。
この採用方法は、15年…いや20年前とまったく変わっていません。
人は過去の経験に基づいて誤った判断をしがちだからです。
中小企業だからこそ、チャンスがある
リクルートワークス研究所の古屋星斗氏によれば、大手企業に就職した大卒新卒の離職率の割合は、近年上がっているといいます。
▼参考
古屋星斗. ゆるい職場. 中公新書ラクレ.2022.
福利厚生や年収が充実している大手企業にステータスを感じる若者が減っているのです
中小企業にとっては大きなチャンスです!
大手にはない魅力を伝えれば、福利厚生や年収が劣っていても興味を持ってくれる可能性が開けるからです。
会社の魅力を引き出すための戦略
それは、あなたの会社が当たり前だと思っていることを言語化し打ち出していくことです。
おそらく、日々の業務や仕事を得ることにフォーカスしてそこまで手が回っていないのが現状だと思われます。しかし、あなたの会社が本当に魅力をアップすることができれば、「あなたの会社で働きたい」と思ってくれる求職者があらわれるのです。
ほれ込んで受験する人がいれば、たくさんの応募者を集めなくても本当に欲しい人材を得ることができます。しかもその人はあなたの会社のビジョンに共感しているため、入社後にギャップを感じることも少なくなります。
大手企業も離職率が上がっているとはいえ、手をこまねいているわけではありません。なぜならば、社内企業や社内副業という名目で優秀な人材が辞めないように打ち手を講じているからです。
具体例
富士通株式会社
社員が社内で副業や起業を行う「フューチャーセッション」と呼ばれるプログラムを導入しています。このプログラムでは、社員が新規事業のアイデアを提出し、選ばれたプロジェクトには資金やリソースが提供されます。こうした取り組みは、社員のエンゲージメントを高め、新しいビジネスチャンスを創出することを目指しています。
▼参考
Fujitsu Innovation Circuit : 富士通
未来へのステップ
すでに人材市場は買い手市場から売り手市場に移っています。過去の経験に固執せず、現実を知ることが重要です。これからの時代、労働力は限られた資源であり、その資源をどのように活かすかを考える必要があります。
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