【インサイトナウ編集長対談】小さな積み重ねこそが目標達成に近づく/INSIGHT NOW! 編集部
INSIGHT NOW! / 2024年6月3日 16時0分
INSIGHT NOW! 編集部 / インサイトナウ株式会社
お相手:永嶋泰子(目標達成コーチ)
目標設定とは、自分の中でこうしたいと思うことを手帳で言語化して、日々積み重ねていくこと
猪口 永嶋さんの目標設定のメソッドはどのようなご経験から作り上げたのでしょうか。
永嶋 「自分自身のありたい姿に向かう」ということを知ったのは、30代前半にリクルートに転職して人材開発に関わっていた頃です。そこで仕事として組織作りをしていた時に、ありたい姿に向かっていく方向があることに気づいたのがひとつです。
2つ目は、33歳の時に生後29日で娘を亡くした経験をしたことです。とても大きな出来事でした。どん底で自分が本当はどうしたいのかを考えた時、もう一度お母さんになりたいと思いました。その後妊娠したのですが、今度は切迫早産で5カ月間管理入院することに。入院中は寝ているだけで、できることも限られています。自分のメンタルを保つため、出産予定が春頃だったので、桜が咲くまで頑張ろうと思うようになりました。それから頭の中で、無事に赤ちゃんを産んで、主治医やお世話になった助産師さんに「ありがとうございます。おかげでこんなに元気な赤ちゃんを産めました」とお礼を言っている姿をイメージしました。すると、イメージどおりに出産することができたのです。人はどん底であっても、そこから自分なりに希望を見出していけば、そのとおりに進むことができるのではないかと気づいたのがその時でした。
その後広島に引っ越したのですが、また東京に戻りたいと思った時、私のメソッドにもっとも影響を与えた、『12週間の使い方』(ブライアン・P・モラン 、マイケル・レニントン著)という本に出会います。この本を読んで、私が娘を亡くしてどん底から立ち直った時のプロセスと似ていると思いました。こうありたいというビジョンを持って、それに向かって日々どのような行動をしていくのか考える。それで気づいたのです。目標設定とは、自分の中でこうしたらいいと思うことを手帳で言語化して、日々積み重ねていくことであって、その繰り返しの先に自分のありたい未来が叶うのだと。
猪口 日々の繰り返しこそが重要だと。
永嶋 ほとんどの方はおそらく、目標をクリアするためには何か大きな行動をしないと達成できないと思っているかもしれませんが、実は違います。私は41歳で広島から東京に正社員で転職しました。子どもがいて転職するのはかなりハードルが高く、しかも地方から東京だとなおさらです。その中でまずは面接官の目に留まる履歴書を書くためには、自分の経歴を相手に分かりやすく伝えることが大事だと考えました。例えば、分かりやすいキャッチコピー作り。とはいえいきなりは作れないので、雑誌でいいなと思ったキャッチコピーがあったら書き留めて、履歴書に活かせないかを考える。その繰り返しをしていく中で、書類選考が10通出して0だったのが1割に上がり、東京に呼ばれるようになり、面接に行き、内定をいただくことができました。そのような小さな積み重ねこそが目標達成に近づくのです。
猪口 それを他の方々が実践できるようにメソッド化したわけですね。永嶋さんのメソッドはコーチング的なスタイルで一緒に目標を作っていくのでしょうか。
永嶋 皆さんそもそも計画を立てること自体に慣れていませんので、マンツーマンで「ビジョンって何?」というところから始めます。お客様は30、40代の女性で、フリーランスや会社員で働いている方が多いですね。
猪口 永嶋さんがサラリーマンをされていた頃とこの10年で状況は変わっていますか。
永嶋 変わったと思うのは、コロナ禍を経て、先々このままではいけない、同じ状況が続くわけではないと皆さんひしひしと感じていて、あとは経済的な不安を抱えている方が増えていると思います。
猪口女性のお客様が多いということでしたが、女性のほうが危機感をお持ちで、上昇志向もあって、何とかしようと思っている方が多いのでしょうか。
永嶋そう思います。特に女性は子育てを通じて、子どもの学費がかかるというような切迫した経済的な不安が大きいですね。これからの方もいれば、すでに学費がかかっている方もいて、会社員だけでは賄いきれないので、他にも自分が役に立てることをしたい。それで、まずビジョンを持って、目標を設定して、売上や人脈を作っていきたいという方が多いですね。
男性だと学費の話はあまり出ません。一緒に子育てをしていても、具体的な金額や将来の不安はあまり出てこないような気がしますね。一方で男性は将来への不安が薄い分、今にコミットする力強さをすごく感じます。
目標をいつまでにやるか決めて、書き出し、それを眺める時間を作る
猪口 永嶋さんのメソッドについて少しご紹介いただけますか。
永嶋 私のメソッドでは、「あなたが死んだ時に、本当に良い人生だった、送りたかった人生だったと思えるか」というところから、まずは制限なしにご自身のビジョンを思い浮かべていただきます。
ビジョンとは人生の迷子にならないための地図です。ハワイに行きたいと思っていても、その思いが具体的になっていないと間違えてアラスカに行ってしまうかもしれません。「まずは自分がどこに向かいたいのか」を決めるのがビジョンで、目標を決めるのはその後です。
ビジョンが決まれば、自ずと10年後、5年後、3年後にしないといけないことも決まります。目標をまとめて、そこから今年1年でやろうと思っていたことを3カ月でやれるように一緒に走っていく。これが「3カ月で夢を実現できるメソッド」です。3カ月にしたのは、1年では長くて目標を忘れてしまうからです。目標を忘れる前にどんどん実行していけば、成功も失敗も全部自分の中にフィードバックとして返ってきます。その中からもっと良くできると思うことを日々積み重ねていけば、3カ月後にはあなたが願っていた夢、目標が実現します。
猪口 先ほど雑誌を見てキャッチコピーを勉強するというお話がありましたが、そのような方法論としてのアイデア出しはありますか。
永嶋 このメソッドでは、目標を立てる前に静かな場所で1時間半くらい時間をとって、できる、できないは考えずに、目標を達成するために必要だと思う行動を最低10個3分以内に書き出します。その中から、目標に最短で成果が上がると思うことを1つか2つに絞って、まず3カ月やっていきます。これがポイントです。
猪口 社員であれフリーであれ、達成しなければならないというプレッシャーを皆さんお持ちだと思います。しかし、達成するために具体的に何をするかというところで、方法が見つからずに諦めてしまう。今おっしゃった10個を書き出す作業はそのヒントになりますね。
永嶋 アイデアが浮かばなければ本を10冊乱読してもいいし、今はAI、たとえばチャットGTPという良いアイテムもあるので、ある程度行動を出してもらってそこから選んでいくのもありです。AIだと、自分が本当にできる、できないではなく、問いに対して自分が思いつかなかったことを言ってくれるので、AIを使うのはいい手だと思います。
猪口 確かに自分の中にバイアスかかっていますから、そういう意味ではAIは制限を取り払えますよね。
永嶋 おっしゃるとおり、自由に考えていいですよと言われても人はなかなかできません。そこをAIに委ねると、できる、できないではないところで出てくるので、チャレンジするという意味ではすごくいいと思います。
猪口 ポイントは、3カ月間の中で日々いかに決意を新たにし、行動を考え、行い、振り返るかに尽きるような気がします。毎日のマネジメントはどのようにされるのでしょうか。
永嶋 私の場合、3カ月の目標を立てる時にフランクリン・プランナーの目標設定用紙を使っていますが、これでなくてもかまいません。まずは目標を記入し、3カ月でやりたいことを書き出します。やりたいことの中には毎日やることもあれば、1回で終わることもあります。例えば「MBAを取りたい」という目標であれば、「通いたい大学の資料請求をする」のは1回で終わることです。MBAに通い始めたら、「毎日課題をこなす」のはデイリーでやることかもしれません。そんなふうに、1カ月に1回、1週間に1回、毎日というようにやるべきことを細分化して、3か月の目標を書いていきます。
1週間のうち1時間半の中で、1週間の計画を書き出し、前週の振り返りをしつつ、計画を立てた中でできなかったことをやる時間に充ててもいいわけです。そのようなマネジメントをしています。人は忘れる生き物なので、朝に決意しても夜には疲れて忘れてしまいます。できれば時間がある時に、例えば朝の通勤時に手帳を開いて確認すれば1分で終わります。
フランクリン・プランナーの目標設定用紙がいいのは、自分がどのような思い、どのようなビジョンで3カ月を過ごしていくか書けるところです。人には、締め切りが決まるとそれに向かってやっていくという脳みその機能があります。目標をいつまでにやるか決めて、書き出し、それを眺める時間を作る。これに尽きると思います。
猪口 人は忘れますし、それに、書いたことを実行したら状況がまた変わりますよね。そこで新たに何か出てくる可能性も高いですし、「だったら違うことをやろう」といった変更も出てきます。そこは柔軟に考えていいですよね。
永嶋 おっしゃるとおりで、日々やっていくと、ここを改善したらもっと良くなるのではないかということが出てきます。私が履歴書で目立つキャッチコピーを考えた時も、最初は書き写して似たようなキャッチコピーを書いていたのですが、さまざまなことに気づき改善していった結果、書類の通過率が上がりました。日々改善していくわけです。「こうしたら楽しいかも」という感じでどんどん出てくると思います。
あとは、1週間の振り返りをする時に、1週間でやると決めたことがどれくらい達成できたか確認します。例えば今週8個の項目をやると決めて5個できたら、だいたい70%の達成率です。たくさん達成できた時はやりがいがあってもっとやりたいと思えるようになるし、それが励みにもなります。これは個人的な感想で推測ですが、達成率が85%を超えると、自分の内面で自己肯定感が上がりました。それによって周りに与える影響力、周りからの評価も上がっていくような実感がありました。そうすると夢の実現率が変わってくる。夢が近づいてくるパーセンテージが上がってくるのです。
採用側に特化した人事システムで何かお手伝いしていきたい
猪口 お客様のお手伝いをされる中で、永嶋さんの中での変化はありましたか。
永嶋 女性だと特に、売上を上げることを目標にして苦しくなってしまう方がいます。ビジョンであれば売上を上げた先にどのような未来があるかを考えるので、例えばお客様を幸せにする、家族みんなで旅行に行くなど、すごくワクワクして話す方もいます。今まで私がいくらビジョンだと発信しても、そもそもビジョンが日常に浸透していない言葉であまり通じていなかったようです。ビジョンは夢と置き換えてもいいかもしれません。お客様と関わる中で、まずは大人がそれを持っていいんだということを、もっと私自身が発信していかなければいけないという気づきがありました。
猪口 永嶋さんにご相談に来られる時点で前向きさといいますか、肯定感を持たれた方がいらっしゃるでしょうから、より早いし、より良くなりやすいですよね。
永嶋 お客様には、会社員をしながらボランティアで中高生向けの活動に取り組んでいる方がいます。その方が会社で資料作りを褒められたという話を聞いて、その強みを活かして、親御さんにも見ていただけるようなテキストを作ったらどうかと提案しました。作ってみた結果、親御さんがこんなにしてくれるのかと思ってくれるようになり、その先生に対しての距離感が縮まったそうです。さらに、資料という現物があったことで、こういうことをしてくれる先生がいると、他の学校にもその方の認知が広がるという嬉しい誤算もありました。ビジョンを持って、目標を立ててコツコツと、なおかつ自分が当たり前にできることをコツコツと積み重ねていった結果このような成功を収めたのです。
猪口 今まで仕事と趣味で完全に分かれていたものが、そこに第3の案が生まれたわけですね。
永嶋 そのとおりです。仕事と趣味がつながって相乗効果を生み出しました。
猪口 なるほど。永嶋さんが教えられる中でそのような気づきがたくさん生まれてきそうですね。
永嶋 ある女性が、写真を通じて保護者と保育者がつながるようなビジネスを構築していきたいという思いをお持ちでした。その方も自分のビジョンに気づいていなかったのですが、「あなたは10年後どんなふうにやっていきたいですか」と聞くと、ありありと思い浮かんだようです。3カ月伴走させていただいた結果、一緒にお仕事をするビジネスパートナーが見つかり、今は独立して個人事業主として活動されています。
猪口 今後の計画をお聞かせください。
永嶋 自分自身が子どもを持ちながら会社員として転職活動をした経験と、リクルートやその前の会社で人事として人材育成や採用に関わっていろいろと見てきた中で、もちろん独立したい、起業したいという方も多いのですが、その一方で会社に属して仕事をしていきたい方もいます。今の人材不足がある中で、今後の課題として、介護等で離職した方、ブランクがあって再就職したいと思っている方が中小企業とうまくマッチングできるような、採用側に特化した人事システムで何かお手伝いしていきたいと思っています。
採用において、経営者側にはまだ人手がたくさんあった時代のイメージがある方が多いような気がします。採用スキームやスケジュールも以前のままで、これでは最悪候補者を逃してしまうかもしれません。未だに母集団を集めなければいけないと考えている方も多いので、そこではないよと。お互いにWin-Winになるような、幸せな転職や就職ができる仕組みづくりをお手伝いしていく方向に持っていきたいと思っています。
猪口 そこでも一つのメソッドを組み立てて、コンサル商品として作っていかれる感じですね。
永嶋 採用は目標設定とかなり親和性があるのでそこを活かしながら、また、入社した後の人材育成においても、目標設定というのは個人に対しても会社に対しても使えるところがありますので、応用していけたらと思っています。
猪口 いいですね。永嶋さんの益々のご活躍が目に浮かんできます。本日はありがとうございました。
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