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調達部門に必要な人材を考える/野町 直弘

INSIGHT NOW! / 2024年7月3日 10時0分

調達部門に必要な人材を考える/野町 直弘

野町 直弘 / 調達購買コンサルタント

先日、長いお付き合いをさせていただいている製造業の調達部長さんと話をしていて、気が付かされることがありました。元々、その方と知り合ったのは、私が発起人となった購買関係者の集まりだったのですが、その部長さんは、最近はそういう会合に参加していないということで、その理由を伺うと、「購買のテクニカルな話が中心であり、あまり興味がわかない」ということだったのです。従来はテクニカルな話を聞いたり、意見交換したりする場も貴重だったのですが、その部長さんのニーズは部門マネジメントや会社内での立ち位置などの事例になっていったようでした。

調達購買人材を専門職として捉え、育成を図っていこう、という流れは2007~8年位から出てきました。私が研修で講師を始めたり、様々な調達購買研修が出てきたのも、その頃と記憶しています。このように初期の頃は調達購買人材に外部研修を受講させましょう、からスタートしました。また、日本能率協会さんがCPPの資格をスタートしたのもこの時期でした。

2012年頃からは、人材育成マネジメントという考え方がでてきたのです。人材育成マネジメントとは、調達購買の専門職人材に必要な各企業ごとのスキルマップ(求められるスキル)を定義し、スキルマップのアセスメントを定期的に行い、不足しているスキルを明確にした上で、研修などのオフJTと実務などのOJTや事例共有会、勉強会などで、個人別のスキル育成を図っていくものです。人材育成マネジメントは、今でもニーズが高く、多くの企業がこのような仕組みづくりを導入し進化させています。

このように調達購買部門の人材育成は進んできました。
一方で、特に近年調達購買部門に求められる役割、機能は多様化しています。CSR評価、人権DD、カーボンニュートラルやバッテリーパスポートなどの環境対応、様々な地政学リスクの顕在化や震災などの事案の発生、コロナ後に発生したサプライヤ供給力不足や川上サプライヤとの力関係の変化など、対応すべき課題が年々増えており、また複雑化してきたのです。

このような時代には、従来の調達購買プロフェッショナルだけで部門運営をするには限界が来ています。

多くの日本企業では、調達購買部門は、部門でキャリアを形成する人材が多いようです。いわゆるプロパー人材で新入社員もしくは、若手の頃から、ずっと調達購買部門に従事してきた人材になります。

一方で、調達購買部門長は、必ずしも調達購買プロパー人材がついているとは限りません。企業によっては、営業職経験が長い人や、エンジニア、研究職から部門長に、所謂落下傘的に就いている方も多くいらっしゃいます。最近は、このような部門長だけでなく、様々なバックグランドを持つ専門的な人材が、ローテーションやキャリアの一つのステージとして、異動し、部門長の部門マネジメントを支援しています。

具体的には、DXに専門性を持つ人材や、サステナビリティに専門性を持つ人材、法務人材などです。それと共に調達購買プロフェッショナルの捉え方も変わってきました。

従来の調達購買プロフェッショナルは、部門人材の専門性を高めるものと位置づけられましたが、現在は、それぞれのキャリア層のベーシックな共通スキルとして求められています。それぞれのキャリア層とは、専門職化した調達購買スペシャリストキャリアと、部門のマネジメントを担うマネジメントキャリアと部門マネジメントを支援するような、DXやサステナビリティなどの新しい専門スキルを持つ人材などが位置づけられ、このような多様な人材が部門運営に必要となってきているのです。

このように、より多様化したキャリアの設定と専門スキルを持った人材なくしては、変化が激しく、複雑化した調達部門のマネジメントが行き届かなくなってきました。このような事実に気がつきはじめた一部の日本企業は、キャリアの設定と専門スキルを持った人材獲得に動き始めています。

人材獲得では、社内他部門からの異動だけでなく、キャリア採用による人材獲得も多くの企業で積極化しているようです。とある企業では調達購買人材の中途採用を積極化し、そういう人材が新しい風になっていることを聞きました。このように、社外からの獲得も一つの重要な手法です。

一方で、社内からの人材獲得については、より重要なことを考える必要があります。それは、「キャリア形成における調達購買部門の経験の重要性」です。例えば、調達購買部門を経験すると、こんな能力が身に付く、とか、こういう社内外でのネットワーク形成が図れる、とか、このような情報源を見つけることに有利になるなどです。つまり、調達購買部門に異動することが、その人のキャリア形成において有利に働く、ことがポイントになります。また、それを社内で共通の認識にさせることです。

私の知る一部の企業では、調達購買部門を登竜門として、部門の経験をしないと、偉くなれない、といった企業(特にルール化されていませんが)も知っています。ここまでやる必要はないかも知れませんが、一般的には、調達購買部門の経験はキャリア形成における意味のある経験であり、スキル形成につながることは十分に考えられるでしょう。あとは、それを社内全体に浸透させ、多くの専門スキルを持った人材を集められる準備をしておくことが、これからの調達購買部門の人材獲得、人材育成に役に立っていきます。

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