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【インサイトナウ編集長対談】「日本のどこかに自分の応援を受けて頑張っている子どもがいる」そんな社会になってほしい/INSIGHT NOW! 編集部

INSIGHT NOW! / 2024年9月27日 8時30分

【インサイトナウ編集長対談】「日本のどこかに自分の応援を受けて頑張っている子どもがいる」そんな社会になってほしい/INSIGHT NOW! 編集部

INSIGHT NOW! 編集部 / インサイトナウ株式会社

お相手:山田翔吾様
一般社団法人ティーンエイジャービジネス協会

学校の勉強ではない何かを教えよう

猪口 ティーンエイジャービジネス協会の設立の経緯を教えていただけますか。

山田 ティーンエイジャービジネス協会は10代限定のビジネス教育専門機関です。成り立ちからお話しすると、2022年に一般社団法人として設立したのですが、それ以前の2015年にリアライズという株式会社を設立していて、そこから派生するかたちで別法人を作って始めました。

猪口 リアライズさんでも近いようなビジネスをされているのですか。

山田 リアライズも同じで、子ども向けのビジネス教育でスタートした会社です。そもそもリアライズを設立したのは、大学時代に都市環境というまちづくり系の学科を専攻していたことがきっかけでした。ある時、街づくりとは、そこに住む人間の関係性をつくることだと気がつきました。その関係性をつくるためにどのようなことをしたらいいのか、さまざまなフィールドワークを行って、最終的に教育に行き着きました。「街づくりは人づくり」とよく言われますが、そこで人づくりにシフトしたことが教育に関わるきっかけになりました。

大学卒業後は知り合いの学習塾に就職しました。中学受験の塾で、小学5、6年生の子どもがギチギチのスケジュール表を作って勉強していました。ある時、夏期講習中に6年生の女の子が吐いてしまったことがあったんです。それ自体はよくある話なのですが、他の子どもたちも女の子自身も、そんなことよりも目の前の課題を片付けなければと、みんな全然動じない。このままでは人格に影響を与えてしまうと思いました。勉強を教える教育だけでは限界があると実感したのです。

その後塾を辞めて、学校の勉強ではない何かを教えようと決めたのが24歳の時です。とりあえず会社を作ろうと思ったのですが、お金もないし経験もないので、武者修行としてそこから5年間不動産営業をやりました。営業力を身につけたかったのと、お金を用意したかったからです。それからリアライズという会社を設立したのが2015年29歳になった時です。

猪口 リアライズさんは設立してもう10年になるのですね。リアライズさんとティーンエイジャービジネス協会さんは一体で動いているのでしょうか。

山田 一般社団を作った経緯をお話しすると、リアライズで作ったさまざまな自社コンテンツがある程度まとまってきたところで、それをパッケージ化してフランチャイズのような形でいろいろな人にやってもらおうと思って立ち上げました。リアライズとしてではなく、社団としてやったほうがいいのではないかと思いました。

猪口 今、社団法人をビジネスに活用しようと志向する方や、それを指南する方々もけっこういらっしゃるので、そこは皆さんが聞きたいポイントかもしれませんね。実際にやられてみて、株式会社と社団法人の運営は何か明確な違いはありましたか。

山田 学校や保護者に対してやりやすい面があるのと、寄付金を集められるのは大きいですね。クラウドファンディングのような感じで集めやすくはなると思います。実際、私たちが開催しているビジネスキャンプというプログラムに参加しているのは、経営者のご家族が多く、子ども向けに新しい事業を起こすのであればお金を出すよと言っていただいています。

猪口 参加者の親御さんには経営者が多いのですね。収入もあり、教育にも熱心だということでしょうか。

山田 単純に参加費用の設定が高めなのと、プログラムが平日も含めて金土日の開催なので、ある程度時間の自由が利くご家庭であること。あとは学校の勉強だけではこの先無理だと肌で感じているのは、やはり経営者の方が多いですね。

ただ、今年は7月と8月に全国で5回ぐらいイベントを開催したのですが、一般の会社の方が増えてきて半分ぐらいの割合になりました。裾野というか、意識が変わってきているような感覚はあります。イベントにはリアライズが開催しているものとクライアントが開催しているものがあって、それをまとめているのがティーンエイジャービジネス協会です。

猪口 クライアントさんが開く場合、ビジネスの仕組み的にはどのような形になるのですか。

山田 ほぼフランチャイズのようなものと思っていただければ分かりやすいと思います。いろいろなイベントのパッケージが用意してあって、それを使ってもいいし、独自にアレンジしてもらってもいい。その準備や集客、組み立てを協会がサポートします。

子どもたちは一人残らず自分で何とかする力を持っている

猪口 ホームページを拝見すると、次のイベントは「本物に挑戦!EC販売実践コース」ですね。

山田 この講座ではアマゾンで利益を上げる体験をします。昨年から動かしているグループもあって、その子たちはけっこう頑張っていますよ。

猪口 子どもたちは何歳くらいが多いのですか。

山田 メインで頑張っているのは小学生が多いですね。

猪口 そんな体験が小学生でできたら楽しいですね。SEO対策やリサーチなど、通常のマーケティングのようなことをきちんと学ぶのですね。

山田 ビジネスに必要な基礎が全部詰まっています。自分の商品を自分で売って、悔しい思いもしながら物販ビジネスを学んでいきます。

猪口 保護者会もあるのですね。

山田 この講座には保護者の理解が必須です。仕入れにいきなり20万円を使うこともありますし、それが売れる保証もちろんありません。その結果売れている商品もあって、毎月の受講料以上に稼いでいるので、今はその子はホクホクです。

猪口 この活動を始めてみて、最初の予想と違っていたことはありますか。

山田 「やっぱり子どもたちはガッツあるな」と感じますね。私たちは全般的にあまり教えません。ECはさすがに教えることが多いですが、ビジネスキャンプでは最低限の情報だけを与えて、あとは自分たちで好きに考えて、好きに行動してもらっています。当然うまくいかずに泣く子も出てきますが、それでも2、3時間放っておけば勝手に立ち上がって、いつの間にか頑張っている。彼らは一人残らず自分で何とかする力を持っているのだと、常に実感していますね。

例えば「ジュニソロ!(ジュニア・ソロ・アクティビティ)」は、子どもたちの「自立心」を育む子どもソロキャンププログラムです。「みんな仲良く」を強制しないのがコンセプトで、ソロで頑張るようにしたところ、最近すごく増えている、学校にいまいち馴染まない子どもたちがけっこう来ています。ちなみにキャンプイベントは、蓋を開けてみると、不登校やオルタナティブスクールに通っている子どもが毎回半数ぐらいいます。学校に行っていない子、学校以外の場所に行っている子、海外の学校に行っている子もいる。不登校だから元気がないかというと、逆にものすごいエネルギーがあって、それを学校だと解放できないからつまらなくて行っていない。そういう子が今はすごく増えています。

猪口 山田さんが最初に勤めた学習塾で、勉強を教える教育だけではもうだめだと感じたとおりですね。イベントにリピートで来る子どもたちもいますか。

山田 リピーターはすごく多いです。リアライズで毎年開催している無人島でのビジネスキャンプは、キャンプをしながら経営ビジネス体験をするプログラムです。2021年にリアライズが始めて、今はプログラム化していろいろな会社にやってもらっています。毎年夏に開催していて、今年はリピート率が約65%でした。しかも昨年12月の段階で席が埋まってしまったので、慌ててもう1日増やしました。

猪口 具体的にはそこでどのようなビジネスが発生するのですか。

山田 食べ物を売る子が一番多いですね。2022年のキャンプでは、よく分かっているリピーターの子が一番簡単なドリンクから始めました。ビールを仕入れて、ビールを売りながらお金を貯めて、サウナを購入。そのサウナで入場料を取って、さらにお金が増えてきたら、2日目の夜に音響設備付きのステージを買ってDJイベントを開きました。大人は自分の子どもを手伝ってはいけないのがルールですが、他の子に雇われることはできので、大人を雇って、仕事をさせて、自分は海で遊ぶ子も現れます。これをやりなさい、あれをやりなさいとは言わないので、働いてガッツリ稼いで遊ぶ子もいれば、ダンスイベントをやっている傍らで、人が集まっているからチャンスと言って、自分は遊ばずに仕事をする子もいます。

猪口 親同士も仲良くなりそうですね。

山田 仲良くなりますね。同じような疑問を今の社会に抱いている人たちなので、その辺が話せるようです。

猪口 社会への疑問というのは、学校の勉強だけだとなかなか生活力がつかないし、将来に向けて身につける能力も足りないということですか。

山田 そうですね。基本的に私たちはそのスタンスですし、いらっしゃるお客様も全員そうです。

猪口 ティーンエイジャービジネス協会さんのホームページは見やすくて、デザインもいいですね。

山田 そこは必須ですね。子ども向けのイベントを開催するとき、一番大変なのは集客です。ですから、本部として集客にはかなり力を入れています。扱っているのがわりと高級品なので、適当なランディンページにするわけにはいきません。

やる気さえ出せば子どもたち全員が天才

猪口 ウェブサイト戦略は山田さんご自身で勉強されたのですか。

山田ここは不動産会社での5年間の武者修行の成果が出ているところですね。先ほどのEC販売の講座も、なぜやっているかといったら、自分たちが7、8年にわたってECを運営してきたからです。釣りの道具をオリジナルで作ったり仕入れたりしながら、かれこれ7〜8年間販売しています。

猪口 なるほど、リアルなノウハウがあるわけですね。

山田 インターネットを通じて何かのサービスを売ることに関してはそれなりにやれることが多いので、その辺が集客にも出ていると思っています。

猪口 テーマもいいですね。先ほどのEC販売も、親御さんも子どもたちも興味を持つテーマです。

山田 親御さんのほうが興味を持っていますね。

猪口 あわよくば自分もと思う人もいるのではないですか。

山田 いますね。なので、子どもの考えには口を出してはいけないけど、自分自身が参加する分にはOKですよとお話ししています。最初は、こんなに難しいことを小学生ができるのかと思っていました。ところが今や何の抵抗もなく、毎週の売上データと広告データを見て、次どうするのかを決めているのです。

猪口 すごい。子どもたちは優秀ですね。

山田 やる気さえ出せば子どもたち全員が天才です。やる気にさえなってくれれば、あとは勝手にいろいろなことを吸収してとんでもないことをしてくれます。

猪口 すぐに辞めてしまったとはいえ、子どもたちとの付き合いが最初にあったからこそ、山田さんはその辺のセンスが高いのでしょうね。子どもたちの気持ちも分かるし、先生をされたご経験もありますし。

山田 それもありますね。プログラムは全部ゲーム形式で作っているので、それも大きいと思います。僕自身ゲームが大好きでよくやるのですが、ゲーミフィケーションといって、面白おかしくやればだいたい何でも前向きに勉強してくれます。会社を起こした2015年頃に初めて作ったのがスマイルゲームというボードゲームです。当時アメリカからゲーミフィケーションという、ゲームを使って人々を動かそうという考え方が入った頃で、興味を惹かれてこのゲームを作りました。スマイルゲームは経営や経済、お金について楽しみながら本格的に学ぶことができるボードゲームで、今年の8月には第18回キッズデザイン賞を受賞しました。キッズデザイン賞は子どもや子どもの産み育てに配慮した製品・サービス・空間・活動・研究を対象とする顕彰制度で、ざっくり言うとグッドデザイン賞の子ども版のような感じです。

子どものサポートができるような仕組みをつくりたい

猪口 今後はどのようなことを考えていますか。

山田 今後の予定としては、今まではビジネスキャンプとスマイルゲームの2枚看板だったのですが、そのバリエーションをもっと増やしていきたいというのが一つあります。これはすでに始まっていて、11月には三重県で、鹿を罠にかけて、解体して、食べて、最終的に商品にして売ろうというキャンプを開催します。

あとはやはり実際のビジネスをどんどん経験してもらいたいですね。今やろうとしているのがEC販売でのオリジナル商品作りです。バッグなどの布製品であれば300〜400個でオリジナル商品が作れて、50〜60万円ぐらいのお金が必要になります。クローズドなクラウドファンディングでお金が集まる仕組みを作りたいと考えています。大人にとっては10万円を出して子どもの挑戦を応援するのはそれほど難しいことではないと思いますが、小学生の子どもにしてみたら、10万円をぽんともらって、それを自分が考えたビジネスで使うのはとんでもない体験になるはずです。しかもそれは親のお金ではなく、全然知らない人のお金です。このお金が廻る仕組みと、子どもたちがやりたいことを見つける仕組みを形作っていきたいですね。

この仕組みは試しに1回やったことがあって、その時はクラウドファンディングではなく、サッカーの天才的な才能を持つ女の子のスポンサーになりました。その子がちびっこ日本代表のような感じでスペイン遠征の話を受けたのですが、高額だったので、協会からお金を出して行ってもらったのです。最近は推し活が話題です。その感覚で、全然知らない子どもをどんどん推してくれないかなと思っている最中です。

猪口 才能豊かな子どもたちが大勢いるのでしょうね。

山田 いますよ。大人にとっては大したことない金額でも、子どもにとっては非常に大きなサポートになります。アイドルだけでなく子どもたちのことも推してほしいですね。

猪口 たしかに、将来のこの国に役立つような、社会に役立つようなことに使いたいですね。

山田 下地は整っていると思うので、あとは仕組みづくりだと思うのです。そこをうまく作って、日本のどこかに自分の応援を受けて頑張っている子どもがいる。そんな社会になってほしいですね。

猪口 まさに山田さんのビジネス、ティーンエイジャービジネス協会さんのコンセプトはそこにありますね。

山田 今はいろいろな会社さんが仲間になってくれていますし、そこから外側の輪の中に、今お話しした推し活のような感じで、それぞれが少しずつ子どものサポートができるような仕組みができればすごく面白くなっていくと思います。

猪口 そういう意味では、個人会員のような組織がその外にできるといいかもしれませんね。

山田 そうなんです。実はそのためのアプリを作ろうとして、国に補助金の申請を出したのですが蹴られてしまって、どうしようかなと思っているところです(笑)。

猪口 いろいろ勉強になりました。ありがとうございました。


学校・企業・塾関係者向けのお問合せは

一般社団法人ティーンエイジャービジネス協会
https://teenagerbusiness.com/

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