AIによるサプライヤ選定/野町 直弘
INSIGHT NOW! / 2024年10月8日 10時0分
野町 直弘 / 調達購買コンサルタント
昨今AIがとても騒がしくなってます。
生成AIで様々な業務や手続きを進めることで、業務効率化を図ったり、簡単なプログラミングをAIで作成したり、色々とトライしてみるとかなり便利なようです。
私はAIの専門家でもないですし、あまり勉強もしていなく、語る権限もないかな、と思いながらも調達購買業務にAIがどう活用できるのかを想定してみます。
AIは過去データを元に学習を行い、推論や分析を行って、何らかの判断基準を提供したり、プログラミングや分析結果のレポートなどのアウトプットを作成するものです。そう考えると、調達購買業務でも様々な使い方が想定できます。
例えば、過去の購買情報などを元にしたコスト査定などは、得意分野でしょう。その他にも需要予測や、それに基づく発注業務なども、人間が思いつく以上に様々な属性を考慮し、より精度の高い予測が可能となります。
また、卑近な例でいえば、契約書のレビューなども得意分野になりそうです。また、サプライヤの評価なども従来できなかった様々な評判や事案、事象などを拾い集めて集約できる、という点からは、活用することで、メリットが多いでしょう。
一般的な調達購買システムと言われる各アプリケーションも、AIを搭載し、単なる業務実行や情報伝達のサポートをするだけでなく、判断業務の支援にも使えるようになる、といううたい文句が増え始めているようです。それらの機能の一つに、AIによるサプライヤ選定支援という機能があります。サプライヤ選定時に評価情報の元になる様々な情報やユーザーの評判、評価の情報、特定サプライヤを選定することによるリスクなどを測定し、従来は定量的な評価を実施していたものをAIを活用し、評価情報を効率的に取得することはメリットが大きいでしょう。
従来、サプライヤの評価はソーシング参加企業を選定する段階、ソーシング実施のサプライヤ選定時、継続的な取引があるサプライヤに対する、実績を元にした評価、の3つのタイミングがあります。また、対象となるサプライヤも多く、多くの企業で、やらなければならないけど、できていない業務の代表例と言えるでしょう。それをAIを使うことで、効率化できるのであれば、たいへんメリットが大きいです。
しかし、私はサプライヤ選定のための参考情報をAIを活用して入手するのであれば、良い使い方でありますが、それによって機械的にサプライヤ選定を行う、つまり意思決定をAI任せにしてしまうのは、調達購買業務の重要性や面白さを放棄してしまうことに、他ならないでしょう。
よくサプライヤの評価は公平公正であるべき、そのためには定量的な評価基準を設定し、実施すべきといいます。しかし、正直な話、絶対的な公平公正な評価など、無理です。また、評価結果が、例えば、サプライヤAは5点、サプライヤB社は3点だったので、A社を選ぶべき、という思考は短絡的と考えます。
判断の基準はあくまでも担当バイヤーの意思によるからです。
私は、サプライヤの選定には、どうしてもバイヤーの意思が入るものと考えます。そしてそれはやむを得ないことです。一方で、サプライヤ選定という意思決定は、バイヤーが考えるよりも、サプライヤにとって、もの凄く重要なものと言えます。例えば、あるサプライヤが、その案件を受注できないことで、収益状況に大きな影響がでてしまうことも、ありますし、最悪の場合、経営が立ち往かなくこともあり得ます。こういう重要な意思決定であるということを、バイヤーは認識すべきです。
そして、このような重要な意思決定を、担当バイヤーの意思で行うわけですから、「私はサプライヤAを選定したい、何故なら~だからだ。」と、いうようにバイヤーは自らの意思決定に説明責任を負っています。そして、その説明が論理的であり、説得性があることが求められるのです。
私は調達購買業務基礎研修でケーススタディを行い、調達購買経験の浅い人たちに伝えていることがあります。
「サプライヤ選定はバイヤーにとって、非常に重要な意思決定であり、その意思決定は常に公平公正であるべき。しかし、そこにバイヤーの意思が入ることはやむを得ないこと、重要なのはその意思決定の理由であり、その理由に正当性が高いことが自身の責務なのです。これは、極端な事例ですが、例えば私はこのAサプライヤを育てたい、だから選定したい、でもいいのです。評価したら何故か知らないがBサプライヤがトップだったので、ここにします、では自身の責務を果していないですよ。」と。
これからはAIの時代です。しかし、AIはサプライヤ選定のための元データ提供や分析、評価はやってくれます。しかし、これは、あくまでも選定支援であり、選定ではない、ということを皆さんも認識してほしいです。
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