【インサイトナウ編集長対談】日本をデジタル先進国へと導くための第一歩。「未来をひらくDX人財育成プログラム2024」を終えて /INSIGHT NOW! 編集部
INSIGHT NOW! / 2025年1月21日 12時0分
INSIGHT NOW! 編集部 / インサイトナウ株式会社
お相手:富士 翔大郎様
一般社団法人イノベーション融合学会
猪口 一般社団法人イノベーション融合学会(以下IFSJ)の「未来をひらくDX人財育成プログラム2024」の年間の活動の総括として、受検者の表彰式が、2024年12月15日に開催されました。このようなイベントの第1回目は非常に難しいものです。富士さんの考えられていた意義は十分に伝わりましたか。
富士 今回のプロジェクトのベースは、「日本はデジタル後進国である」という私たちの危機感です。デジタル化・DXを自然の流れに任せるのではなく、積極的に若い世代に働きかけて関心を高め、日本のデジタル力を上げていこうという思いで、これまでいろいろやってきました。理想論としては皆さんに理解はいただけますが、現実にはその前にやらなければいけないことがたくさんあり、どうしても後回しになってしまっていました。
企業ではベテラン社員のリスキリングが優先されます。そのノウハウを子どもたちのスキリングに活かしてほしいですが、それは企業の役割ではありません。主管となる文部科学省としても特別にITやデジタル教育ばかりに注力するわけにはいかないでしょう。学校での勉強は受験に直結する内容になりがちです。デジタル技術やITカリキュラムも同様で、例えばプログラミングの授業は「楽しかったね」というレベルで、これからの時代に必須な知識として認識し、自分のキャリアにどう関わるかを考えるまでには至っていない、このような状況では、将来のデジタル社会に適応するための準備が十分とは言えません。これからの時代「AIが人に代わる時代を誰も正確には想定できません」、ただ言えることは「IT×ビジネスのイノベーションとしてのDXリテラシーについては、これからも必要なビジネスの基礎となる」でしょう、このメッセージを伝えることができたのは大きな意義と考えます。
猪口 締めくくりとなる表彰式はいかがでしたか?
富士 今回の表彰式では、この一年間の活動、特に詰め込み学習とならないようにセミナーや体験を充実させた「DXイノベーションアカデミー2024」(学びと体験の空間)を中心に振り返り、その際に無償でご尽力いただいた講師の皆様方にも来賓としてお越しいただきました。主催のIFSJからは主要なメンバーが参加し、中国をはじめとする諸外国のDXの実情についても、実際に訪問した動画等でご報告をいただきました。表彰式の会場はプラチナスポンサーであり、DX検定対策講座の開発・販売でもご協力いただいた AKKODiSコンサルティング株式会社の innovation Lab.をお借りし、社員の皆様の運営協力もあり、立派なものとなりました。なお、AKKODiSコンサルティング株式会社からは、多くの社員の方々がDX検定を受検されており、今回もかなりの方が表彰対象として参加されていました。また熊本をはじめ東京以外からもリモートで参加いただくなど、会場での参加とリモート参加を組み合わせたハイブリッド形式で実施しました。
※参考
2025年度から「情報Ⅰ」が大学入試共通テストの科目に追加されます。この中で、以下のようなITやデジタル関連の知識が問われる可能性があります:
- プログラミングの基礎知識(アルゴリズム、変数など)
- データの活用(表計算、統計的な考え方)
- 情報セキュリティ(個人情報保護、ネットワークの基本)
- デジタル化の意義(ITの社会的影響や利活用の実例)
猪口 なぜ子供たちにこだわったのですか?将来の進路に直結はしないですよね。
富士 子供たちにこだわるのは、デジタル競争力の強化はこれから未来に向けて長きにわたり取り組むものであり、社会人だけでは間に合わないことと、「先に得た情報がその後の思考や学習に影響を与え、普段の生活からさらに知識を吸収しやすくなる状態。」プライミング効果(Priming Effect)の最大化を期待しているからです。そもそもDX検定のコンセプト自体まずキーワードをマスターし、あとは日常生活からの知識吸収で無意識に学びを加速するという理論、プライミング効果、スキーマ効果、マシュー効果、知識スパイラル等を考慮した自然学習ともいうべき私の教育方法に近いものです。
日本のデジタル変革は、企業経営の施策の1つとして始めることが多く、インドや中国等の若い世代を中心とした国をあげた取組みの勢いに圧倒されています。スイスの国際経営開発研究所(IMD)が発表した「世界デジタル競争力ランキング2024」では、日本は31位でした。昭和の頃はハイテク先進国(CDやDVD開発などデジタル化のリーダーでもありました)と見られていた日本がここまで順位を下げたともなれば、もはやグローバルリーダーどころか後進国ですね。「デジタル小作農」という言葉があります、デジタル化が遅れると先行している企業や国の支配を受け、搾取されざるを得ない現実を表した言葉です。こうなることを何としても避けなければなりません。
そこで我々は子どもたちに遊びでもいいからやらせるという感覚ではなくて、本格的に学ぶ時間を作っていこうというメッセージに変えていきました。特にIT関係者はその「世界の中での日本の位置づけのデータ」を実感しているのでメッセージが刺さったようです。日本のグローバルにおける課題など、なぜ早期育成が必要かその理由を理解くださった親御さん世代の目の色も変わってきました。自分たちの子どもたちの将来のこととして考えることで、非常に身近なテーマになったのです。このように「今後の日本のDX推進のために子供たちから教育しよう」というメッセージを出せたことは非常に意味があったと思います。
DX検定シリーズは約1,000社、5万人の受験者数を記録しました、これはDXの知識は専門職のスキルではなくビジネスパーソンの言わば「九九」のような基礎知識として広がってきたからだと思います、実際に、採用条件や昇格条件に加えた企業が増えています。もし、上司がITトレンドを語るリテラシーがなかったら、部下はもちろん、会社としても不安になりますよね。そう考えると大学生含めて子供たちにとっては英語と並んでDXリテラシーこそ、今後の子供たちのキャリアに最も影響を与えるスキルと言えるでしょう。
猪口 優勝された方をはじめ、DX検定についてはどのような印象をお持ちのようですか。
富士 DX検定は公的資格を意識して、ある程度のレベルを維持していますし、常に最新の情報を反映しているので過去問で対策する資格試験とは違い難しいという印象が多かったです。普通にエンジニアが受けても1000点満点のうち半分の500点ぐらい取れればいいほうです。デジタル変革に関して人財育成や執筆をしてきた私もDXプロフェッショナルレベルは取れずDXエキスパートレベルにとどまっています。
日頃ニュースで出てくるようなキーワードを他人に解説できるレベルをきちんと身に付けてないと点数が取れません。この検定を受検した人は、受けた後にこれはまずいという「気づき」があったと思います。DXは幅広く、勉強しにくいものですから、受検して初めて火がついたのではないでしょうか。実際、今回早々にリベンジを宣言している人が少なくありません。そういう意味では、非常に学習意欲が旺盛な人たちが受けてくれました。
今回最高得点を取った受検者は小学生の娘さんと親子で受けた方です。ご本人はITの仕事をされている方で、社内でも必要な資格となっているそうです、初挑戦でDXプロフェッショナルレベル認定取得でした。おそらく日ごろから仕事で使う言葉だけでなくWEBや雑誌など関連資料を読み込むなど知的好奇心旺盛な方だと思います。
今回私はDX検定対策講座制作に関わりましたが、日常聞いたことのない言葉もかなりありました。その中で高得点取れるというのは、勉強というより趣味になっているのかもしれないですね。ぜひ同僚や後輩の皆さんの指導をしていただきたいです。
猪口 娘さんは小学生なのですね。
富士 小学6年生です。父親がそういう仕事していることで比較的デジタル分野に関心が高く、親子で一緒に受けたそうです。
「DX博士ちゃんチャレンジ」は、小学生の中から輝くダイヤモンドを探そうという企画です、DX検定は高校生以上の日本語力を想定して作られています、それをそのまま受検するので、小学生にはきわめて難しいと思います。ただ、今流行っている「博士ちゃん」は大人顔負けの子どもを指しています。だからこそ大人の問題を小学生でも得点できることを見せたいという思いもあり、実際彼女は大人に負けない点数をとることができました、非常に将来有望ですね。これこそDX博士ちゃんへのチャレンジなのです。今後大人顔負けのDX博士ちゃんが多く登場することは1つの成果目標だと思います。きっと大人にも良い影響を与えるでしょう。
猪口 やっぱり意識が高くないと、こういうところにはいらっしゃらないですよね。
富士 そうなのですが、私はDXの知識を一般常識化したいのです、本当は、「学校まるごと、面白おかしく、お祭りだ」という感じで気軽に参加してもらいたかったのです。皆が尻込みしてしまうような優秀者決定戦みたいな難しい話にしたくなかったのですが、我々のプロモーションが弱かったので、学校全体で受検するようなムーブメントにまでは繋げられませんでした、今後は地方創生の目玉になると嬉しいです。また、今回の特別受検は初めて受ける人を条件にしましたので、レベル認定を最初から狙って来る人はあまりいませんでした、どちらかというと今の自分の実力を測りに来た人が多かったので、そこでレベル感を知ってもらえたのが一番大きかったですね。
猪口 DX甲子園(3名1チームの団体戦)にはどのような応募があったのですか。
富士 大学生の部と高校生の部で参加がありました、特に高校生の部は、私どものほうで重度の身体的障がいを持つ支援学校に通っている子どもたちに、招待というかたちで参加いただきました。
参加者の1人のお母さんがSNSをやっていて、今回受験したことについて書かれていました。内容は今回の出場を喜んでくれていて、「障がいのある人こそ資格を取りたい、それが自信にも繋がる」と書かれていました。ただ、「どの資格も車椅子で試験会場に行かないとならず、自宅で受けられるものがあまりない。今回は自宅で受けられたので、家で受けられる資格があったことが嬉しかった。頑張ってチャレンジしたことがすごく良い経験になった。」そう書いていただいているのを見て、お役に立てたことで、我々も非常に感激しました。当初狙っていたことではないのですが、これからユニバーサルデザインにどう対応していくかという勉強になりました。
猪口 そこは新たな発見ですね。今までは年齢の枠を超えるということでやっていたのが、DXは身体に重度の障がいがあろうがなかろうができるということの証明でもありますよね。
富士 我々も障がいに関する関心が高まりました。例えば、障がいのある方がリモートでロボットをコントロールしてお客と対話するカフェへ行ってみて、今、デジタル化によって職場が広がり、雇用が拡大していることを目の当たりにしました。今回、重度の障がいのある高校生たちにこのイベントを紹介くださったプラチナスポンサーのAKKODiSコンサルティング株式会社では、会社をあげて地方創生に取り組んでいます。地方に雇用を拡大するため、ITを教える仕組みを展開しています。同様にして障がいのある方向けにITを教えることにも取り組んでいた経緯もありこのような新しいことにチャレンジできました。
猪口 今後の可能性を感じさせるような取り組みになりましたね。
富士 GIGAスクール構想でいろいろなデバイスを配ったり、あるいはプログラム教室を実施したりしていますが、さらに実際の社会の中でどのように役立てていくか、自分の将来(キャリア)にどう関わっていくかを考える機会をもっと作っていきたいです。
DX検定のような資格試験で自分のレベルを知ることは一つのチャレンジです。子どもの好奇心ややる気というか、子どもだからできるという、その可能性に火をつけるのが我々の役目だと思っています。また、障がいのある方々が、安心して仕事ができる働き方の多様性の入り口として、オンライン上での資格試験を体験していただくことによって、可能性を広げてもらいたいと思いました。
猪口 今後の進め方はこれからのようですが、一つのムーブメントのきっかけになりましたね。
富士 そうですね。DX検定もDXビジネス検定もそれぞれ開催が年に2回あるのですが、例えばその時に引き続き小学生の部を設けて、DXスタンダードレベル以上の認定された一番高得点の人を「DX博士ちゃん」として表彰するようなことはできると思います。ここで一度、これまでの受検者含めて、日本のデジタル化について議論できるコミュニティへつなげたり、今回初めて参加した子どもや障がいのある方などの意見も、紹介していきたいです。DX検定シリーズはIFSJという学会が主催しているので、金儲けでないことはご理解いただけていますが、日本のデジタル化に向けていろいろな面で社会的な貢献をしていくために、今後もご賛同いただける個人や企業、自治体の皆様と連携して日本の将来に貢献していくフォーメーションを作っていくことが大切だと思っています。
猪口 必ず将来につながる活動だと思います。これからの発展を期待しております。ありがとうございました。
DX検定IFSJ10周年特別開催表彰式
主催:日本イノベーション融合学会
今回の表彰式で、富士さんが発表した1年間の活動振返りプレゼン資料動画は
YouTubeので限定配信中⇒https://youtu.be/6psZF4XCxX8?si=OvVkwTVjVKO6Lt6Q
📅 日時:2024年12月15日(日)14:30 ~
📍 場所:AKKODiSコンサルティング株式会社 innovation Lab.
東京都港区芝浦3丁目4番1号 グランパークタワー3F
「2024 DX検定シリーズ表彰式」概要
当日はこれまで多くの方々を導いてきた豪華講師陣が一堂に集結!
- マーケティングの達人 金森講師
- マッキンゼーシリーズ&瞑想 大嶋講師
- ハーマンモデルのスペシャリスト 近藤講師
- ドローンの第一人者 酒井講師
【語句説明】
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